CFM「空中分解」 #1560の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「まって!」 言ってから、金田は口に人差し指をあてた。 「なんだ、どうした」 「カモです……ほら、あそこ」 銃口で指し示す先に、いかにも気の弱そうな、華奢な男が歩いていた。 「よし。金田と俺は後を固めるから、庄司と一平は回り込んで押え込め。いけ!」 お昼まじかの新宿に、迷彩服が走る。人の雑然とした流れは、まるでジャン グルのように彼らの動きを封じる。一平を避けようとした男は庄司をかわしき れず、庄司をかわそうとするカップルは一平に突っかかる。 彼らの装備はがちゃがちゃ音をたて、つれて心臓も高鳴っていく。曲り角か ら急に飛び出した庄司と一平に、カモは自分が狙われたことにようやく気付く。 逃げようと振り返ってももう遅い。難波はそのカモの変に出た腹にエア・ガン を突きつけ、話しかけた。 「ちょっとお話聞いて頂けますか、ね」 カモの引き攣った顔が難波のサングラスに映った時、彼は内心ほっとした。 開幕戦の初打席にヒットを打ったようなものだ。 「聞いてんのかよ。それとも顔中真っ赤に染られてぇか」 一平は強気に言う。 「は、はい。いいえ、あのー、お、お、お話しを聞かせて頂きます」 「とりあえず、時間が時間ですし、ね。よろしかったら、飯でも食いましょう か」 囲んでいる四人がにやりと微笑むと、カモもつられて笑った。ただ、あまり 楽しそうな笑いではなかったが…… 皆が喫茶店で軽食を取っている間に、難波は契約済の書類を高々とかかげ、 にやりと笑う。 「集合時間までには目標はクリア出来そうだな」 「調子いいですね。確かに」 「一平もいい味だした。お前らもあれくらい大胆にいかなきゃ、いかん」 その時、難波の腰に引っ掛かっていた電話がなった。 「はい、こちら難波班です」 「どーだ、調子は」 「はい。一件、契約をとりつけました」 「そうか。まあまあだな。現在位置を教えろ」 「喫茶店エクスファーです」 「ばかやろー、座って飯食うのは十年はぇーや。金の無駄遣いはするなといっ ただろうが。広告や販売にいるお前らが、生産現場でのぎりぎりのコスト削減 を忘れて浪費するなど、もってのほかだ! 代金は自腹切れ、馬鹿もんが!」 接続はそこで切れた。 「なんて言ってきたんですか」 「自分で払えって言いやがった」 「ゲー、自分で払うなら、俺、ファーストフードの方が良かったよ」 「庄司、いまなんてった」 金田が割って入る。 「いや、庄司が言いたいのは、班長がここに入ろうと言ったんですから、班長 が払うべきでないかと……」 おいおい、ふぉろーになってねぇよ、金田と庄司は思う。 「きさまぁ」 難波は立上がりかけたが、横に座っていた一平が袖を掴むので、店内を眺め た。 「なんだ、なんか用か」 「良く見て下さいよ」 鍵型に曲った店の奥で、彼らと同じように迷彩服を着た男がスーツの男と話 をしている。しかし、よりによってこんな場所で発見するとは……。判断のつ きかねた難波は部長に電話をかけた。 「部長。尾張自動車の販売員を発見しました」 「馬鹿野郎が。電話かける暇があるなら、さっさと撃て」 「しかし、喫茶店の中です」 「喫茶店も糞もあるか。やるんだ」 難波は困惑した表情をし、見つめる三人にどうやって納得させるか迷った。 「やれって、言ってるんですか」 一平は不安げにそう訊く。 「そうなんですね」 と言いながら、庄司は半ば呆れている。 「ああ。やれって、それだけ」 「喫茶店なんですよー。勘弁して下さいよ。そうでなくても恥かしいのに」 「庄司、弱音を吐くな」 難波は奥で商談を勧める二人を見つめながら思った。確かに、ここで敵の販 売員を倒せれば、一石二鳥だな。尾張自動車の販売妨害でワンポイント、客を 引っ張り込めれば、それだけで今日の目標達成が随分楽になるぞ。 