空中分解2 #0585の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
SYSTEM LADYシリーズ1 嵐の神は怒る。 額の血管をふくらませながら怒り狂う。 肉体のあるものへの嫉妬。 「欲するものは血であり肉である」 まるでそう叫んでいるように、あたり一面が真っ赤に染まる。 木技はなぎ倒され、人々は血を吹き、赤ん坊の頭は豪雨に流される。 風・・・風・・・風・・・ 雨・・・雨・・・雨・・・ 嵐の神は怒る。 頭の中を怒りでいっぱいにしながら怒り狂う。 風に飛ばされるマイホーム。 雨に飲まれるマイタウン。 地獄絵のように人々は悶え苦しみ、そして、肉体の細胞は滅んでいく。 黒雲が支配する暗黒の世界で、テレヴィの音だけが騒がしく鳴っていた。 「昨日の嵐でよく崩れなかったものだ」 田宮民太は、のほほーんと見上げていた。 そこには地上3階建てのコンクリートで出来たばっちいアパートが、戦前から 変わらぬ姿をして民太を見下ろしていた。 この時代にコンクリートのアパートなんて、他のどこを捜してもみつからな いだろう。 「それにしても腹がへった」 さきほどからグーグーと鳴り止まぬ腹を押さえて、ため息をつく。 ここ3日ほどなにも口にしていなかった。 胃液が逆流してしまうような腹の痛さ。 今の民太の頭には、真っ白いごはんがホクホクと湯気をたてている光景しか なかった。 だからこそ、5キロの道をフラフラと歩いてきたのだ。 このボロアパートには民太の友人、近藤多一郎が住んでいる。 「たいちろーくーん!」 おそらくここ10年は出したことがないだろうと思われる、ありったけのねこ なで声を響かせながら民太はアパートへと駆け込んだ。 「僕がなにをしたって言うんだ!」 多一郎の声だった。そして、それは民太の期待を裏切るものであった事を知っ た。 「やかましい!おとなしくせんか!!」 いかつい顔をしたヤクザのような男が、多一郎をつれ去ろうとしていたのだっ た。 しかし、それは国家警察の上級刑事だった。 「俺のご飯が警察へいってしまう」 民太はとつぜん悲しくなった。 すきっ腹をかかえて、とぼとぼと5キロの道を歩いてきたのに、ご飯・・・も とい、多一郎は刑事と一緒によそへ行ってしまう。 「俺のご飯をかえせー」 民太はわけもわからず刑事へ飛びついた。 刑事は一瞬たじろいだが、すぐに体勢をたてなおし民太の顔面へパンチをおみ まいした。刑事のノックアウト勝ちであった。 「真っ白に燃え尽きっちまたぜ」 民太は虚ろいでいく記憶のなかでつぶやいていた。 民太が気がついたのは、すでに日も暮れた頃だった。 ソフトハウス「ピンクバニー」のプログラマー、只野瓜之介に起された。 「こんなとこで寝てると風邪ひくぞ」 玄関口で刑事に殴られ気絶していた民太は、のっそりと起き上がると瓜之介の 顔を見上げてつぶやく。 「腹へった」 そしてバタバタと多一郎の部屋へと駆け込んだ。 冷蔵庫を開く。そこには食料品がどっさりと買い溜めしてあった。 「おぉ、パラダイスじゃー!」 やわらかな脂肪がほんのりとのったロースハム。とろりとしたチーズ。のどを うるおす真っ白な牛乳。 民太は感動の涙を流していた。 瓜之介はそれをあきれ顔で見ながら、自分もソーセージをかじっていた。 「そうだ、多一郎逮捕されたんだって?」 瓜之介が、冷蔵庫の前でむさぼり食う民太に聞く。 「そういえば・・・ムシャムシャ・・・刑事が来て・・・ムシャムシャ・・・ 多一郎を連れていったけ・・・ムシャムシャ」 「ったく、食べるか喋るかどっちかにしろよ」 「でも・・・ムシャムシャ・・・なんでだろ・・・ムシャムシャ」 瓜之介がぼぉーっと外を見ながらつぶやく。 「あいつ、ハッカーまがいな事やってたからなぁ」 「そういえば・・・ムシャムシャ・・・あれは国家警察だったな・・・ムシャ ムシャ」 その言葉に驚き、瓜之介は民太に聞き返す。 「こっかけいさつぅ!?」 「うん・・・ゴクゴク・・・あの衿章はまちがいない・・・ボリボリ」 「なんで国家警察が多一郎を逮捕するんだよ。あいつ防衛庁のコンピュータ にでも潜りこんだのかな?」 最初、真っ白な壁がみえた。 次に鉄の鎖に縛られている己の体。 「ここは、どこなんだ」 多一郎はまだはっきりしない頭を左右にゆさぶり、あたりを見回した。 「お目覚めかな?」 図太い男の声。 「誰だあんたは、いったい僕がなにをしたというんだ!」 多一郎の激しい口調にビクリともせず、男はゆっくりと落ち着いた表情で話し 始める。 「なかなか元気がいいねぇ、だがそれも時間の問題だ。率直に言おう。君の 開発したユキコシステムがほしい」 「ユキコシステム?」 「そうだ、ユキコシステムだよ。あれはすばらしい機械だ。だが、個人で所 有するのはあまりにも危険すぎる。