CFM「空中分解」 #1519の修正
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★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「はあ……。」 あたしは窓の外を見ながらため息をついた。 時折、風にあおられて飛んでくる雨粒が、窓を少し濡らし、景色をぼやけさ している。 「今日も雨、かあ……。」 頬杖をつきながら、窓の外を見ていると、 「こら! 中田! どこを見てる!」 先生に叱られた。 まったく、どうにかなんないのかしらね。そりゃ、梅雨がないと水不足にな ったりとか、田植えができなくて農家が困るとか、いろいろあるのは判るんだ けど……頭では判ってるんだけど、でも、やっぱりうっとおしい。こんな、山 奥でもないし、たんぼや畑があるわけでもない、単なる普通の住宅街にまで梅 雨なんて来て欲しくない! ……なんてね、ちょっと八つ当り。 確かに梅雨はうっとおしいんだけど、でも、それだけじゃないのよね。そう、 原因は茂よ。 まったく、あのバカのおかげで、なんであたしがこんなにイライラしなきゃ なんないのよ! 「はあ……。」 あたしは、再びため息をつく。 四時間目も終わり、教室の掃除も済んで、あとはもう帰るだけ。別にクラブ に入ってるわけでもないし、今は特に待ってる人がいるわけでもない。せっか くの土曜日だもん、さっさと帰ろうとは思うんだけどね、でもなんか帰る気に なれない。 「よう、由香。どうしたんだよ。さっきからため息ばかりついてさ。」 同じクラスの山口さんちの健司くんに声をかけられる。 「ううん、なんでもない。それより、どうしたのよ。さっさと帰らないの?」 「俺か? もう少ししたら帰るぜ。たださ、博美の奴がここまで来るって言う から。」 「へえ……。」 いいわね、博美。あなた達は幸せそうで。なんであたしには健司くんみたい な彼ができなかったんだろう。 「お、博美の奴、来たみたいだ。じゃな!」 健司くん、康司くんと真琴の三人が雨の中、門まで走って行くのが見える。 門のとこには、よく判らないけど、一美と博美、それに麻里ちゃんらしい姿 が見える。 「いいね。皆、幸せそうで。」 ちょっと声に出して呟く。と、それぞれが相合傘をさして、三方に分かれて 歩いていく。 「はあ……。」 また一つ、ため息。なんであたしには健司くんみたいな彼ができなかったん だろう。 少し、そう思って。 えーい、やめた! こら! 中田由香! 情けないぞ! あたしは自分を叱りつけて、帰り仕度を始めた。 もう、茂なんて、あんな不誠実な奴のことなんて知らん! あたしはさっさ と帰るぞ! 事の起こりは昨日だった。 学校帰り。いつもみたいに茂と一緒に帰る途中、すごい美人が茂に声をかけ た。 そりゃ、あたしだって知ってるわよ。茂が女の子に弱くて、特に美人に目が ないことくらい。 でも、それ以上に茂のいいところ、見かけと違って誠実な性格だってことも 知ってるし、だからこそ、いつの間にか茂に引かれてる自分に気付いても悔し くなかったし、実は茂もあたしのことを憎からず想っていてくれたって知った ときは、本当に嬉しかった。 だけど。だからこそ、あんなの許せない! 「ちょっと相談があるんだけど、いい?」 あの女! 悔しいけど、あたしよりもずっと美人が、茂に声をかけてきたと き、茂ったら、 「あ、由香、ちょっと悪い。今日はここでな。」 とか言って、その女と二人でさっさと歩いて行っちゃって、あたし、その場 で呆然と立ちすくんでた。 そりゃ、茂が美人に弱いことくらいしってたわよ! でも、だからって、あ んなの許せない! よく話にあるわよね。つきあってる彼に、やけに親し気な美人が現われて、 主人公の女の子は誤解するんだけど、タネを明かせば、なんのことはない、単 に彼のお姉さんだったってやつ。 