「このなかで、射撃の腕が一番いい奴はだれだ」 「金田かな」 「下手な奴は?」 「庄司」 「よし、それじゃ、一平は喫茶店の出口を押えておけ。あそこの客が逃げ出し たら、そこで取っ捕まえて契約させろ。それから、金田はここにきて俺が近付 くのを援護しろ。庄司はここで待機だ」 「分りました」 「はい」 「いくぞ」 難波は店内をほふく前進し始めた。 「よくやるぜ。仕事とはいえ」 難波はその言葉に顔色一つ変えず、振り向き、 「一平、無駄口きかずに出入口を押えろ」 「へいへい」 植木の影に入るように、難波はそろそろと進む。 「あのおじちゃん、へんだを」 「しー」 と難波は指を口にあてる。 「どうしたの、ゆみちゃん。……きゃあ、ち、痴漢!」 しまった、気付かれる。 「金田! 撃て!」 軽い射出音。壁に真っ赤なペイントが流れる。 「ちいっ」 「田宮自動車かぁ! ざけんなよ!」 尾張自動車のセールスマンは立上がると同時にテーブルをひっくり返し、盾 代りにする。 「俺にはあそこまで思い切った事、できんな」 庄司は尾張のセールスマンの過激な反応を見て、ぼんやり呟く。 店の客は慌てて立上がる人と、ただびっくりしているだけの人間、そして気 にもとめずに読書を続ける人間に分れた。ウエイトレスはお盆を頭にのせて伏 せるし、子供はきゃっきゃと跳ね回る。誰かが何を思ったか火災報知器のベル を鳴らしてしまう。 「糞野郎!」 顔を伏せたまま撃つ難波の弾は、関係の無い人の服を赤く染めた。尾張の販 売員は正確な射撃で金田と庄司を隅に追い込んでいく。 「なんなのっ、この騒ぎは!」 「班長、もっと良く見て撃ってよ」 「逃げろ! セールマンだ!」 「尾張自動車の契約、破棄してもらおうか」 「冷たい! なんで天井から水が降ってくんの」 「ばんばん、ばぁん」 「この服高かったんだから。ちょっとあんた。弁償しなさいよ」 「尾張自動車の車が欲しいんですよ。田宮のなんか欲しくないんだ」 「二日も顔面真っ赤でいたいのかよ!」 「庄司、もっと数撃て、数を」 「お客様、落ち着いて、身を屈めて下さい」 「わー」 「分りましたよ。契約すりゃいいんでしょ……あとでトレードオフしてやっか らな」 「ゆみちゃん、逃げるのよ」 「っきしょう!」 恥かしさから庄司は目をつぶって叫び、撃ちまくった。 「田宮のへぼ販売員め! 憶えてろ!」 四方の壁一帯に庄司の撃った赤いペイントが付着し、自分の顧客を盗られた セールスマンは、通用口を使って逃げていった。 「勝った……」 「班長、逃げなきゃ」 彼らは急いで店の外にでる。引き際を心得ていないと、思わぬ損をすること になるからだ。 「退却!」 ウェイターに肩を掴まれ、難波はとっさに銃をもちいて相手のみぞおちを突 く。あっというまに田宮自動車販売攻撃部、難波班のメンバーは店から消えて いなくなる。 そうして、騒動だけが店の中に取り残された。 「あー、逃げられた」 「店の外にセールスマンお断りって書いてあるから、安心していたのに、どう ゆうことかね。これは」 「はい、どうもすみません。これからは絶対にあの手の連中は入れませんので、 今日はどうか御勘弁を……」 「ゆみちゃん。無事だったのね……よかった。本当によかった」 騒ぎが沈静にむかうにつれ、店員たちの顔は青ざめていく。 「火事の連絡があったのはここですか」 消防隊員の顔を見たウェイターは諦め顔で、 「ああそうさ。みりゃわかるだろ。大火事があったんだよ。ほんの数十秒前ま で、ね」 「火はどこです」 「もう消えたよ、しつこいなぁ」 一方、ウェイトレスは鏡の前で赤く点々のついた自分の顔を見、 「もうやっ」 と、エプロンを投げつける。 「なんてツイてないんだ」 もう一人のウェイターは、そう呟いた店長の肩を叩く。 「今日は店じまいですね。店長」 「なんてツイてないんだ」
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