CFM「空中分解」 #1510の修正
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(7) 遠藤 隆は、ぼおっと川原に座っていた。 加藤家の葬式の帰り道。かつての同僚の打ち萎れた姿に少なからぬ衝撃を受けていた。 前日、同じ葬式という場で会話した時とはうってかわった姿。 −−−人の世界とはこうも殺伐としたもんになったのかぁ……。 わずか10歳の子供が自殺してしまうような環境。 遠藤にも同年代の子供を持っている。 だから、だからこそ……。 遠藤はやりきれぬ思いで一杯だった。 目を空に転じる。 ぼおっと見上げた空に、雲が1つ,2つ。 「ばあ」 女の子が突然視界に入って来た。 「恵ちゃんかぁ」 遠縁……母の姉のだんなさんの弟の家……の子。 佐藤 恵。 「おじさん、加藤君のお葬式、行ったんでしょう?」 「そうだよ」 恵は元気なかった。加藤は努めて明るい声を出した。 「恵ちゃんも行ったんだろ。ちゃんとお別れしたかい?」 「……うん」 恵は空を見ていた。 「どうした?」 「加藤君はね、雲の上にいるの」 「え?」 「だって、加藤君が言ったの。天国って雲の上にあるって」 「……いつ……」 遠藤は驚いて恵を見た。 −−−ということは、その時から慎君は自殺を……。 「んと、山に登る前の日……」 「って、自殺する……あわわ」 慌てて口を塞ぐ。『自殺』なんて子供に聞かせるような事じゃない……。 が。 「自殺じゃないもん、加藤君は」 恵はふくれっ面をして、大きく首を振った。 「自殺じゃないって……」 「塾の先生達も、おかあちゃんも、大人ってみんな加藤君を自殺にするんだもん」 恵は空を見上げた。 「加藤君は雲を取ろうとして、崖から墜っこっちゃたの」 「雲、を取ろうとして……」 遠藤は考え込む。 −−−雲を、取る? 「だって山を登った所ってとおってもきれいでね、雲がふわふわとほんと手の届く所に あるんだもん。真っ白な綿のような……」 「でも、雲の正体は……」 「うん。知ってる。だけど、あそこの雲は綿みたいだったよ。手ですくったら取れそう な位の……。だからね、あたしも手を伸ばして取ってみようって思った位だから」 「……加藤君も、そう思ったのかな」 「うん。絶対そう思ったんだ。だって雲に手を伸ばしてたから……」 「そうだった、のか……」 「先生達だって見てたのにねぇ。嘘付きだから……」 −−−事故だと責任問題になるからな……。 「慎ちゃんは、雲を、取る、のに、失敗、して、崖から、墜ちた」 ゆっくりと、遠藤は噛みしめるようにつぶやいた。 「うん」 恵は大きくうなずいた。 「今頃、加藤君は雲の上にある天国にいるのね。あたしのおばあちゃんにもう会ったか な」 遠藤は恵を見、そして、空を見た。 空には、白い雲がぽつんぽつんと浮かんでいた。 遠藤は内心ほっとしていた。 勉強、勉強に明け暮れている子供達、だけど、それでも雲が掴めるという夢を追うこ とができる。 まだ、夢という、非現実的な事を現実に思える位の心を持っている。 遠藤は嬉しかった。 「ほら、恵ちゃん。あの雲大きいよ」 「うん、あそこに天国あるのかなぁ」 「そうだね……」 「ねぇ、あっちの雲、飛行機みたい」 「ああ。じゃあれは?」 「えーと、りんご」 「あれは」 「ぞうさん」 「きりん」 「車」 「ぶたさん」 「お花」 そして…… 「天国」 −−−−『雲』−−−− 舞火 ********************************END****
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