CFM「空中分解」 #1799の修正
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平成元年8月27日(土)午後2時40分 チコの二世が誕生 妻と看護を代わってから約20回 ガオオーガオオ-ガオオ-ガオオ-ガオオ-ガオオ-陣痛の唸り その度に今まで見たこともない表情を見せた 色々な形相をした 赤ん坊の頭が出てきた チコは苦しみに耐えきれなくなって 噛みついてきた 洋ダンスの扉に歯を立てた 扉を抑えながら がんばれがんばれ と外から声を掛けていた そっと覗く 塊がぼんやり見える 階下に走って 生まれた生まれた 昼食を買いに云って戻ってきた 妻 どれどれ 満ち潮の時間だ お尻の辺が血だらけで真っ赤 袋を噛み契って ペタペタ嘗めている 妻と顔を揃えて チコを覗く 最初の赤ん坊はどうも動きを見せない 2番目に生まれたのは どうやら動き出す ネズミの赤子のようだ 2番目の生誕子ははやくも声もたてずに乳房を捜し求めていた 手をだしっちゃいけない 噛みついてくるかも 一番子はこちら側に首を折ったままだ 三番子は陸に上げられた鰹のように口を開けたままだ チコは必死に嘗めてやる 1時間は待った 待ちに待った 仕方がないよなチコ どちらも二番子よりは3分の1は大きく見えた とくに顎の辺りが黒ずんで 父親を彷彿とさせた 2匹とも重かった チコにさわってる感じだった 俺の胸の底で熱いものがたぎりはじめた 外は台風17号で土砂降り 墓はどこにしよう あの樫の木の下はどおお そうだな 合羽に身をかためて 二人に墓を作ってやった ふたりがキスをしているように横になってしまった 死んでいるとは思われなかった 小さな小さな山を作ってやった 苔をかぶせてやった 股木を探して 両枝を白く削って そこに 梵字まがいの文字に続けて 死んで生まれた2匹は丁重に悼まれつつ ぐんぐんと体が造られていくのが知れた いつまでもいつまでも見て飽かなかった この宇宙に新しい生命が一つプラスしたのだ どのような生涯を送るようになるのかは知らぬが 運命に身を任せて雀雀と生きていこうとする一個の生命がある その尊厳は何よりも立派だ 欲に苛まれて身を窶している人間どもの何と浅ましいことか 俺をほんの一時とはいえ敬虔な気持ちにしてくれてありがとう ああ おっぱいがあるから雌だ と俺 何を仰る 雄でもおっぱいはあるでしょう と妻 亡くなった兄弟には悪いが 六つのおっぱいを独り占めにできて幸せだよな チコの二世 何を仰る 八つのおっぱい...... 夫婦が寝室に来ると チコは寝室まで追いかけてきて チコの二世のそばにいてくれ とせがむ まだまだ おさまらないおりものを垂らしながら 妻がそばに寝ることにした ハイハイ 寝てやっから 寝てやっから 血だらけの殿部はなめてきれいになった 風呂に入った時のようにきれいになった たくみな毛繕い 赤子の飲む乳首もことのほか清潔にして 父似だと 黒 母似だと 白 後脚の間にやがてはブランブランようなものが見える ひそかに 二太(ニタ)と命名した 翌朝 虹が吾妻連峰にかかる 雲が疲れてしまっていた 間もなく晴 もう秋風だ 肌にひんーやり ........
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