CFM「空中分解」 #1792の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「このカイロン島を亜空間へ・・・。でも。でも、例えそんな事をしたってグー星人は 滅びやしない。より以上のグー星人が送り込まれるだけだわ。やるんだったらまず全て のグー星人をここに集めなければ・・・」 手児奈は両手を固く握り占めた。 「そんな無駄な事をすれば、貴重なモノリス・・・が・・・。あれ?」 そこまでつぶやいた時、手児奈ははっと我に返った。 思考が頭の中を駆け巡る。 呆然と岩の隙間からかい間見える、喜三郎だという物体を見つめた。 「おかしいわ。モノリスを食べた?そんなばかな事・・・だってモノリスは、たった一 つだけがわたし達の手元にあるだけ。残りは全てグー星人の奴らに、このカイロン島の 中心部のどこかに隠されてしまった・・・」 今や、両足すらぼろぼろになり、地面に這いつくばっている物体。 「ねえ、喜三郎君。あなた、モノリスをまだ持ってて?」 手児奈の声は優しかった。 物体の首らしきものは、微かに動いた。 諾いた、ようだった。 「見せて」 手児奈の言葉に物体は、かろうじて残っていた触手を動かし、ひとかけらの石片を取 り出した。 それを受け取った手児奈は、じっと石片を見つめ、そして、喜三郎である所の物体を 見た。 「喜三郎君。これは、何?」 一言一言ゆっくりと、手児奈は喜三郎に問うた。 石片を握った掌を握り占め、そして、開く。 手児奈の意志の力で、元の姿を取り戻したそれを、手児奈は、人間であるところの喜 三郎に見せた。 手児奈にはそう見えたから。 「喜三郎君。しっかりして」 手児奈は、手を延ばし、自分の意志を込めて、喜三郎の崩れ行く体に触れた。 「そ・・・れは・・・モ・ノリ・・・ス・・・?え?何だ、それはっ!」 苦しそうな口調が、驚きの声と共に正常に戻った。 喜三郎は、驚いた拍子に立ち上がり−−−立ち上がったのだ。 喜三郎は慌てて足元を見た。 立派な人間の足が大地を踏み占めている。 両手を見た。 5本の指が自在に動いている。 「一体、俺はどうしたんだ?」 喜三郎は呆然と手児奈に訪ねた。 手児奈は岩の扉を押し倒し、喜三郎の目前に現われ、言った。 「あなたは、この只の鉄の固まりである−−−きっと何かのヘラみたいな物ね。これを グー星人によって、モノリスだと思い込まされた。その間、あなたをずっと催眠術で操 って、そして、どこかで何かその催眠術を強化させる薬でも飲まされたんでしょう?だ って、あなたはモノリスを食べて体を変化させた、って思い込んでたから」 手児奈の言葉に大きく諾いた喜三郎は、 「そうだ。俺はこのモノリス−−−ただのヘラを手に入れて、喜んで走っていたら・・ ・そうだ、あの時俺はいつの間にか侍の姿になって茶店に立ち寄った。そうか、今から 考えればずいぶんおかしいな。俺、あの時モノリス酒を飲まされたんだ。だけど、あそ こにいたのはグー星人で、俺はその時は正気に戻ったんだ。だけど、すぐさま奴らに操 られて」 「そう、その時に飲んだのが、きっとグー星人の催眠術の作用を強化させるようなもの ね。恐ろしい事だわ、幻覚が実際に起こったような作用を精神に及ぼして・・・きっと 、あのまま喜三郎君がぼろぼろに崩れて死んでしまったとしたら・・・きっと、喜三郎 君は全く無傷のまま死体で発見されるというような・・・」 手児奈は自分の肩を抱き、身を震わせた。 「そうか。だけど、あの亜空間に島を移す爆弾云々という事は実際どうなんだろう。 やっぱり、グー星人の仕組んだでたらめなんだろうか。それとも、やはりこれだけは事 実が伝わって来たのだろうか?」 喜三郎は首をかしげた。 「敵の手の内が完全には判らないの。それにあの世界防衛隊という訳の判らない輩の事 もあるし・・・」 「何か気になることでもあるのかい?」 「ええ。創設者である岸本博士っていうのがうさんくさくて。これは、杉野森君がパソ コン通信で集めた仲間達に調べてもらったんだけど・・・」 「何?」 「どうも彼の言動にグー星人の影がちらつくの」 「なんだってっ!」 喜三郎は驚いて手児奈に詰め寄った。 「杉野森君が皆の情報をまとめて、そして、白鳥座の電波の解析もだいぶできたから、 おおよその事が判ったの」 手児奈は言葉を切った。 喜三郎は食いいるように手児奈の言葉に耳を傾けている。 「グー星人には2種類いるの」 「2種類?男と女がいるのか?」 「だけど、グー星人は両性具有らしいって情報も未確認ながらあるみたいだし、男と女 って訳じゃないわ。」 「じゃ、なんだ?」 「グー星人には、グーで相手を打ち負かすという典型的なグー星人独自の攻撃パターン を持つ者と、何が何でも敵を倒せ、血を流せという、とても狂信的な者という2種類が あって、しかもこの2種類はとても仲が悪い。お互い、覇権を争ってる。そして、今わ たし達の現実の敵であるグー星人は典型的なグー星人。そして、岸本博士や世界防衛隊 を操っているのが狂信的な方のグー星人だとしたら・・・」 「それだったら、次元爆弾てのも有り得るじゃないか!」 喜三郎の言葉に手児奈は諾いた。 「ええ。グー星人の同志の紛争にもわたし達は巻き込まれてると言えるわね」 「一体俺達はどうしたらいいんだ!」 喜三郎は叫んだ。 手児奈は言った。 「今、杉野森君がモノリスの正しい使い方を文章にしようと、必死になってグー星人の催眠術と戦っているわ。モノリスこそがグー星人の弱点だもの。そして、あの野球部にいた乱菜君がレイチェルっていう相棒と共に、ガンベッドでもっと沢山のモノリスを奪おうと戦っている」 手児奈は両手を握りしめた。 「わたし達は白鳥座に護られている。わたし達がその事を忘れずに、自分の意志の力を強く保っていれば、わたし達はグー星人なんかに負けやしない」 「そうだ、負けるもんか!」 「神様。白鳥座。わたし達に力を・・・」 手児奈の祈りの声が広がった。 その時 光が沸いた。 音が消えた。 何もなかった。 「こ、これは・・・」 『遅かった・・・』 手児奈の耳にどこからともなく声が聞こえた。 「誰っ!」 手児奈の叫びが耳に入らないのか、声は続けた。 『ほんのわずかな遅れで、次元爆弾は爆発してしまった。せっかく手児奈の祈りで我々は力を貸す事ができるようになったというのに・・・』 『大丈夫だ。手児奈の祈りは強い。例えどんな次元に巻き込まれようと再びその祈りは我らの元に届こうぞ』 とてもやすらぎに満ちた穏やかな声。 手児奈は悟った。白鳥座からのメッセージだと。 しかし、彼らはおそるべきことを言っていたのではないか。 −−−次元爆弾が爆発した。 −−−では、わたし達は死んだのか。いや、わたしが今霊魂であるとは思えない。 −−−では、これは・・・。 手児奈の心中がパニックを起こしかけた時、世界は一転した。 手児奈の目の前には全く違う世界が広がっていた。 カイロン島はある。 喜三郎もいる。 だけど、雰囲気でここは、前の世界と違う事が判る。 「ここは、一体・・・」 手児奈達がいるこの世界は・・・・。 <つづく>
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「CFM「空中分解」」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE