空中分解2 #0682の修正
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仕事を終えて会社を出た 外はまだ明るく西の空に浮かぶ夕日がとても 巨大にみえる 今日は週末 久しぶりに早く帰って妻と二人で水入らず などとボンヤリ 考えながら私は駅までの道を歩いていた 人通りの多い駅前の道 突然目の前に赤い風船が現われた 私はちょっと 驚いたがすぐにその下で 風船からたれ下がっている糸をしっかりにぎって いる少女を見つけた 小学校低学年ぐらいだろうか かわいいけれどもこわい目で私を見つめている 私も立ち止まって少女を見つめた 迷子だろうか それにしてはいやに落ち着いている 私に何か用があるのだろうか でも私はこんな子 見憶えがない 私がしばらく不思議そうに見つめていると 少女は にこりとほほえんで糸を にぎった手を私に差し出して " これ ありがとう " と うれしそうに 私はなかば反射的にその糸をつかまえた と 少女は雑踏の中にかけていった 私はあっけにとられて追いかけることもできなかった 私は わけがわからないまま駅に向かって歩き始めた 大の大人が赤い風船を手に街中を歩くのはかなり恥ずかしかったのだが どうしてもその風船を捨てる気にはなれなくて 私は人目を気にしながらも 結局家まで持って帰ってしまった 妻は私を見るなりふきだして " どうしたの それ? " " そこの街路樹の枝にひっかかっていたんだ " その晩 私は不思議な夢を見た 私の故郷の村祭りの夜 小学校1.2年生くらいの私が 赤い風船をもって ひとりで家に帰ろうとしていた 私はその風船がとても気に入ってて うれしくてたまらなかった すると 私の家の近くに住んでいる あの夕方出会った少女が 道端にすわ こんで泣いている " どうしたの? " こどもの私は少女に声をかけた " 風船が とんでいっちゃった " 少女はしゃくり上げながら答えた 私はたぶん その少女のことが好きだったのだろう ちょっとためらったが 涙で濡れた少女の手に自分の風船の糸をにぎらせて それでも素直に " これ あげるよ " とは言えずに " これ貸してやるよ あしたには いいか 貸すだけだぞっ " とぶっきらぼうに言って 走って家に帰っていっ 朝 目がさめてベッドの中で夢を整理してみた 確かに私がこどものころに こんなことがあったような気がする しかし 私は生まれたときからこの付近に住んでいる 私がこどもの頃このへんで村祭りなんかあった憶えはない でもなぜか 私がこどもの頃あの少女に逢ったような気がする ほんとに風船をわたしたような気がする 夢があまりにもリアルすぎて過去の記憶の中に組み込まれてしまったのだろ うか それとも・・・ ふと天井に目をやると きのうの夜 天井に漂っていた風船がなくなっている あたりを見回しても どこにもない 私がベッドの上で きょろきょろ部屋の中を見渡していると 掃除機の音の 中から " なに探してるの? 風船? " " ああ " " えーあれしぼんで落ちてたから捨てちゃったわよー " " どこにー " " 収集車が持っていきました もう10時よ はやく起きてよー " " ん? んー " そうなのだ 一晩経つと風船は しぼんでしまうのだ・・・ " なによ風船ひとつくらいで どうせ木にひっかかってたのをひろってきた ものでしょう " ああ そうだ 君の言うとうり あの風船は街路樹の枝にひっかかっていた ものだ 少女から返してもらった なんていうのは 私の作り話だ そんな不思議なことが そうやすやすと起こる訳がない けれども妻よ 君はどうして私を そう現実へ現実へと 押しやろうとするんだい? どうして私を 少しの間でも私の世界でそっとしておいてくれないんだい? せめて休みの日の朝くらい・・・ 久野利乙
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