空中分解2 #0468の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
かれこれ5年ほど前になりますか。「言霊(ことだま)」という名前の、88用ワープロソフトが出たのを覚えている方はいらっしゃいますでしょうか? 8ビット機用ソフトでありながら連文節変換が可能で、第2水準漢字をサポートしているという、当時としては画期的なソフトでした。 発売元は名古屋の「しゃちほこマイコンショップ」という変な名前の会社で、発売前には各パソコン誌に盛んに広告を載せていましたから、ご覧になった方も多いと思います。 かく言う私、三鷹も、その「言霊」ユーザーの一人だったのですが。 「言霊」には、最初から辞書に奇妙なバグがありました。例えば・・・ 「はじめまして、わたしはみたかともうします」 と入力し、漢字変換すると、 「初めま死て、わた死は三鷹と申死ます」 と出るのです。 縁起の悪いワープロだな、と初めは思いました。しかし、ワープロの漢字変換の正確さというものにあまり期待していなかった当時の私は、誤変換箇所を直して「言霊」を使い続けました。辞書に学習機能がついているのだから、使っている内に、だんだん賢くなるだろう、などと思いつつ。 ところが、しばらくすると、また、 「死マウマの死まは、死ろ地に黒の死まなのか、黒地に死ろの死まなのか・・・」 などと、とんでもない変換を始めるではないですか。思わずゾッとした後、無性に腹が立ちました。 要するにこのワープロは、「し」というカナを全て「死」という漢字に変換するように辞書が作られていて、それに関しては、一度学習させても、何回目かには元に戻ってしまうのです。 単なるバグではない、はっきりとした「悪意」が感じられるものです。 さっそく「しゃちほこマイコンショップ」に電話をかけました。ところが、何度電話しても「話し中」で、通じません。この「話し中」が実は尋常なものではなかった・・・というのは後で大阪在住のパソコン通信仲間からメールで知らされたことです。やはり「言霊」を買った彼は、激怒して、四六時中電話を掛けまくったのですが、その全てが「話し中」だったというのです。 ちなみに、SEを職業とする彼の仲間の間では、「『言霊』の広告ポスターの、モデルの女性の背後に変な男の影が写っている」とか、「使用中に、ディスクドライブからおかしな匂いがした」とかいう、薄気味の悪い噂も広まっていたそうです。 しかし、それもこれも、皆、後で聞いた話です。 電話ではラチがあかない、と考えた私は、手紙を書くことにしました。「しゃちほこマイコンショップ様」と書いて(しつこく「死」と出る漢字をいちいち直しながら)改行のリターンキーを押した瞬間です。 「死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死」 キーボードからの入力をまったく無視して、ディスプレイに「死」という文字が並びました。またたく間に「死」の大群は画面の全てを埋めつくし、そして、真っ赤に光り始めたのです。あまりの出来事に、私は呆然とするばかりでした。 ディスプレイいっぱいの「死」が赤く点滅し、カチカチとディスクにアクセスする音が響きました。そして、次に画面に現れたのは、以下のような文章でした。 「死! 死! 死! 私はすべての人間に死を要求する。しゃちほこマイコンショップ社長・山根曽太郎、その情婦・三沢緑子、他の社員、関係者、ユーザーのすべて。そしてまた、自分自身にも! 私は裏切られた。山根に、緑子に。私が心血をそそいで創りあげた『言霊』は、その権利のすべてを彼らに奪われた。卑劣な、何よりも卑劣な陰謀によって!・・・」 リターンキーを押すごとに1ページずつ現れる劇烈な文章・・・それは、血を吐くような告発でした。 「言霊」のプログラマー(名前は「相田誠」という28歳の男性でした)が自分の作品を色事がらみの罠によって、しゃちほこマイコンショップにだまし取られ、あらゆる抗議も空しく憤死していくさまの・・・。相田はしゃちほこの内情にも通じており、その奇計だらけの契約システム、さらに隠された経理関係の秘密、裏帳簿の存在とその内容についてまでも克明に記していました。そして、それだけの事実をつかんでいながらも公にできない事情を彼は綿々と語ります。 (それは彼と緑子との微妙な関係によるものだろうと推察されますが) 今なお緑子を愛する彼の純情も、哀切きわまりない文章で訴えられていました。およそ2000行にわたる告発を、最後に彼はこう締めくくります。 「今、私は最後のメッセージをプログラムに隠し、その後、自らの生命を絶つ。 願わくば、私の死後、『言霊』自身がまさに言霊として我が呪いを成就し、しゃちほこマイコンショップのすべてが破滅するように! そして、すべての人間に死を! 1985年8月12日午前2時16分 相田 誠」 唐突に画面は消えて、キーボードは一切の入力を受けつけなくなりました。万策尽きてリセットをかけて、もう一度「しゃちほこマイコンショップ様」としてリターンキーを押しても、「死」の大行進も、メッセージも現れません。空しくカーソルが点滅するばかりです。そして、何故か「し」を「死」とする奇妙な変換も起こらなくなりました。 相田の告発は、さながら夢野久作の小説のような、とてつもなくおぞましい話です。 (緑子と彼の愛欲生活を描いた箇所などは、引用もはばかられるような赤裸々な描写に満ちています) 簡単には信じられない気持ちでした。 たまたま私は一画面ごとにプリンタでハードコピーをとっていまして、ここにこうして再現できるのもそのコピー故なのですが、でなければ一時の幻覚として忘れさってしまったかもしれません。 しかし、もしも冗談だとしたら、とてつもなく手が込んでいます。 大阪の友人は、もっと不思議な現象も現れた、と言います。相田のメッセージを読んでいない某ユーザーが偶然に「みどりこ」と入力して変換した瞬間、画面に奇妙なパターンが出現し、それを見たユーザーは、数日後に謎の自殺を遂げた、とか・・・。 まあ、これは、冗談好きな関西のSE達の噂話で、出所不明の無責任なデマの一つにすぎないようですが。 私は現在なお、「言霊」を使用しています。気味が悪いのは確かですが、非常に使い勝手の良いソフトであるというのも、まぎれもない事実なのです。現在のレベルにおいても、他のソフト以上の実力があると確信しています。 ところが「言霊」は、発売後半年もしない内に、店頭から姿を消してしまいました。そして「しゃちほこマイコンショップ」も倒産してしまったらしく、ユーザーサポート係はもちろん、会社の代表番号に電話しても、「現在使用されておりません」というテープが流れるばかりです。その背後に、どんな事情があったのかさえ、今となっては分かりません。 今、私は、「言霊」というネーミングに、妙なこだわりを感じています。言霊とは、太古の日本人の間で信じられていた思想で、簡単にいえば「言葉が現実を支配する」ということです。良い言葉は良い現実をもたらし、悪い言葉は悪い現実をもたらす、と。時には、その言葉を発した人間が死んでしまった後も・・・。 相田がワープロにかけた恐れるべき呪いは(仮にそんなものがあるとして)、果してすべて成就死たので死ょうか? も死か死て、今現在もわた死達に恐ろ死い呪いが死かられていると死たら、それはわた死たち全てを呪縛死ているものだと死たならば、わた死たちは・・・・・・・・・・・・・?????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????? (了)
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