空中分解2 #0572の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「そろそろ帰りましょうか。」 細君が半分眠っている長男を抱いて、荷物をバッグに詰め始める。おお、そう であった今日はくどいようだが家庭サービスの日なのだ。私達はベビーカーに息 子を座らせ、長女に帽子をかぶらせて夕暮れのだだっ広い野っ原を歩き始める。 この長かった強い残暑もやっとその勢力にかげりを見せ、林の方から吹いてくる そよ風が眠っている息子の手にしっかりと握られたネコじゃらしの穂を揺らして いる。 帰りは駅から家までの途中にある広場で盆踊りをやっているはずなのだ、それ を見てから帰ることになっている。都会では盆踊りは八月の終わり頃に多い。旧 盆の時期はそれぞれが田舎に帰っていて、幾分町が寂しくなるためであろう。 私も今年は珍しくお盆休みに奈良の田舎に帰省し、墓参りも済ませてきた。親 父と一緒に車でお参りしたのだ。市が管理している霊園であるが、ここには親父 の親父が眠っている。こういう施設は墓参りが何年か途切れると、市の方で登録 を抹消するそうである。墓地の管理人の話だと三代もつのは稀だそうだ。私がい ずれここに入った後に息子は果して自分の息子を連れてお線香をあげに来てくれ るだろうか。 私は帰りの電車の中で丸々と太った我が長男の重さに閉口しながら窓から見え る赤い空に目をやった。 ・・・・・などといいながら、まだまだランバダである。 音楽はまだまだ続いている。マリーナさんの腰は揺れている。 もし今、私が幽体離脱して、彼女にしがみついている己が姿を客観的に眺める ことができたなら、発作的に手首をカミソリで切ってしまうに違いない。私は人 間の目を顔の前面に付けてくれた神様に感謝した。いや、もしかしたら顔の前面 に目の付いている種族だけが自殺による種の滅亡から免れて繁殖したのかも知れ ない。 ついに私の脳裏に天啓がひらめいた。舞踏研究会で先輩に言われたアドバイス を思い出したのである。「下手な者は自分で踊ろうとせず、体の力を抜いて上手 なパートナーに腰をぴったりくっつけ、重心をそこに置いて、されるがままに身 を任せればいい。」これである。 そう悟ってからマリーナさんのお尻に回した手を引き寄せる。腰と腰がぴった り密着するのであるが、この踊りの体の合わせ方は変わっていて、彼女の右の太 モモが私の股間に入り、私の右の太モモが彼女の足の付け根に割り込むのである。 なるほど力を抜いて彼女の腰の動きにそのままこちらの腰をくっつけたまま合わ せていれば、なんとか形にはなりそうである。目で見て頭で考えるからおかしく なるのである。 マリーナさんとその「変形松葉くずし」の体位のまま音楽に身を任せていると、 なるほどちょっと楽しい。腰を密着させれば当然大きいおっぱいも私の胸にやん わりとつぶれる。その汗のにじんだ二つの乳房の狭間から柑橘系の香水の香りに 混じって微かにエキゾティックなわきがの匂いが直接鼻に入る。彼女の白い右腿 は踊りの揺れに合わせて私の股間を擦り、私の大腿部は彼女の股間を滑りそこの 体温よりやや高いほてりをズボンを通して感じる。ときどき彼女が膝を段々曲げ ていき二人の腰の位置を下げるのであるが、そうするとお互いの腿の当たって刺 激する部分が微妙に後ろの方向にずれて心地よい。 頬と頬をくっつけるようにしているその形から彼女が体を離し、私の左手を軸 にしてターンを入れる。私は彼女のするがままに逆らわないようにしていればい い。そのまま彼女は私の手を握ったまま自分の両手をクロスさせ後向きになって、 また私と腰を合わせる。回転するときにおっぱいが遠心力で私の右手に当たって 弾む。今度は彼女のお尻の肉が私の腰の前面に密着して刺激する形である。そし て私の手は彼女の前面にクロスされた手にそのままついていっているので、両脇 から彼女の胸を締め上げる形になるのである。ここで男性は女性の髪から漂う匂 いを堪能することができる。そしてその・・・ああ、いかんいかん、つい「随筆」 の主題を忘れて描写にいそしんでしまう。 などと言っているうちにその短い異国の宴(うたげ)は終った。最後にその黒 髪のボニータから頬っぺにキスをしてもらい握手をしてステージを降りる。私は 口紅の跡が残らぬよう丹念に頬を手で拭った・・・・・・・・・・・・・・ トトンガトン タカタッタ トトンガトン そう、これこそ我が遺伝子に刻まれたリズムである。家庭サービスの最後をし めくくる町内の盆踊りである。それは盛大にとは言い難かったが、浴衣を着たお ばさんたちがささやかにやぐらの周りを巡りながら手を動かしていた。東京音頭 である。踊りの輪には入らない人達も周りを取り囲んで、そのリズムに身を浸し、 ちょうちんの明りの下で踊っている人々にぼんやりと目を向ける。踊る阿呆に見 る阿呆である。家内と長女は手をつないで観客の輪の中に加わった。私は後ろで 太鼓の音に目を覚ました長男をベビーカーから降ろし、小さなジュースのパック にストローを差し込んで渡してやる。息子は立ったまま美味しそうにストローを 吸っている。前にいた湯上がりの浴衣姿の若い女の子がアップにした髪からシャ ンプーの匂いをさせていた。虫の声も曲の合間に涼やかに聞こえてくる。夏も終 わりである。 音楽はテレビの子供向けアニメーションの盆踊り用挿入歌に変わる。踊ってい たおばさんの一人が、娘も踊りの中に入らないかと誘いに来てくれた。娘はモジ モジしていたが、ママと一緒なら踊るというので、細君に連れられて輪の中に入 った。ママに両手を動かされて神妙な顔つきで「アラレちゃん音頭」を踊ってい る。 と、下を見ると長男の若旦那がいない。慌てて見回すと、さっきのジュースを 近くにいた同じくらいの年格好の女の子に飲ませてやっているではないか。ニコ ニコと二人でストローを交代で吸いながら、しっかりその女の子と仲良くなって いる。向こうのお父さんも慌てている。お前は一体そんなことをいつの間に覚え たのだ。 「遺伝子の直感」である。 くり えいた
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