あれは、国家が運用してこそすばらしい物 となる。そう思わんかね?」 男の冷めたヘビのような目が、野望に燃えているのがわかる。 「おまえらのようなバカにあの機械は使いこなせんよ」 多一郎がそう言い終ると同時に、警棒が右の頬に飛んで来る。口の中が血であ ふれる。 「あまりなめた事を言うと承知せんぞ」 男は血の付いた警棒を多一郎の口に突っ込んだ。 男のくちもとは少し笑っていた。蝶の羽をむしる子供のように。 「おぉ、食った食った。満足だぁ」 民太は冷蔵庫の前で大きく伸びをした。 「おーい、来てみろよ。すげえもの見つけたぜ」 瓜之介が目をランランと輝かせ騒ぐ。 手には一枚のCD−RAMが握られていた。 「なんだよ、俺はもうなにも食えないぞ」 ぶつぶついいながら、民太はそのCD−RAMを手にとる。 「なんだよ、これ?」 「UKIKOSだよ。多一郎が開発していた新OS」 「うまいのか?」 民太がこの分野に関しては素人である事を思い出し、説明する。 「うちのピンクバニーと電子機器メーカーであるシステムキャットが共同で プロジェクトを組んだんだ。新しいOA化の波というキャッチフレーズでな。 そのためには新しいOSを開発することが必要だった」 瓜之介は得いそうに喋りつづける。 「そのとき、OSの開発に関しては多一郎に一任しようという事になった。 なにせヤツはフリーのSEとしては最高の腕の持主だったからな」 民太はポケッとして瓜之介の話しを聞いていた。ただ、ポケッと。 だいたい元警備員だった民太には、瓜之介や多一郎のような知識はない。 はっきりいって解らない。チンプンカンプンなのだ。 しかし、瓜之介は言葉を続ける。 「今回の逮捕騒動で開発の事を心配してたんだが、すでに完成してたとはなぁ」 そう言いながら、瓜之介はCD−RAMを民太の手から奪い取ると近くにあっ たコンピュータを稼働させた。 「ん?なんだ、こいつ端末かぁ。本体はどこなんだろ」 どうやら、稼働させたのはコンピュータの本体ではなく、ただの端末のようだっ た。本体を稼働させようとあたりを見渡すが、それらしき物はない。 「こりゃぁ、だめか」 そう言って端末の電源を落とそうとしたとき、ディスプレイにタイトルバック が表示された。それにはしっかりと「UKIKOS」と書かれていた。 「やった、どうやら本体は稼働中らしい」 一人で落ち込んだり、喜んだりしている瓜之介を、最初奇妙な目で見ていた民 太だったが、すぐに飽きていろいろと物を引っ張り出し始めた。 多一郎の部屋はそれほど広くはなかったが、わけのわからない機械が色々と あり、素人の民太でもそれなりに興味をひかれた。 この間など、開発中のアンドロイドを見つけた。すぐに多一郎が駆けつけたの でロクに触れなかったが、いいものを見たという気になれた。 「あれは絶対、女性型だった」 民太はあのアンドロイドをもう一度見たいと思った。それで、捜すことにした。 しかし、前に置いてあったところにはなにもない。 「ったく、どこに隠したんだ」 「うぎゃぁー!」 瓜之介がけたたましい叫び声をあげる。 「うるさいなぁ! すこしは静かに出来んのか!?」 民太は怒鳴る。物を考えているときに騒がれるのを、一番嫌っているからだ。 「そんなこと言ってもいきなり動くんだぜ!」 瓜之介の目は真剣だった。くちびるはわなわなとおびえている。 「なにが動くんだよ」 民太は、瓜之介が指さす方へにじりよっていった。元警備員というプライドが あるのか、それとも単なる好奇心からか、動いたという箱に手をかけた。 「結構デカイな」 それはアルミで出来た箱だった。長さ2Mくらいの巨大なものだ。 「なんかしたのか?」 民太が、震えながら机の下に隠れる瓜之介へ聞く。 「なんにもしてねぇよ。端末いじってたらいきなり動いたんだ!」 あいかわらず口だけは威勢がいい。 「開けてみようか?」 おびえる瓜之介に聞く。ニタニタと意地の悪そうな顔をして。 「ばっ、バカヤロゥ!危険なものだったらどうすんだよ」 そんな瓜之介の不安など気にもせず、民太は箱のふたをはがし始めた。 「おい、よせよ。危ないって」 瓜之介はいつでも逃げられる体勢を整えている。 箱の四隅を止めてあった最後のネジをはずしたとき、中からドーンという勢 いで人間の腕が飛び出してきた。 「うわぁー!!」 さすがの民太もびっくりして、叫び声をあげる。 腕はしっかりと民太の胴にからみつく。 そして、人間の声がうっすらと聞こえる。 「うぅーん、ここせまいよぉ。早く出してぇ」 それは可憐な少女の声。箱の中からパチリとした瞳が民太を見た。 そして微笑む。 「おはようございまーす。ゆき子でーす」 民太はジッとその少女を見つめ、思った。 「かわいい・・・」 −2−へつづく・・・
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