空中分解2 #0689の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
これからどうする? 俺は自問する。 振られた、なんてことをこれ以上他の友達にいうわけにはいかな い。 だが・・・この気持ちは何とかしなければならない。 どうする? どうする? その時、俺の脳裏にふと、「あいつ」の顔が浮かんだ。 あいつに話す!? なんて馬鹿なことを考えるんだ、俺は。 あいつは馬鹿だぞ。総合評価が中の下(というふうに前にあいつ に言ったことがある)の人間にどうしてこの俺の恥を話さなければ ならないんだ! だが、頭で拒否しても心があいつを呼んでいる。あいつに話を聞 いて欲しいと言っている。何故だ? 俺は考える。 ・・・よしっ! 決心。 あいつを最後の一人にしよう。 心の声に従おう。 もしそれで駄目なら、その時は・・・。 俺は公衆電話を捜してあいつの家に電話する。 電話口に出たあいつに言う。4時に隣の駅前の本屋に来てくれ、 ちょっと用事があるから、と。 となり駅のほうがあいつの家に近い。 それに時間的にいって今から歩いて隣の駅に行くとちょうど4 時に着くことができる。 ・・・はずだったのだが。 時計を見る。4時20分。また遅刻してしまった・・・。 おかしいな? どこで計算が狂ったんだろう。 またあいつに怒られてしまう。 いつもなら罪悪感も何もないのだが、さすがに今回は・・・。 俺は本屋に入り、あいつを捜す・・・いた、見つけた。 「よぉ」 声を掛けるとあいつはこっちを振り向いた。 「よぉ、じゃない。たまには定刻どうりに来てくれよ」 少し怒って言う。 あやまる。 瞬間、あいつは驚きの表情。 「・・・は?」 俺に聞き返したというより自分の耳を疑ってしまったような返事。 そりゃそうだろう。俺がこいつにあやまったことなんかないから な。 「おい、おまえどうし・・・」 いいかけた言葉を途中で止める。 一瞬の間、そして質問。 「おい、どうしたんだ」 不安そうな声。 「ん?」 「ん、じゃない。本当にどうしたんだ?」 ああ・・・こいつは分かっている。今のところ母しか気付かなか った、事情を知っている尾崎でさえ気付かなかった俺の落ち込みに 気が付いてくれた。 「・・・ちょっと辛いことがあってな。・・・誰かにこのことを聞 いて欲しくて、それでお前の顔が浮かんで・・・その、とにかく俺 は今、落ち込んでいて・・・悲しくて・・・辛くて・・・つまり、 そういうことだ」 嫌になる。こんな話し方俺らしくない。こんな歯切れの悪い台詞。 あいつは俺の肩に手を置いて励ますようにいう。 「しっかりしろ!聞いてやるから」 ダレカ、はこいつか? 「ん、ありがとう」 礼を言う。 あいつは困惑顔で言う。 「こんな所じゃ話もできないな。喫茶店にいこうか?」 「で?」 サンドイッチセットを注文し終えるとあいつは聞いてくる。 何から話せばいいのだろう。尾崎は事情を知っていたから話すの は簡単だったのだが・・・。 「で?」 もう一度聞いてくる。 よし! 「うん・・・まあ・・・早い話が失恋したんだ」 「・・・はぁ?」 何て間抜けな顔をしてるんだ。 「だから・・・振られたんだよ」 「・・・」 あいつはあっけ顔。口をパクパクさせている。 頭がパニックを起こしたみたいだ。 運ばれてきたジュースを一気に飲む。 「ふぅ」 溜め息。 「振られたのか?」 「ああ、いや・・・ちょっと違うかもしれない。正確には交際を申 し込んだら断られたんだ」 「・・・」 あいつは黙り込む。思案。 何も言わない。 不安になる程の時の経過・・・。 「おい、聞いているのか」 きちんと聞いているのか不安になって聞く。 「すまんすまん。ちょっとびっくりしてしまって。うん、それで?」 俺は話し始める。 最初はクラスのある行事で同じ班なった事が始まり。そのうちに 一人の女の子が気になり出した。行事の都合上、放課後も班で集ま って仕事をすることが多かった。学校でも話す回数がより多くなる。 その女の子と一緒にいると胸がドキドキする。楽しく、幸せな気分 になれる。その内にただの友達では満足出来なくなってきて、1ク ラスメートではなく、恋人になりたくて交際を申し込み、そして・ からない。考えられない。どうしょう。どうしたらいいんだ。 「・・・という分けなんだ」 「ふーん」 間の抜けた返事。 人が真剣に話しているのになんなんだ、その間の抜けた返事は。 こっちの憤慨をよそにあいつは沈黙。 窓の外に目をやる。 つられて俺も・・・まただ。 街を歩いている何組ものカップルが目にはいってしまった。 ちくしょう! みんな楽しそうに歩いてやがる。 どうして俺だけがこんなに苦しまなければならないんだ。 胸が苦しくなる。 ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう・・・。 ・・・その時、 「残念だったな」とあいつが言った。 それは・・・それは真摯で寛く、優しくて毅い一言。 ザンネンダッタナ・・・そうだ・・・そう・・・なんだ。 あいつの一言が俺の心に浸透していく。 ああ、こいつは・・・まったく、こいつは・・・。 なんてやつだ。馬鹿のくせに、カッコ悪いくせに・・・。 こいつは・・・こいつは・・・。 俺は泣いていた。涙を流して泣いていた。 今までの怒りの涙とは違う悲しみの涙を・・・。 俺は窓を向いて泣き続けた。病んだ心を癒すために・・・。 あいつはそんな俺に気付かず、サンドイッチを片手にマンガを読 み始める。 窓の外のカップルを見ても、もうなんとも思わない、というとこ ろまではまだ行っていないが・・・ うん、大丈夫。 もう、自分一人で立ち直れる。 俺は涙をふき、あいつのほうを向く。 「ありがとう」 あいつに礼を言う。 「ありがとう、やっぱりお前を選んでよかった」 あいつは俺の言葉にキョトンとしている。 なぜ礼を言われたか分かっていないようだ。 自分の一言がどんなにも相手の心を救ったのか分かっていない。 そういうところがお前は馬鹿だというんだ。 分かっているのか? お前の一言で俺は救われたんだぞ。 と、言ってもよかったのだがくやしいから止めた。 あいつはしばらく考えていたが、肩をすくめると次のサンドイッ チに手を伸ばした。 俺もサンドイッチを食べ始める。 マンガを買っておけばよかったかな、と思いながら・・・。 つづく、かもしれない。
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