空中分解2 #0692の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
源氏名を「佐知子」という。「アカシヤの雨が止むとき」のヒット曲で有名な 西田佐知子からとった。 「・・・こぉんなあ、女にぃ、だあれがああ、したぁ・・ってか。けっ、笑わせ んじゃねえよ」 また酔ってしまった。芙美子は、やっとのことで自分の部屋に入り込んだ。ひ っくり返ると、もう立ち上がれなかった。 きょうこそは、と思いながら気が付くとまたいつものように酔っていた。「来 夢来人」に勤めて十日ほどになるだろうか。やっと馴染みの客もつくようになっ た。客が15人も入れば一杯になるような店だった。それでもこの辺りでは一番 大きいといわれている。 名古屋から中央線で中津川を過ぎ、さらに北に向かうといわゆる木曽路に入る ことになる。そこは桧の産地で有名なところで、近くには浦島伝説で知られる「 寝覚めの床」や木曽義仲の碑もある。誰かが連れて行ってくれると誘ってくれた が、なぜかそんな名所と言われるところを歩くのが性に合わず、機会を失してい この半年、岡山、川崎と流れ歩いた芙美子には見るもの聞くものすべてが驚き であった。昼は電車が2時間に1本しか走らない。山から上り、山に沈む陽は短 い。五時を過ぎればほとんどの店が閉まる。冬ともなれば、六時を過ぎると人通 りは絶える。華やかなネオンと街の喧騒に慣れきった芙美子には、木曽路の山峡 の町はあまりにも寂しすぎた。 それでも、旦那が営林署を定年退職しブラブラしているという小太りの五十を 過ぎたママは、ガラッ八で気さくな人だったし、ママの親戚の子だという30過 ぎのバ−テンも、少し人が良すぎるところが欠点というような男で、芙美子はい くぶん心が休まった。 客は、ほとんどが中年以上のオジンばかりである。「オマ*コ」の話と女房の ノロケ、そしてジャイアンツの話で一晩過ごそうという気の良い連中ばかりであ った。 ご他聞に漏れずこの町も男女を問わず若い連中はみんな逃げだし、過疎化の波 が押し寄せていた。 「この十年でさあ、1500人も減ったってさ。人口が」 ママはそんなことを言って、ガハハハと大きな声で笑った。 「なんであんたみたいな若い子が、こんなところへ」 女性募集の張紙を見たという芙美子に、ママは、本当にどうしたの、という具 合いに尋ねたものだった。 芙美子は、腹ばいのままそこに眠りこんでしまった。 気がつくと、窓の外は明るくなりかけていた。ゴロリとからだを返すと、天井 を見上げた。うす汚れた天井の節目を見つめているうちに、目尻にじわっとしみ 出したものが、脂と化粧で汚れた頬を伝って畳の上に落ちた。 「こ、お、ん、な、あ、女、にい、だあれがあ、・・・した」 芙美子は、しゃくりあげながらカサカサの唇を小さく動かした。 その日の昼すぎ、芙美子は駅の公衆電話からママの家に電話を入れると、旅行 鞄を手に改札口に向かった。 この項おわり
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「空中分解2」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE