空中分解2 #0749の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
私の曽祖父、つまり「ひいおじいちゃん」は大地主だったらしいが、 相場で失敗し一家の田畑を失った。私の祖父、つまり「おじいちゃん」 は長屋に住みながらお金を貯め続けたが株で大ヤケドをしてスッカラッ カンになって死んでいった。私の父、つまり「おやじ」は地道に働いて 儲け話にはめったに乗らなかったが、あるとき勧誘員の口車に乗せられ、 魔がさして穀物相場に手を出し三百万円損をした。そして私、つまり 「くり えいた」はぐうたら生きて、一切の「証券」には手を出さない 事に決めたのである。形のないものは恐い。「証券」はいつでも只の紙 切れになり得ることを身近に知っているからである。「紙幣」だって例 外ではない。これは「遺伝子の学習」である。 おや、これにも「銀行からお金を降ろそう」関連の記事が載っている。 なになに・・・用語がよくわからないのだが、どうも銀行さんはお金を 降ろすことに対して私たちに自粛を呼びかけるとともに何らかの規制を 加えようとしているらしい。そりゃそうである。銀行さんにとっては必 死であろう。農家でお米が取れなくなるのと同じである。でも預けたお 金はやっぱり預けた人のものである。好きに使って悪いわけがない。 ところで私は昨日の出来事がなければ絶対こんな記事は読まない自信 がある。細君がお湯を沸かすためにガスコンロのスイッチを入れた音が、 トイレのドア越しに聞こえた。 「パパ、早く出てやってよ」 どうやら子供達も起きたようである。さあ今日は楽しいディズニーラ ンドである。 舞浜の駅から出た私たち四人は四月の柔らかい日差しを浴びて「夢の 国」にのびた歩道を歩いた。もうすぐ二才の長男の僕は足がどんどん歩 きだして、手を引いているママの方が引きずられている。幼稚園に入っ たばかりの長女は「シンデレラ城・シンデレラ城・・・」とうわごとの ようにさっきから口の中でブツブツ繰り返している。 植え込みの花の色が呆然とするくらい綺麗である。ゴミひとつ落ちて いない。私たちは係員の指示に従って、奥の駐車場近くの入場者の列の 最後部に並んだ。どうも昨日から「行列」に縁がある。 しかし入場するまでにこれほどの行列が出来るのもわかるような気が する。理由は簡単である。面白いから、楽しいからである。これに比べ れば私が今までに入った日本の遊技施設はどれも「子供だまし」である。 日本で同じくらい楽しいのは、吉原のソープくらいである。私の家族は 例によって例のごとく私を列に残したまま、細君は子供を遊ばせに入場 口の近くまで行ってしまった。吉原のソープを思いだしたパパへ下った 天罰であろう。 異変は静かにしかも突然やってくる。どうしたのだ。列がいっこうに 前に進まないではないか。係員がものすごい勢いで私の横を走って行っ た。なんだ。なんだ。いったいどうしたというのだ。 「チンチムニー・チンチムニー・チンチームニー」 さっきから放送されていたメアリーポピンズの音楽が中断した。何か事 故だろうか。アナウンスがあるのかも知れない。 沈黙が続いた。 おい、どうしたのだ。何か情報をくれよ。私は多少イラついた。私は 気が短い。心臓によくないから最近ちょっとイライラするのを控えてい るのだが、立たされているこっちの身にもなってくれ。まわりの客が思 い思いの推測を喋り合っている。なかなか立派な講釈もあるが、吹き出 すような新説もある。まあどちらにしても真相は私にもわからないのだ。 細君が子供を連れてこちらの方にやってくる。何か入り口付近の情報 をつかんだらしい。細君の顔色で事情を察しようとしたが、どうもよく わからない。私は少し声を大きくして言った。 「どうしたの。何かあったの」 「つぶれたんだって」 「・・・・つぶれたって・・・何が」 「ディズニーランド」 「なにぃ・・・・」 これはまわりで繰り広げられた「ディズニーランド行列評論家のみな さん」の激論にはなかった結末である。私の下の方では娘が「シンデレ ラ城・シンデレラ城・・・」とうわごとのようにつぶやいている。私の 娘をこのままにしてどうしてディズニーランドが倒産しなければならな いのだ。これだけの入場者が毎日いてどうして倒産するのだ。納得のい く説明をしろ。私は気をとりなおして細君に本質的な質問をした。慌て ていたので声が裏返ってしまった。 「それで、どうなるのだ。われわれは・・・」 「もうちょっとしたら入れてくれるって。今日で終わりにするんだって」 「じゃあ、俺達は入れるのか」 「だから入れるって言ってるじゃない」 「そうか・・・それは良かった。でもどうしてつぶれたんだ。誰か何か 言ってなかったか」 「わかんないわよ。変ね、こんなに流行ってるのに」 その時である。突然、チャイムとともにアナウンスが入った。それを 聞いた我々群衆は歓喜の声を思わず上げてしまった。湾岸での戦争、 「世界大戦」が終結したらしい。どういう事情か、どちらが勝ったのか ここにいては知りようがないが、とにかく嬉しいニュースである。あと で詳しい事情を「金髪のシンデレラ姫」に聞いてみよう。 ドーン・パーン ドーン・パーン 河内音頭ではない。ミサイルでもない。 花火が打ち上がった。どんどん打ち上がる。これは尋常な量ではない。 当たり前である。明日からもう使わないのであるから。今日使い尽くし たって構わない。 「ミッキマウス・ミッキマウス・ミッキミッキマウス」 ミッキーマウスのテーマが鳴り響く。と同時に門が開いて・・・なん と・・・なんとパレードの行列が外にいる我々の方に向かって来るのだ。 ミッキーが来る。ドナルドが来る。ピノキオが来る。アリスが来る。金 髪のシンデレラが来る。 なんと!「洒落た計らい」である。 「じゃあ、並んでてね!ちょっと子供連れて見てくるから!」 細君が興奮して叫ぶ。長男の僕はママの手を引っ張る。娘は上気して 「シンデレラ城・シンデレラ城・・・」とうわごとのように繰り返す。 「おい待てよ。この様子だとアメリカが勝ったのか」 「そんなこと私に聞いても知らないわよ。政治の事は私に聞かないでよ」 「そりゃそうだ・・・・でもどうして突然終わったんだろう」 「よくわからないけど、昨日テレビで言ってたよ。名前は知らないけど ・・アメリカの偉い人が・・・・これ以上続けられないって」 「どうして」 「この二、三日で急にお金と物がなくなって破産寸前らしいわよ」 細君と子供達は微笑みながら駆け出して行った。 ***強くて明るい元気な子 ミッキマウス・ミッキマウス・ミッキミッキマウス*** この作品の無断転載及び印刷しての頒布を奨励します・くり えいた (但しオリジナルの掲載日時を明記して下さい) P.S. だめだ。だめである。読み返してみると結局、実際に過去にわが身に 起こった事しか書いていない。作文を忠実にやっているだけである。以 前にどなたかがご指摘の通り、まったく思想というものがない。やはり 私は「小説家」には向いていないらしい。これからも「随筆」を書き続 けよう。みなさんよろしく。
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