空中分解2 #0706の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
日本の老人 「判定。罪名、短気。第五圏、憤怒者と強情屋の沼地行き! はい、つぎ 「ウィリアム・トラウトと申します。千九百九十年十一月二十二日に死亡 しました。死因は、友人と喧嘩して崖から落ちたんです」 「ウィリアム・トラウト。死亡年月日、死因まちがいなし。報告書に疑い なし。判定。罪名、高利貸。第七圏第三環下層、大絶壁の高利貸の岩棚行き! はい、つぎの人」 「…………」 「つぎの人」 v 「つぎの人。あなたですよ」 「……わしのことか?」 「そうですよ。他にだれがいるってんです?」 「後ろにたくさんおる」 「あれはみんな、あなたの後ろにならんでるんですよ。いまはあなたの順 番なんです。さ、おじいさん、名前と死亡年月日に死因を申告してください」 「なんでじゃ!」 「なんでじゃって、それで身元を確認して、どの地獄に行けばいいのか知 るためですよ」 「おまえいったい何者じゃい!」 「何者って……地獄門の番人、というか整理係ですよ。ま、人間は悪魔っ て呼んでますがね」 「わしはそんなもん知らん!」 「知らんと言っても、あのねえおじいさん。あとがつかえてるんですよ。 いまさら文句つけても仕方がないでしょう。さあ、お名前と――」 「なんでわしが悪魔風情にお裁きを受けんといかんのじゃ、このうつけも ん!」 「悪魔風情? だって罪状を読み上げるのは地獄商売はじまって以来、ず っとわたしたちがやってきたんですよ」 「うそつけ! 罪人をお裁きするのは閻魔大王様と、大昔から決まっとる わい!」 「閻魔……? あっ! もしかして、あなた日本の人?」 「あたりまえじゃい、このすかぽんたんが! 見ればわかるだろうが!」 「そういえば、着ているものが日本風……。こりゃ、手違いがありました かな。しかし、いまさら修正もきかないしなあ。なにしろ、あちらさんの地 獄の方も最近とみに忙しくなってきたそうだから。う〜ん。どうです? お じいさん、西洋の地獄というのもなかなか住心地がいいですよ。いっそこっ ちに住みついては。あなた、大五圏の沼地なんか、おちつくのにぴったりで すよ」 じゃ。日本の血の池がいい」 「血の池ならこっちにもありますよ」 「いやじゃ! こんな南蛮の血の生けに浮かんどっても、オシャカ様は蜘 蛛の糸をたらしてはくれんわい!」 「ははあ、芥川龍之介の小説に毒されましたな。おじいさん、あの話はあ くまでフィクションなんですよ。それに、こっちの天国にもキリスト様とい う慈悲深〜〜い方がいらっしゃいますし。どうです。こっちにしませんか。 いまお決めになれば、四泊五日の地獄一周旅行にご招待しますよ」 「そんなもん行きたくないわい! 日本の地獄にかえせ!」 「かえせっていわれても、手続きがものすごく入りくんでましてね。そう もいかんのですよ」 チ! そんなことはわしゃ知らん! おまえの責任じゃぞ。さ あ、さっさと手続きとやらをすませて、わしを日本に送還せい!」 「こまりましたなあ。送還しろといわれても……。ちょっとムリなんです がねえ」 「人権蹂躙じゃ! わしはれっきとした日本人じゃぞ。その日本人のわし が、なんで南蛮の地獄に落ちなきゃならんのじゃ! 横暴じゃ! 非道じゃ! うったえてやる! 責任者だせっ!」 「責任者といわれても、アナタ、困るんですよねえ。わたしみたいな下っ 端役人がプルトー様にお目どおりできるわけないんですから」 「そんなことわしゃしらん!」 「そうおっしゃらずに。ねえ、おじいさん」 「知らんわい! 猫撫で声を出すんじゃない、気持ちの悪い」 「ねえ、おじいさんたら……」 「知らん」 「ああああどーしよう。こんなことしてるあいだにも死人はどんどん増え ていく。ううう、なんで薄給冷遇のわたしたち悪魔がこんな憂き目にあわな きゃならないのかしら」 「そんなことどうでもいい! さっさと日本に戻さんか、バカモノ奴が!」 「おいおい、なにを泣いているのだ。ちょっと人捜しをしとるんだが、手 伝ってくれんかね?」 「あっ! これは閻魔大王様ではございませんか! 助かったあ! ほん、 っとうに、助かったあ!」 「なにが助かったのかね? わからんな。ところで、人捜しなんだが――」 「あ、人をお捜しなんですね? もしかしてこのおじいさんでしょ。ね? ちがうなんていわないでくださいね? そーなんでしょ?」 「お! そうだよ。この人だよ。こんなところに来てたのかね、弘法大師」 「――弘法大師?」 「そうだよ、君、この方は弘法大師、空海だ」 「コ、コ、弘法大師というと、あのコウボウもペンのミステイクとかいう あの弘法ですか?」 「そうそう、そのとおりだよ。君、悪魔のくせになかなか通じてるじゃな いか」 「いえあの、その、でも」 「なにをうろたえておるんだね」 @「その、なんでその、あの、弘法大師がこんな、こんな、こんな」 「こんなところにいるのか、かね? いや、最近この御仁は地獄の亡者に なりすまして鬼どもをからかうのに凝っておってな。それにあきたと思うと ったら、いつのまにかいなくなっとる。これは、と思って来てみると、あん たがからかわれていたと、こういうわけなんだな」 「…………」 「さ、弘法大師。もうよいだろう。帰ろうではないか」 「天国は退屈じゃからのう。気がすすまんわい。しかし、あんたがわざわ ざ出向いてきたのだから仕方ないのう。それではな、役人。しっかり働くの じゃぞ」 「さらばだ。君、プルトーによろしくいっといてくれ」 「さらばじゃ」 「さらばだ」 「…………」 ひゅううううぅぅぅぅぅ 「…………」 @ END
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