空中分解2 #0564の修正
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赤き不滅の星の民(1) 並木きょうすけ 「ヨーコ、やっぱり戻ろうよ」 私はもう一度言ってみた。 「クリットファウム地域警察へ言ってもう一度捜索してもらうように頼もうよ。 私達だけじゃ、どうにもならないわ。二重遭難ということもあるし」 「大丈夫よ、アキナ。ケンタローもついているんだから。地域警察なんか、お ざなりの捜索隊をだしただけじゃない。あてになんかなるもんですか」 ヨーコは一度言い出したら人の言うことなんか聞かない性格なのだ。だけど、 あんなポンコツロボットなんか、いてもいなくても同じじゃない。そりゃ小さい ときから父親がわりだった兄貴の命がかかっているんだから心配するのは無理も 驍ネいけど。 私はランドクルーザーの窓から外に目を移した。森の中は暗い。はるか上方か ら光がいく筋かさしこんでくる。そこをまっすぐに突っきって、このニューシル ベスター林道が走っている。 目的地はブロムワード湖だ。写真で見るかぎり、きれいな湖と湖畔のロッジが ある普通の保養地なんだけど、2年ほど前からちょっとばかり様子が違っている。 「森の人」が出没するのだ。 彼らは人類によく似ている。いや、ひょっとすると人類そのものかもしれない のだ。 行方不明になったトシオさんは、この惑星レッドクラウ随一の名門校であるマ クリム大学の考古学研究室の一員としてブロムワード湖へ調査に行った。そして、 調査隊全員が行方不明になってしまったのだ。 「森の人」に捕まったのだという噂もある。しかし、今までは彼らは少なくと も好戦的ではなかった。私たちの前に姿を現わすようになってからも、時おり物 々交換をする程度で彼らはすぐ森へ戻っていった。それに彼らには武器がない。 斧や吹き矢でレイガンにかなうわけがない。 突然ものすごい衝撃とともに私は座席から投げ出された。嫁入り前の娘の顔に 傷でもついたらどうするの。 右肩が痛い。 視界が斜めだ。 体勢を立て直そうとして左手をついた。やわらかい感触。 「アキナ、痛い」 どうやら私の左手の下にヨーコの胸があるみたい。 「あなたがわき見運転してるから、こんなことになるんじゃない。少しは辛抱 しなさい」 「だって、森の人が見えたような気がしたのよ」 きな臭い。なんとなくいやな予感。 「それよりはやく逃げ出さないと焼き豚になるわよ」 「豚でわるかったわね」 やっとのことで二人はランドクルーザーの残骸から逃げだした。その途端、ボ ーンという音とともにランドクルーザーは燃えだした。景気よく燃える炎は見て いて気持ちいい。自分の立場も忘れてしまう。 「ケンタローが燃えちゃう」 唐突にヨーコが叫んだ。 やっぱりあいつはポンコツだったのよ。 すると、勢いよく燃えている炎の中から、煤だらけのドラム缶のようなものが 顔をだした。そして、ドラム缶の上面からひとまわり小さな円柱がでてきて左右 に二、三度回転した。 「お嬢様、大丈夫です。私はニューセラミック製ですから熱には強いんです。 それより、これからどういたしましょうか」 黒こげのドラム缶はゆっくりとキャタピラの音をさせてやってくる。 「まあ、汚らしい。私、こんなのと一緒に歩くのはまっぴらよ」 「アキナ、あなただって...」 結局、歩いてブロムワード湖まで行くことになった。大学は春休みだからいい ようなものの、宇宙港でのバイトを休むのは痛い。いつになったらイブニングド レスが買えることやら。 時おり甲高い鳥の声が聞こえる。 惑星レッドクラウの生物相はテラに似ている。似ているなんてものじゃない。 ほとんど同じだ。もちろん、私たちの勇気ある祖父母たちがハイパースペース宇 宙船で持ち込んだ生物も多い。しかし、その時にはすでに森もあり鳥たちもいた という。そして森の人も。 一時間ほど歩いただろうか。木がまばらになってきた。 「もうすぐブロムワード湖よ。さあ、ファイト」 ヨーコの辞書には不安とか恐怖という言葉が欠けてるんだから。全く楽天的で 向こう見ずな性格。私はトシオさんに秘かに恋しているからこそ、こんな所まで ついてきたんだけど、これじゃ先が思いやられる。 「着いたらどうするつもりなの。私はまずホテルでゆっくり休みたいわ。それ にシャワーも浴びなきゃ」 「何を暢気なことを言っているのよ。前を見なさい」 ヨーコが指さした先をたどっていくと、十メートルほど前方に、いつの間に現 われたのかマントのようなものを着た森の人が十人ばかり突っ立っているではな いか。各人は手に槍のようなものを持っているが今すぐに突き出してくる気配で はない。肌の色は濃いが色とりどりの耳飾りをしているので妙に色のバランスが とれている。 「ヨーコ、逃げよう」 私はじりじりと後ずさりを始めた。 「彼らは後ろにもいますよ」 ケンタローの声はどうしていつも無感動なのかしら。 「ヨーコ、やばいよ」 ヨーコは正面を見つめたままだ。 「私、兄貴達のことを聞いてみるわ」 何という無謀さ。確かに彼らは今までは反抗的でなかったけれど、これからも そうであるとは限らない。現にトシオさんたちが行方不明になっているではない か。 でもヨーコは私の制止を無視して森の人の方へ歩いていく。そして何と彼らと 喋りだしたのだ。彼女、森の人の言葉をトシオさんから教わっていたのね。ちき しょう、私には教えてくれなかったのに。 しばらくすると彼らは招くような手ぶりをしてから森の中へ入っていった。続 いてヨーコとケンタローも。 「待ってよ。私も行くわ」 (続く) zン・」アセ 赤き不滅の星の民(1) 並木きょうすけ
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