だけど、彼にはお兄さんはいるけど、お姉さんなんていないこと、あたし知 ってる。 それじゃ、あの美人、いったい何なのよ! 今日だって、なんかソワソワしてて、問いつめようにも話に乗って来ないし、 あたし、逆上寸前よ。もう、あんな男、知らん! イライラしながら学校から帰る。もう、なんだって、あんな男のことで、こ んなにイライラしなきゃいけないのよ! 頭では、そう考えるんだけど、気持ちの方はそう簡単に割り切れるもんじゃ ない。 家に着いて部屋に戻って、鞄を床に放り出して、そのままベッドにひっくり 返る。 ああ、まだイライラが治まんない。 「あら、いらっしゃい。由香、茂くんよ。」 玄関からお母さんの声がする。え? 茂? あたしは思わず部屋を飛び出した。 「あら、あんた、まだ着替えてなかったの?」 お母さんの文句に耳も貸さず、 「ちょっと、茂、いったい……。」 「すみません。ちょっとだけ由香さんをお借りします。」 茂は、あたしの言葉をさえぎって、お母さんに断わりをいれて、あたしを連 れ出す。 「ちょっと、いったい何なのよ。」 あたし、茂に何度も尋ねたんだけど、茂は、 「いいから、ちょっと、来てくれよ。」 って繰り返すばかり。 電車に乗って(切符は茂が買ってくれた)そのまま、茂の家に引っ張って行 かれた。 家に入ると、あ! 例の美人! あたし、思いっきり、茂をにらみつけた。 「あれ? 兄貴は?」 「ちょっと、待っててくれって言って……。」 「ま、いいか。とりあえず紹介するのに不都合はないしね。」 茂は、その美人と言葉を交わしたあと、おもむろに、あたしの肩を叩いて、 「昨日、ちょっと会っただろ? 俺の彼女。中田由香っていうんだ。」 「由香ちゃんね。お会いするのは二度目ね。」 その美人さん。親し気に笑いかけてくる。 「由香、こちらは永田知子さん。兄貴のフィアンセだ。」 え? お兄さんのフィアンセ? じゃあ、昨日のあれは……。 「昨日はごめんなさいね。折角、デートの最中だったのに、邪魔しちゃって。」 「はあ……。」 ちょっと呆然としちゃって、こんな間の抜けた返事しかできない。 「昨日ね、ちょっとゴタゴタしちゃって、茂くんに飛び回ってもらったのよ。 でもね、その甲斐あって、さっきやっと結婚が決まったとこなの。」 「あ、おめでとうございます。」 「ありがとう。でね。昨日の状態じゃきっと誤解されたままだろうからって思 って、来てもらったの。ごめんなさいね。お手間をおかけして。」 「あ、いいえ。」 その美人さんに頭下げられて、あたしも、つい、一緒に頭下げて。 「あら、大介さん。」 茂のお兄さんが戻ってきた。あたし、軽く頭を下げる。 「もう、用事は済んだのか?」 「ええ。」 「じゃ、行こうか。」 「それじゃ、失礼します。」 知子さんは、お兄さんと一緒に部屋を出ていった。 「茂ったら、なんで言ってくれなかったのよ。」 あたし、そっと茂に耳打ちする。 「ほんとに、悪かった。ただ、暇がなかったし、先刻まで精神的余裕もなかっ たんだ。ちょっと、ややこしいことがあってさ。だから、ちょっと由香の相手 できなかったんだけど、それももう済んだから。」 そして、あたしの肩をポンポンと叩いて、 「さ、せっかくの土曜日なんだしさ、デートしようぜ、デート。」 茂は、あたしを立たせると、玄関で傘を開いた。外はまだ雨が降ってる。 あたしは、茂の開いた傘に入り、茂の腕を取る。 茂に肩を抱かれて歩きながら、あたし、とっても幸せだった。 あたし、もしさっきまでのあたしに会えたら、きっと、こう言うだろう。 「あたし、茂を彼にできて、幸せよ。」って。
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