CFM「空中分解」 #1803の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
喜三郎は、もう少しで目を覚ましそうだった。実際、意識はあるようなのだ が、うなされており、さすっても揺すっても正気に戻らない。 「喜三郎君、しっかりして!」 手児奈が彼の耳元に「大きな声」でささやいたが、気付かない。 「どうしよう・・・。ティハヤさんには、あんな事言われたけど、一人じゃ 心細いわ。力になってもらわなきゃ。」 思わず、心配が口を突いて出た。その時、洞窟に誰か入ってきた。氷山氷河だ った。奇妙な格好をしている。身体に白いシーツを巻き付け、ビー玉をあちこ ちに張り付け、頭にはオマルをかぶり、こめかみの辺りに扇子を着けている。 何かのアニメでみたような・・・。 「お、やはり往生しておるな。さ、これを食え。」 「どうしたの、氷山君。どうしてここに。それにその格好・・・。」 「拙者は今、氷山であってそうでない。この身体を借りているだけじゃ。」 「それでは、誰?」 「白鳥座星域からの使いの者でござる。先ほど、見たであろう、あの天使達 の仲間じゃ。」 「本当に?これもグー星人の幻覚じゃないのかしら。それにどうして、時代 劇言葉を使うんです、天使が。」 「幻覚では、断じて、ござらん。そなたは覚醒された。故に幻覚に悩まされ ることはない。このような言葉遣いなのは、この者の身体を借りているためじ ゃ。グー星人の力がこの者に及んでおるためじゃ。ともかく、これを。」 そう言って、氷山天使は白くて円状の物を差し出した。 「これは、そなたのように選ばれし者以外の者を覚醒状態にするウシロモン とこそ言う物なりけれ。い、いかん。平安言葉になりだした。気を取り直して ・・・。それで、こいつを汝の力となる者に与えるのじゃ。よく考えて与える のじゃぞ。不要なる者にな与えそ。」 手児奈はウシロモンを受け取り、一カケラ、喜三郎の口に含ませてあげた。 「あ?」 喜三郎は目を覚まし、なをかつ、「覚醒」したようであった。 「俺、どうしたんだ?あれ、氷山じゃないか!ここは球場か?」 「違うのよ、喜三郎君。実は・・・。」 手児奈は彼が気を失っていた間の成行きを説明した。 「そうか・・・。おい、氷山よ。グー星人も地球人も傷つかないで、終結す る手はないのか?」 「拙者、その事を伝えにも来たのだが、グーの内、特に好戦的な輩が邪魔を して、口でも心でも語ることはできぬ。話せる事だけ話そう。」 ここで、氷山天使の言葉は、普通に戻った。 「白鳥座星域は元は、パグチョー座星域と言った。多分、これが日本等にあ るジャンケンの基礎になったのだろう。それはともかく、三どもえの状態で、 保たれている星域なのだ。グー星人の親玉は、実はドラえもんなのだ。チョキ 星人はバルタン星人の別名、パー星人は地球で言うところの<カミ>に当たる のだ。」 「カミ?神様なら、何とか出来るんじゃないの?何が起こっているのか知ら ないけど。」 「先入観を持ってはいけない。神が必ず正義だとは限らない。それで、グー が反乱を起こしたのは、星域の一部地域で、5>2>0運動が起きたからだ。 この運動は、グーが一番低級な民族だとする運動だ。全く、ナンセンスなもの で、ひとにぎりの狂信的な学者達が言い出した事だったのだが、グーは本気で 怒り、戦争の準備を始めた。ところが、新兵器を開発中に大事故を起こし、彼 らの母星を住めないものとしてしまったのだ。だが、戦争は始まった。住む星 を求めての侵略戦争だ。その過程において、グー星人は二つに分かれた。この 戦争の原因を作ったパーやチョキだけを侵略しようというグループと、どこで もいいから戦争を仕掛け、勢いに乗じて宇宙支配をも、もくろむグループとに。 その好戦派が第一目標に選んだのが、地球という訳だ。」 「そういう事情なら、あなた達、白鳥座星域の人達でカタを着けるべきだ。 地球人にやらせようなんて、虫がよすぎる。」 「できることなら、そうしたい。だが、地球において、バルタン星人は悪者 であり、そう簡単には姿を現せない。神たるパー星人は、地球人の持つ数多く の神のイメージを壊すだろうし、また、地球人のイメージにパー星人達もその 能力を左右され、つまり、定まらないものとなるのだ。さらに、三どもえの状 態が崩れつつある白鳥座星域では、苦手のいなくなったチョキ星人が幅を利か せ始め、混乱をきたしている。以上の理由によって、我々白鳥座星域の者では、地球でもこの次元の混乱を収めることはできないのだ。頼む。可能な限り、尽 力するから・・・。」 「フム。」 侮蔑的な表情を浮かべながらも喜三郎は、 「分かった。そういう状況なら、しょうがない。だいたい、自分の星は自分 で守るのが筋ってものだ。野球でも同じさ。」 と承諾した。無論、手児奈も。 「でも、どうして、私達が選ばれたの?」 「それは、あなた達の高校の名に関係あります。三本松の三は三どもえを意 味し、また、三つの力でもある。本松の頭文字は、BM。白鳥座の別名を知っ ていますか?