空中分解2 #0789の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
Dがあたしを殺そうとする。 黒光りした重そうなハンドガンは、しっかりとあたしの頭を狙っている。 「D、どうしちゃったのよ。あたしがわからないの!?」 Dは無表情だった。氷のように冷めた瞳だけがあたしを見る。 ・・・・あなたでないあなたは覚醒せねばなりません 湖の声が聞こえてくる。 いったいあたしにどうしろというの。 「蘭、なにしてるんだ。早く撃て!」 パパが傷ついた右肩を押さえながら怒鳴る。 「やめてよ! もうやめて・・・ D、お願い」 あたしは泣いた。どうしたらいいのかわからない。 このままDに撃たれて、死んでしまうのだろうか? Dの思い出が脳裏をよぎった。 「・・・ラ・ン」 そのとき、Dが絞り出すような声で、あたしの名を呼んだ。 苦痛に顔がゆがんでいる。 一瞬、すべてが止まった。Dはあたしを憶えている。 しかし、パパはあたしのビームライフルを奪うと、発砲したのだ。 ビームはDの体を一直線につらぬいた。 「D!」 ********************************* あたしは気絶していた。 ここは、森の中。あの奇妙な湖のほとりだ。 冷たい草露があたしの鼻先にあたり、はじけ砕けていった。 近くにはパパとママが同じように倒れていた。 あたしはパパに駆け寄った。 「パパ、大丈夫?」 パパは不思議そうな顔をしながらあたりを見回していたが、ママに気づくと顔 色を変えて駆け寄った。 「瞳、しっかりしろ」 ママはパパの腕のなかで、ゆっくりと目を開いた。 大きな木の根本に、マリアさんが倒れていた。 あたしはマリアさんを起こし事情を聞こうとしたが、マリアさんもわからない と首を横に振るだけだ。 そのとき、ビームがあたしのすぐ脇の草を焼いた。 Dが出血している腹部を押さえながら、ハンドガンであたしを撃とうとしたの だ。 Dが無事だったという安心感とは反対に、殺されるという恐怖があたしを襲っ た。 でも、Dはすこし違っていた。 泣いているのだ。 勝手に動く自分の体を必死に押さえようとし、それがうまくいかないことが悲 しいように。 「・・・ラ・ン」 Dが苦しそうに、あたしの名を呼ぶ。 パパがライフルでDを狙う。 「パパ、やめて!」 「ルオ!」 叫んだのはマリアさんだった。 マリアさんがDにすがりつき、Dの事をルオと呼んだ。 そして、あたしは次の瞬間信じられない事を聞いた。 「もうやめて。ルオはわたしとお兄ちゃんの子なのよ!」 あたしのなかで、なにかが崩れていくのがわかった。 どういう事なの。 あたしは、あたし自身に問いかけた。 マリアさんの記憶が戻った。でも、戻らないほうが良かった。 パパとマリアさんは兄妹で、Dがその間に生まれた子供。 そんな事って、そんな事ってあるの? そんなバカな事ってあるの!? 「ママは知っていたの!?」 ママはうつむいているだけだった。 「ママ!」 あたしはママを急き立てた。 「もう、終わった事だと思っていたのに。思い出のなかの事だったのに。 どうして今になってこんな事になったの」 ママが声を殺して泣いている。ママが心を引き裂かれて泣いている。 「パパ、どういう事なのよ!」 あたしは怒鳴った。 パパはなにも言わなかった。言えなかったのだろう。 マリアさんは記憶が戻りはしたが、その瞳には涙がいっぱい溜っていた。 「わたしの名は白鳥麗香。白鳥竜の妹」 ぽつりと、誰に聞かせるわけでもなく言った。 あたしは認めない。 マリアさんの記憶が戻らなければ、Dとは恋人同士でいられた。 Dとあたしが兄妹なんて、それも、こんな形で。 「あたしは認めない。こんな事、絶対に認めない」 あなたでないあなたは覚醒せねばなりません 湖から声が聞こえてくる。 それは、やさしくて、せつない唄。 「なんだっていうのよ。どうして、こんな思いをしなくちゃならないの」 あたしの絶叫は森全体に響く。 そのときだった。 ママが二つに裂けた。 いや、その表現は少し違っているかもしれない。 でも、あたしにはそう見えたのだ。 ママの体が淡い光りを発し、その光りはそのまま二つに裂けたのだ。 裂けた光りの一つが、大きく膨れ上がった。 それは、怒りと悲しみと憎しみ。 大きく、大きく形をとり始めた。 どこかで見たような形に。 怒りと悲しみと憎しみは、サタンとなり世界を飲む あなたでないあなたは覚醒せねばなりません 世界を救うメシアはあなたなのです 湖が語りかけてくる。 あたしにどうしろというの。 サタンは森全体を包もうとしていた。 ママが、ママが熔けていく! 「いやー! ママが消えちゃう」 パパがライフルを撃つ。 それでも、サタンは膨張をやめない。 我の名はルーシファ。我の望みは世界の支配。 不気味な声が高らかな笑いとともに、森いっぱいにこだましている。 それはやがて森の外へにじみ出し、世界を覆ってしまおうとしていた。 そのとき、突然Dが宙に浮いた。 その体は光り輝き、金色の輪がいくつもとりまいていた。 「いったい、なにが起ころうとしているんだ」 パパが、昇っていくDを見ながらつぶやく。 「メシア。世界の救世主」 マリアさんが、我が子を見上げながらつぶやく。 君の助けがいる。 蘭、君の助けがいるんだ。 高く舞い上がったDが、あたしに語りかけてきた。 でも、あたしには何もできない。 あたしにはDのような力はないのよ。 愛しいあの人の期待には答えられない。 大丈夫。 いや、君でなければできない。 君は、この世界の創造主なのだから。 創造主? 違うわ。あたしはただの人間よ。 それも、十五の子娘よ。 サタンは人の怒りと悲しみと憎しみによって覚醒する。 君のママのいい知れぬ想いを利用したんだ。 蘭、君の助けがいるんだ。 わからない。 どうして、パパが妹と・・・ 愛していたからだよ。 Dのその言葉があたしの胸に響いた。 パパとマリアさんは愛し合ってしまったのだ。 それが、いけない事だと知っていながら。 あたしがDの事を愛してしまったように。 Dがあたしの事を想ってくれたように。 理由などないのだ。 愛とはそんなもの・・・ 今のあたしにはわかる。 もちろん、ママはつらかったのだろう。 せっかく忘れかけていたのに、マリアさんが、麗香さんが現れてしまった。 それは、ママがパパの事を愛していたから。 愛しているがゆえに苦しかった。 しかし、それは人間が人間らしく生きるために必要な事だ。 それを利用したサタンを、あたしはゆるさない。 あたしはサタンを倒す決意を固めた。 ・・・7へつづく
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