CFM「空中分解」 #1540の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
第三編 EZOE氏の少年時代 (風刺に非ず) 桃色の春風体に受けて、次から次へと飛び急ぐ若者たち、フィールド を抜けてさらさら光る砂丘へ跳躍、いわゆる走り幅跳びという競技であ った。 なにびとであろうと我が校の生徒であれば必ず何らかの種目に出場せ ねばならぬとのお話、伝え聞いた時の少年、背丈ばかり伸びたるそのく せスポーツはまるで苦手という奇怪の少年、はっと顔青ざめ、極度の沈 欝、けれども気をとりなおして、せめて最も簡単安楽な競技を、と思案 し、みずから決定したのが、この走り幅跳びであった。 大会の当日、朝から心重い老いたる少年、せめて最下位はまぬがれた いとの願望持って、同級生に明るく挨拶、やあ、今日はお互い頑張ろう ぜ、と哀れな虚勢、グラウンドに整列したその時から、冷汗たらたら、 おのれの精神的死亡を予期していた。 やがて競技開始、皆に混ざってベンチに腰掛け、順番待つ若年寄り、 まだまだ当分先だというのに、心中はらはら、皆の真似して靴を脱ぎ捨 て、靴下一枚でじっとして、名前呼ばれたらどういうポーズで靴下脱ご うか、スタートラインまでどの様な歩き方をしようか、その事ばかり考 えていた。記録の事などすでに諦めている。せめて、ポーズだけでも立 派にしたいと、頭の中でリハーサルしていた。この少年、思考が単純な くせに神経集中して考えているものだから、今は他の事一切が見えず、 ああ、事もあろうに審判の呼び声、その絶叫も耳に入らず、惚けた顔で ぼんやりしていた。周囲の級友しだいにざわざわ、あいつはどこいった、 あいつの番だ、やはりあいつはどこかだらしない。やがて一人の同級生 が少年を見つけ、おい、おまえの番だぞ、聞こえなかったのか、早く行 け、とばかりに力強くその老人の背中を押し出した。老人、予期せぬ展 開に慌てふためき、ポーズもなにもあったものじゃない、しどろもどろ になり、あ、いや、これは等と意味のわからぬ事を口走り、裸足になる 暇もなく、それでも歩きながら何とか靴下を脱ごうとして醜くよろめき、 スタンドからはどっと大笑、そうして何とか走り出し、貧弱なジャンプ、 競技は終わった。言う迄もなく、記録は最下位であった。 少年、この時、自身のこれからの人生、すっかり見通す事が、出来た という。 第四編 行政機関内に於ける稚拙な小工作、云々 ちらと新聞見たところ、面白い記事発見せり。或る都市の或る神社、 その境内に小さな紙袋ひとつ置いてあって、実はお供え物の梅干し一瓶、 中に入っていたのであるが、この町の警察、早とちりして爆発物と断定、 すっかり慌てて特別処理班を呼んだという。 これ、実は、警察の仕組んだ巧妙な冗談ではないか。堅苦しいイメー ジ挽回狙った署長の発案か、とにかく大成功、ええ、この事件で、警官 にもほのぼのとしたイメージ持つ様になりましたよ、とそう巧くいくで あろ−−馬鹿な想像。 第五編 冥途に月の浮かぶこと 人の味気なさに呆れ果て、古アパートの非常階段かけ上がる少年一人、 なむあみだぶつ、なむあみだぶつとつぶやいて、屋上に出れば春のそよ 風、はらりはらりと吹き抜けている。おや、どうした事か、足ががくが く震え出し、そこから一歩も動けない。忘れていた。少年は、高所を恐 れる不吉な病に、ひたひたと体を侵されていたのであった。ここから先 は、魔の境地、呼べども叫べども聞こえず、暗夜の楽園、口を開けて待 っている。待っているに飽き足らず、闇の判官、そろそろと顔を出した。 −−少年よ、そこで何を行う。 −−情の深さに堪え切れず、この命、これから断つところでごさいま す。 −−それは美しき心がけなり。 −−そのお言葉、ありがたく存じます。 −−人の心を信ぜども、叶わぬ事が、あたりまえ。そなたもさぞ苦労 したであろう。 −−いえいえそれは、この私にはあてはまりませぬ。私、苦労のくの 字も知らず、人に頼り、甘い心構えで、これまで生きて参りました。こ の事は、私のこの白くふくよかな手を見ていただければわかる筈。 −−確かに。では問うが、お前は死の意味を何と理解するのか。 −−はい、お答えします。死は、すなわち万人からの逃亡、決定的反 抗、そして勝利でございます。死は手段のうち最も易しく、また場合に よっては美しきものでございます。 突然突風が吹き荒れ、少年を包み、フェンスを越え、その体を投げ放 った。静かに、ゆっくり、ひらひらと舞い落ちる蘭の花一輪。人はその 瞬間、それまでの一生涯の有様を走馬灯の如く目にするというが、今は それも見えず、ただ、闇であった。 第六編 終わり悪ければ全て悪し 「ええ−−終わり悪ければ全て悪し、というわけでして、今年も無事 集会を終える事ができ、その上私もこの栄誉ある壇に立たせていただく ことが叶い、実に嬉しい事づくめであります。そもそもこの集会は−− (前置きはいいから早く始めろ、の罵声)はい、はい、わかりました。 私も実際、この様な挨拶は苦手なのでありまして、ええ−−今回、私に お呼びがかかった理由といいますのは、先程も申しました様に、終わり 悪ければ全て悪しというテーマで、何か面白い体験談をひとつ、何でも よいから頼む、 との事でして、本当に、 何をお話しすればよいのか自 分でも解らぬ次第であります。ええ−−ああっ、畜生!(大きなざわめ き、大丈夫か、の声)ああ、すみません。心配いりません。あのう−− 実は−−本当に話す事を決めていないのです。何しろ依頼されたのが昨 晩十時頃の事でして、焦りながらも自分なりに色々考えてみたのですが、 どうにも間に合わず、この様なぶざまな醜態をさらす事になってしまい −−もう、この上は! (やにわにナイフを取り出し、自らの咽喉仏に 深く突き刺す。血液が飛び散り、場内は大騒ぎ、医者を呼べ、の叫び) で・・・・・・では・・・・・・終わり・・・・・・終わり悪ければ・・・・・・す・・・・・・す ・・・・・・悪し・・・・・・」 END
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