ノーザンクロス(北十字)と言うんですが、この頭文字がNC。 NCを前後逆にするのに一つの力、CをB、NをMと一つずつ前にずらすのに、 それぞれ、一つの力が。併せて三つの力がいるのです。野球部を選んだのは、 白鳥座は主に九つの星からできているからです。また、白鳥座には、ブラック ホールがあったり、X線を出している星があったりします。それが手児奈さん、 あなたやレイチェルなのです。これを偶然と片付けるには、無理がある。既に あなた達が選ばれることは、決定済みだったのです。」 「ふーん。恐ろしいほどの偶然ね。で、星域での戦争はどうなっているの?」 「個人的なことですが、私、パー星人です。果敢にチョキ星人の攻撃に対抗 しています。」 「それで首尾は?」 「それが、コッテンコッテン。尻尾撒いてよー、逃げて来ちゃった・・・。 天敵が相手、仕方ありません。5>2>0運動にしたがうなら、勝てるのです が、そうもいきません。」 「グー星人が元の状態になれば、星域の戦争も終わる・・・?」 「その通りです。さあ、急がないと。そろそろ、次元爆弾が爆発しない世界 を、クエストさんが描き終えたでしょうから、時間を通常に戻します。」 そう言うと、氷山天使は、その場にバタッと倒れてしまった。もう、「天使」 ではないのだろう。ウシロモンを与えると・・・。 「あれ?ここ、どこ?あ、キャプテンにマネージャーじゃないですか!どう なってるんです?」 「いいから、とにかく、外に出よう。」 洞窟を出ると、そこには、現在戦闘中のマーフィ(乱菜)を除いて、野球部の レギュラーがいた。 「どうしたんだ、みんな。」 「分かりません。キャプテンの行方が分からなくなってから、俺がキャプテ ン代理になって、普通に部活をしていましたが、ある時、皆で練習をしている とき、光に包まれ、気付いたときには、ここに・・・。」 と、天津が言った。これは、白鳥座星域の連中の心尽しだな、と思った喜三郎 と手児奈は、事情を説明し、協力を求めた。 「もう一度、甲子園を目指せるんですか!でも、そんな。俺達に何ができる って言うんです?」 「できるのよ。これを食べれば。」 手児奈はそう言いながら、一人々々にウシロモンを渡した。ところが、埋火と SOPIAに手渡そうとしたとき、喜三郎が止めた。 「女には、きつすぎる。」 「あら、私も女よ。」 「手児奈。おまえは『選ばれし者』だから、いいんだ。でも、普通の女の子 には・・・。」 「何を言うの、キャプテン。今まで一緒に野球、やってきたじゃないの。こ んな時だけ、男女で分けないで。」 と埋火。SOPIAも、片言の日本語で抗議をする。 「ミーもダイジョウブよ。こんなコト、好きネ!まだ、ばってぃんぐはデキ ナイけど、キット覚えます。だから連れていって!」 その気迫に押され、喜三郎も、彼女達の言うことをのんだ。 「とにかく、モノリスを数多く集めることだ。そうしたら、道は自ずから開 ける。」 「どうやって?」 全員が喜三郎に聞き返す。 「・・・分からん。俺に聞くな。一番、覚醒しているのは、手児奈なんだか ら、手児奈に聞け!」 全員の目が、手児奈に集まる。 「そうね。何とか、乱菜君に連絡、取れないかしら。彼らにグー星人の注意 を引き付けてもらっている間に、島の中央部に隠されたと考えられる大量のモ ノリスを奪取するってのは?」 「いいけど、連絡方法は?」 「みんな、覚醒状態にあるんだから、全員で強く念じれば、きっと届くわ。」 「むっ!」 二人と一台で、民族派・好戦派(世界防衛隊含む)の両グー星人と戦っていた マーフィは、野球部員の念を感じ取った。アンドロイドだけあって、その方の センサーも強力なのだ。 「OK!派手に行くぜ、レイチェル!」 今まででも、充分派手だった攻撃が、さらに派手になった。本質的に、戦闘が 好きなのだろうか・・・。 割合、楽に島の中央部に達した。途中、グー星人に遭遇したが、幻覚の効か ない手児奈達にとって、それほど強敵ではなかった。なんと言っても、金属バ ット殺法があるのだ、こちらには。幻覚を使って道を迷わせればよい、と考え ていたのか、グー星人の警備はずさんであった。 「あ、あれじゃないか?」 九重が叫んだ。彼の指さす方を見ると、2001、2010等と書かれた箱 に、一杯のモノリスがあった。駆け寄って手にしてみる。何も起きない。 「どうなっているんだ?何も起こらないじゃないか。」 山椒太夫が太い声で言う。その時、罵蔑が言った。 「よく見ると、番号があるんだね、このモノリスっての。」 モノリスの薄さにごまかされていたが、確かに、その薄い側面には番号が振っ てあった。さらに何等かの溝もあった。とにかく、順番に重ねることにした。 「あっ!?」 全員が声をあげた。番号通りに重ねていくと、かなりの高さになり、そこに先 ほどの溝が一つとなった文字があった。それは次のような意味をなしていた。 モノリスとウシロモンは表裏一体 残るウシロモンをナンバー2001のモノリスに重ねよ −続く−
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