空中分解2 #0674の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「そうなんだ。彼の失敗は、滑車とラジコンに気付かなかったことさ。で、島 にある道具だけで、蔵の中に墜落死体を出現させ得るのは、この方法だけだし、 これができるのは、浜村深百合だけだ。ということは、彼女が犯人だ。 こうなると、彼女はまだジャージや腕の始末はしていないはずだ。だから、 彼女は部屋にあれだけの香りを充満させていたのだ」 芳香剤には、そんな意味があったのか。 「それに加え、中島が部屋の捜索を認めてしまった。浜村は慌てたことだろう。 腕とジャージ、それに拳銃も始末しないといけない。彼女はそれらを一つずつ ラジコンに載せ、できるだけ上空を飛ばせながら、できるだけ遠くに運び、落 とした。拳銃は自分の部屋のすぐ上の雨樋にでも置いたんだと思う。これはあ とで使うから」 そうか、あの時の羽虫のような音は、ラジコン飛行機の音か。 「第三の事件は、彼女にとって、最後の犯罪であったから、成功しさえすれば よかった。十和也を門まで呼び出し……。あ、門まで呼び出したのは、館から できるだけ離れたかったからだ。拳銃を突きつけながら、詰ったんじゃないか な。どういうやり取りがあったか知らないが、そこで彼女は十和也を撃った。 二発目は、彼女が撃った物か、死体硬直による物か、分からないけれど」 「なるほどなあ。……しかし、納得いかない点がある。君は第二の事件が発生 した時点で、誰が犯人か分かったはずだ。どうして、その時に犯人を指摘しな かったんだ?」 「発生した時点とは、オーバーだな。まあ、確かに推測はついた。だが、僕は 動機を知らなかった。彼女が正一郎を他殺に見せかける細工をしただけでなく、 藤堂さんを殺したことから、彼女はまだ何かをやるつもりだと思った。また僕 は、手話で彼女と話した際、彼女は信念を持ったよい人間だと分かってしまっ た。こんな場合、僕は功名心をセーブするようにしている。そこには、警察で は相手にされない、人間のひだ・天の意志があるのじゃないかと。 僕は、彼女が十和也を、宝石を盗んだという罪で罰するつもりではないかと まで考えた。罪人を狙うのであれば、いや、本当はいいことはないのだが。と にかく、彼女の好きなようにさせようと思い、僕は第三の事件が起こるまで仮 病を使った。ところが、十和也は姑息かつ大悪人だった。ただの宝石泥棒なら、 浜村を告発しようと思っていたのだが、その気持ちがぐらつき始めた。さらに 中島の頼みだ。頼まれたとき、僕は聞いた。藤堂さんに身内はいるのか、と。 中島の答えは、いない、だった。次に僕は、浜村深百合を君に呼び出させ、そ の間に彼女の部屋を調べた」 「それで、ワープロを教えてもらえって、君は僕に言ったのか」 「そう。僕には確信があった。彼女が本当に、僕が思ったような人ならば、何 かを書いているはずだ。それも、フロッピーディスクにではなく、ちゃんとし た紙に書くと。調べた結果、彼女の部屋から便箋が見つかった。ラジコンの電 池を入れる箇所からね。その十枚ほどの便箋には、事件の真相も書いてあった が、それはほんの一部だった。大部分を占めていたのは、藤堂さんへの悔やみ ・謝罪だった。一杯に書き連ねてあったんだ。涙のせいか、ぼこぼこになって いる便箋もあった。僕は決心した。事故で片付けようと……」 地天馬は立ち上がると、私に背中を向けた。 「藤堂さんには、困ったもんだよ! 僕の忠告を守ってくれていたら、死なず にすんだものを! 何が起きるか分からないからって、あんな言い方をした僕 が悪かったのか?」 「そんなことはないよ、地天馬。君は最大限の努力をした。十和也を見殺しに したのはいただけないが、あいつは殺されて当然のことをしていた」 地天馬は黙っている。しかしやがて、ゆっくりと口を開いた。 「それよりもだ。僕は、浜村深百合を見殺しにしてしまったのではないだろう か? 彼女は自分の人生と引き換えに、あんなくだらない男を殺してしまった。 罪に問われようと問われまいと、その意識にさいなまれるんじゃないだろうか? 僕だって、せめてもの方法と思い、彼女自ら、犯行を認める言葉をしゃべるよ う仕向ける方法を考えた。