空中分解2 #0705の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
強烈な光と熱。 足取りはもはや虚ろで力ない。男の命はいまや、つきかけている。 焔々と照りつける灼熱の太陽。砂、砂、砂、砂、砂、砂、砂…砂……砂… …。 のと同じだった。 オアシスもない。サボテンさえ見当らない。ただただ、永遠にもつづく砂 の起伏のみ。 突然、なにかにぶつかったのだ。それは、人だった。 そう、たしかに人だ。男は、砂漠で放浪した人間が人に出会ったとき、十 中十口にする言葉を口にした。 「……み……みず……」 男は手を差し出し、相手の身体にもたれかかった。黒い衣服を全身にまと い、ターバンのあいだからぎらぎらと光る目だけを出した人物は、水筒を懐 から取り出し、男の口にあてがった。 男が三回喉を鳴らさないうちに、水筒を取り上げ、ふところに戻した。 「もっと……もっと水……」 ターバンに言う。 「人でなし……」 「そのとおりじゃ」黒ターバンが答えた。「わしはたしかに人間ではない。 なにせ、いじわるな悪魔じゃからのう」 ホッホッホッと悪魔は笑った。 「水……水をくれ……」 「そうよのう」黒ターバンは、ニヤニヤと目で笑う。「わしがいま、なに を考えているか当てたら、思う存分水を飲ませてやってもよいぞ」 男は、鈍くなった頭で必死に考えた。こんな話を前に聞いたことがある。 砂漠で水が切れて、意地悪な悪魔に出会う。悪魔がいま考えていることを言 いあてたら、水を飲ませてくれるという。そこで『あなたは私に水をくれる つもりはないんでしょう』と答えた。当たっていれば約束どおり水を飲める。 はずれていれば、悪魔は水をくれるつもりだったことになり、やはり水を飲 むことができる。かくして水を得て、九死に一生を獲得するのである。 男は一所懸命その話の結末を思い出すと、思い切ってそのセリフを言って みることにした。 「あ……あなたは私に水をくれるつもりはないんでしょう」 すると悪魔はフンと鼻を鳴らした。 「ハズレ! まったくくだらん答えじゃ!」 「水をください……」 uハズレだと言っておろうが! バカめが! 水などやるか」 「でも……ハズレならあなたは、私に水をくれるつもりなんでしょう……」 「なんで! バカめが! わしは、わしの考えていることを当てろと言っ たんじゃぞ! わしはおまえに水をやろうともやるまいとも考えてなかった わい。したがっておまえの答えはハズレ! 水をやろうとも考えてなかった から、もちろんやらん! よっておまえ渇き死に!」 「ひどい……」 「うるさい! ひどいから悪魔なんじゃ! まったく! もう少し気のき いた答えをしたら水をやろうと思ってたのに! バカが! 盗作! つかい ふるし! 非個性的! おまえなんぞしらんわ! さっさとくたばってしま うがよい! ではさらばじゃ。このつぎは地獄で会おうぞ」 捨て台詞を吐いて、悪魔はボン、と消えた。 でも、砂漠は消えない。消えるとしたら、男が渇き死にした時だ。そう。 その後はもう砂漠などどこにもあるまい。地獄には、たしか餓えと渇きにさ いなまれるような砂漠はなかったはずだ。男は安心して力つきた。 男は知らなかったらしい。砂漠の地獄は、何者かに追われながら暗黒の焦 熱砂漠を永遠にさまよう場所だということを。 END
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