CFM「空中分解」 #1787の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
by 尉崎 翻 ケスクはとっさに呪問を唱える。 レナの廻りに透明な刃が出来上がり八方からレナへ振りかかった。 ...かに見えた。 実際にはレナに到達する10cm程の手前で刃は跳ね返り、その全てが呪問を となえたケスク自身へと矛先を向けたのだ。 ケスクの服が斬り刻まれ身体中から血がしたたり落ちる。 だが致命的な傷はどこにもない。 レナは冷たく微笑みながらケスクの正面に位置した。 「そう邪険にすることもないでしょ? 昔は同じパーティにいた仲じゃないの」 ケスクは倒れ込み、そのまま擦り下がるがもう後ろは壁だ。 「わ、わしを...わしを、どうするつもりだぁ!」 声が上ずり震えきっている。 その声を無視するかのごとくレナは続けた。 「なつかしいわねぇ? もうどのくらいたつかしら。 あの『呪魔の神殿』でわ たし達は妖魔に立ち向かったのよね」 ケスクは必死で逃げようとするのだが身体が縛られたようにピクリとも動かな い、まるでレナに術をかけられたようだ。 「思えばあなたはあの危機の時でも、どこかで余裕を持っていたわ。当然よね。 あなたは、ああなることをあらかじめに知っていたのだから」 レナの口調が厳しくなる。 「あなたは私達を、あらかじめ待ち伏せしていた怪物達の真ん中に進ませるだけ でよかった。ごていねいに武器や防具にも一目見ただけでは判らないような仕 掛けをしてね。そして、あなたは笑いながらこう言って私の前から消えて行っ たわ!『だまされるあんたが馬鹿なのよ!』とね」 「うわーーーっ!」 叫び声を出しながら半狂乱でケスクがレナへ襲いかかった。 だがレナは悠然とそれを受け流すかのごとく構え、ケスクの胸へ光熱をぶつけ る。 骨が折れる音と共に、ウグッとうめいてケスクが床に倒れ込む。同時に多量の 血を吐き出した。 レナは何事も無かったように続ける。 「...みんな死んだわ。素手で勝てる相手ではなかったものね... そう、わたしを残してみんな...ね......」 レナが右手をゆっくりと前にかざし始めた。 その先はケスクだ。 「...ぅぅ...やめろぉ! やめてくれぇぇぇ.....!」 ケスクの抵抗など見向きもせずにレナの右手より閃光がきらめきケスクへと直 撃した。 空を斬り裂くかと思われるような絶叫と共に身体が弾け跳ぶ。 だが致命傷にはなっていない。 レナが急所をわざと外しているのである。 ケスクの身体に変化がはじまった。 レナの目の前で老い始めている、レナの魔法のショックにより実際の齢に相当 の姿へと変化し始めているのだ。 「その身体をたもつために何人の乙女を犠牲にしたの? 少女たちの幸せをふみ ねじってまで、己の利益のために」 ケスクの身体は既に二十代の若さは遠のき四十代といってもおかしくないほど 変化していた。 「...クククッ」 突如、ケスクが笑い始めた。 「...クククッ...おまえからそんな言葉がもれるとはな...!」 まるであざ笑うようにケスクの表情が変化する、もう逃れなれぬと思いついに 狂ったのであろうか。 「きさまに...きさまにそんな事をいう権利があるものかぁ!」 ケスクの容姿はすでに五十代を過ぎようとしていた。 「...知ってる。わしは、知ってるぞぉ! この魔女がぁ、きさまこそ己の身 体のかわいさのために何人の人間を殺してきたかぁ!! きさまの身体は血ま みれそのものではないかぁ...!!」 レナの瞳の色が変化した。 そうだ、そうなのだ。 レナは忘れていた。 ・・・・・・・ ケスクは自分の前の時代の事を知っているのだ。 「偽善者がぁ...! きさまはいつもそうだった、表面は善を装っていて、裏 ではさんざん汚いことを....グフッ...」 ケスクの言葉がつまる。 急所は外したとはいえ、ダメージは相当なものである。 さらに老化はすすみケスクはもう完全なる老婆へと変化している。 レナはケスクに背を向け数歩離れた。 ケスクは顔を再び上げた。 ・・・・・ 「どーした、レナぁ! わしの姿を最後まで見ていかぬのかぁ自分の弟子の最後 をっ! きさまのその姿とて所詮は借り物ではないのか? わしとそう齢も変 わらぬくせに...クククッ....グゥォッ....」 狂。と、いう文字そのものの様子をみせてケスクは笑いながらガクッと身を落 とした。ケスクの身体は、動かなくなったにもかかわらずさらに変化がすすみシ ワが急速に増え、髪が抜け落ちはじめ、やがて身体が崩れ落ち始めた。 レナは振りかえり自分の最愛の弟子であった女性の最後を見届けた。 レナの瞳からは一筋の涙がこぼれ落ちていた。 「...ケスク。ばかな子......」 既にケスクの身体は形もなくただの灰と化していた。 「ケスク。あなたが言った事はたしかに真実だわ。ただ一つを除いてね。わたし は貴方が生きた年の少なくとも倍は生きているのよ...」 レナは左手で涙をふきとった。 * 「うわっ!な、なによっ!?」 ティスタは思わず声を上げた。 ケスクたる魔術師を自分の手で斬り伏せるためにズイズイと歩いている途中で ある。 床、いや天井を含むすべての所から鈍い音が響きはじめたのだ。 後ろからダグがつぶやく。 「...なんだ? 嫌な音だなぁ? ・・・・・・・・・・・・・・・・ まるで岩と岩かぶつかりあって崩れてくるような音だ」 <<バシンッ☆>> 「いてーっ! な、なにすんだよ いきなりっ!」 ティスタの手形がクッキリとついた頬を両手で押さえながらダグがくいさがる。 「かってな想像なんかで、不吉な事いわないでよっ!! もしそんな事が実際起 こったら、あたしたち生き埋めになっちゃうじゃないっ!」 しかしその予想は数分後に見事実現したのである。(RNS.#1)<つづく>
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