しかし、彼女はそれでも構わないかもしれないが、 才野有一が問題なんだ。彼は浜村がいないと、生きる気力を失うんじゃないか とさえ思えた。彼はそれほど弱い人間だ。逆に、浜村も才野のことを気遣って いる。彼女は最後の犯罪を行うとき、才野にアリバイができるように、君に頼 んだんだよ。話相手になってあげてくれって」 「そうだったのか……」 「君は何の気なしに引き受けたようだね……。僕には、二人の将来を無理矢理 止めてしまうことは……」 一旦、言葉が切れた。 「僕としては、最大限、そして最初で最後の譲歩をしてしまったんだ。彼らは それに応えてくれないと困る。善次郎だけに任せてないで、才野自ら仕事に携 わっていってくれることを望むばかりだ」 地天馬は、後悔しないように自分に言い聞かせているみたいであった。 「ところで、地天馬。島を離れる際に、浜村……さんに渡した紙には何が書い てあったんだい?」 「……手話の型を描いたんだ。藤堂さんにだけは本当に謝ってくれっていう意 味の手話の型をね」 「そうだったのか。じゃ、船の中で、何か彼女と話していたけど、あれは?」 「どうして警察に言わないのかって聞いてきた。僕は聞き返した。<手首が二 つ>という事件は読んだ? 彼女はうなずいた。僕は答える。それなら話が早 い。あれに書いてあったように、僕はアルバイト探偵なんだ。プロじゃないん だから、間違えることもあるってね」 「それで……彼女は泣き出したのか」 私はある種の感動をおぼえた。傍若無人な彼が時々見せるこのような優しさ に触れると、たまらなくなるのだ。 「こう言い直しておくかな」 不意に地天馬が言った。 「僕が第二の事件のからくりに気付いたのは、全ての事件が終わってからだっ たと。すぐに気付いていれば、あの時点で犯罪に終止符を打てたものを!」 ……今回の事件は、地天馬が唯一、犯人を見逃した、そして事件の渦中にあ りながら犯罪を食い止められなかった事件である。事件解決に失敗したと言え るかどうかは、少し難しい気もする。最善の解決でなかったにしろ、依頼者の 希望もあったことだし……。 ちなみに、これ以後、地天馬は依頼を受ける前に依頼者に対し、「自分の好 きなように仕事をさせてくれるなら」と断わるようになった。 また、「アルバイト」探偵をやめ、「プロ」になったようだ。 しかし、私にはまだ謎があった。地天馬は島での最後の日、浜村深百合に対 し、酷い言葉を口にした。何故、言ったのか。彼に聞いても、見逃してやるの が悔しかったからさ、なんて曖昧に答えるだけだ。 ただ、一つだけ思い当たる節ができた。 最近、地天馬の小学校時代、彼と友達だったという人に出会った。その人の 話によると、地天馬にはその頃、口のきけない女の子と仲良くしていたと言う のだ。その子は、小さい内に死んだと言う。 それこそ推測だが、地天馬はその子と浜村深百合を重ねて見ていた。しかし、 浜村には才野がいる。だから、彼女を吹っ切るために、あんな言葉を口にした のではないか。そう考えたいのである。 −この章終わり− 注 中島の耳が聞こえるような描写場面がありましたが、それこそ、作者の私 が読者に仕掛けたミスディレクションです。 ここからは主に、浮雲さんへ。 遺体の扱い方について。1週間、警察へ通報できないのだから、致しかたな いと思いますが。現場保存が大切だからと言って、どんどん腐敗を続ける遺体 をそのままにしておきますか。 ただ、今、思い当たったんですが、せめて善次郎のカメラで現場写真を撮影 しておくぐらいはしてもよかったかな、と考えました。ヴァージョンアップの 時に、手直ししましょう。 人間の性格は変えにくい物ではあるでしょう。それに性格が変わっても、そ の探偵方法は変わらない、というのは佐野洋氏の意見。 それにホームズだって御手洗だって、情緒不安定で傍若無人で罵倒癖があり ますよ。これについては、この間紹介しました「ミステリー宣言」を読んでく だされば、記してあります。何故、探偵役にそんな性格の人間をすえたのか、 の理由が。(ぜひ、購入していただきたいので、抜粋はしません。あしからず) それでは。
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