CFM「空中分解」 #1576の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
シャトルに乗り替えて ついに私は地球への帰還を果たした 私が かって この惑星を飛びたってから既に1万年近い時が過ぎていた 亜光速の船内で冬眠していたとはいえ それでも 私とメリーの躯は生理的に500才を越しているはずだった 枯木の様に老いさらばえても死は訪れなかった 人間の寿命は百才前後が限界だった それはまるでDNAにプログラミングされているかのごとく 他のあらゆる事を可能にしてきた科学をもってしても その壁を突き崩すことは出来なかった しかし私だけは死からも見放されたように還えってきた かって海辺であった所にシャトルは降りたった すでに海は消え石の平野が見渡す限り波のうねりを残したままどこまでも続いていた 石は大きなうねりの中に風紋を描き さらに細かい小波を刻んでいた 手のひら程の平べったい波のかけらを拾い上げてみると 石の表面に何か細かい文様がビッシリと刻まれていた 細かい皺の様に見えるが 自然のうちに作られた物とはどこか決定的に違っていた その文様は整然たる列をなして描かれていた ひとつの考えが天啓のように私の頭に閃いた 私は再びシャトルに乗り込むと 衛星軌道上に浮かんだトラジディに大急ぎで戻り この石片を解析器にかけてみた 解析器は断片的な しかし明らかに何かのメッセージを伝えていた 驚いたことに その石片は地球のメッセージを伝えるロゼッタストーンだった いまや広大な海は地球のメッセージに覆い尽くされているのだった 私はトラジディの巨大な船体を地球周回軌道から 地球表面ギリギリまで高度を落していった 警報アラームを鳴りっぱなしにしたまま 超低空飛行で太平洋上の表面に解析器のビームを照射していった トラジディのマザーコンピューターのENIACは延々とDATAを吐き出し続けた 膨大なDATAそれは地球46億年の記憶だった 記憶の全てが石となった海の表面にビッシリと刻まれて現れたのだった それは はたして意識してなされたものなのか それとも神がなし賜うたものなのか あまりにも膨大な量のDATAに私は読むことを諦め 年代だけを先へ先へと進んで行った ようやく46億年目のメッセージに辿り着いたのは 走査を開始してから10年近く経たときだった そこには地球が緊急避難の為仮死状態に入る様子が詳しく著されていた 地球はその表面に いつの頃からか現れ 増殖し寄生し癌化した凶暴な生物に蝕まれ ついに自ら仮死状態に入ることを選んだのだった そして最後のメッセージを私は読んだ --------------------------------------------------------------------- 再生の日の為に 雌雄一対の人間を我が兄弟の元に送る 死と沈黙の旅の果てに 土より生まれしもの土に還えり 死に向かって死にいくものの ことごとく滅びしのち 彼ら我の元に還りぬ 我が兄弟より託された聖杭 涛搭にうがたれし時 我は再び鼓動し復活す 目覚めの訪れし時 人は再び二つに別れ 永遠に半身を求めて流離う いつの日か彼らもまた我の一部として再生し悠久の時を生きる --------------------------------------------------------------------- メッセージは そこで終っていた 私はトラジディの巨体を地球周回軌道に浮かべたあとシャトルに乗り込むと 涛の搭に杭を打ち込む仕事にかかった 涛の搭の位置は既にDATA走査中に南太平洋に見つけてあった 塔の下にシャトルを降ろして 私は枯木の様な躯で苦労して登っていった やがてなんとか不自由な足で涛の塔のてっぺんに這あがった私は 杭とハンマーを取り出し中央のくぼみに打ち込んだ 私の痩せ衰えた腕では なかなか杭は入らなかったが どうにか半分ほどが打ち込まれた 辺りの様子を窺っても別段海に変化は現れなかった 渾身の力を振り絞ってハンマーを打ち下ろし続け ようやく最後の一撃を打ち下ろすと同時に 力尽きた私の躯は塔から真っ逆さまに転げ落ちた 私の頭は堅い岩に打ち付けられて二つに割れた やがて 海に変化が訪れた まがまがしい黒く輝く渇きの海は その色を急速に あせ失い白く透明に変わり やがて深い底のほうから微かな青みが射したかと思うと唐突に海に返った 私の躯は またたくまに波に呑まれ やがて 私の大脳半球とメリーの大脳半球が割れた頭蓋から流れ出した 私達をつつくべき魚達も もういない 心地よい濃度の塩水にぷかぷかと浮かびながら 私の大脳半球はメリーの大脳半球を呼んだ メリーー・・・ メリーー・・・ メリーー・・・ どこに居るんだメリー・・・ それからさらに40億年の時が過ぎ 私は雑踏の中に居た どこまでも続く人の奔流の中に居て いつまでも流されていた ある日頭のてっぺんから足の先まで黒づくめの女に出逢った その女の目と私の目が合ったとき 私は その女を何処かで見たと思ったが思い出せなかった 女の視線もまた私の目を通りすぎて遠い所をさまよい 何かを思い出そうとしているようだった やがて私達はスレ違い流れに押されて遠ざかっていった 完 =======================================================================
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「CFM「空中分解」」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE