CFM「空中分解」 #1460の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
Mergeing!Mergeing!!2 Author:GakusyuuHisui 1989 『実験的小説の集大成として、私のハードSF、精神描写、恋愛小説、リアルタイム 描写など、もちうるあらゆる手法を投入して作ったものです。お口に合うか、分かりま せんが………』 for friends 1 ………7時のニュースです。ヨーロッパ合衆地域の代表委員団が今日未明、特別機で いると思われます。しかしながら、アメリカ合衆国との対立という情勢があるために、 今回の訪日では緩和せざるを得ないというのが……… ベッドからにゅるりと白い腕が突き出された。その腕は横の机の上をさまよい、コン ポのリモコンを握る。そしてタイマーセットの通りにFMラジオを流していたそれに向 かってキーを叩いた。途端に音が跡切れて、朝の清々しい静寂さが戻った。布団を頭か ら被ったうごめくものはぶるりと腕を震わせて素早くしまった。 “目覚まし代わりにやっておいてもこれじゃー意味ねーなぁー” 目覚めていた方の意識がつぶやいた。 “あんた起きてたんなら起こしてくれたっていいじゃない!!遅刻よ、遅刻!” “いい気持ちで寝ていたから、つい起こすのをためらっちゃったのさ” “たく!役にたたないんだからねぇ!” “でもさぁ、ラジオ消したのはあんただよ。” 中村孝子は不機嫌な顔をして吊革につかまっていた。周りには背広のおじさんどもが から同じ顔なのか。女が混ざっていると、極度にピックアップされてしまう。あ〜、い やだいやだ。 彼女も普通の人間だったら周囲同様、灰色の表情をして通学をするようになってしま っていたかもしれない。なにしろ、ひとりで1時間近くもこのラッシュの電車で耐えな ければならないのだからだ。結局、黙って何にも考えないでいるのがBESTというこ その相手は3年前春、突然現れた。と、いっても普通の出会いではない。彼女の頭の 彼女は強制的に大家になってしまった。 “リモコンを机に置いておいたのは失敗だったよなぁ〜。手の届くはんちゅうにあっ たら手繰りよせちゃうよ。今度はコンポの上に置いておくべきだな。” “はいはい………” “そう腐った顔をしなさんな。折角の顔もそんな風じゃダイナシじゃあございあせんか”橋本は弾んだ調子だ。それが中村を怒らせているとは知っているに違いない。 “じゃあんたが、楽しそうな顔をつくればいいでしょ!” “出来ればしたいよ。だけれども、僕がこの肉体で動かせるのは目だけだからね。それ も、君の方が優先順位は上だから自由に使えないけれどもね。” “ふん、自由に使われたら堪らないわ!” 彼女の顔はますます険しくなった。しかし、その怒りの対象は当人の頭の中にいるの だから、その表情は全く無駄なものだった。 彼女の、いや彼女らの通っている大学は都心近くにあった。キャンパスは2つ3つに 分裂しており、その間を道路が網の目のように走っている。キャンパス内に入ってしま うと都会の騒音が激減する。彼女の友達でライター・クラブに入っている藤田涼子いわ く、『騒音の開放区ね。』樹も植えられているために、本当に街中とは思えない。 彼女は2時間目の倫理から出た。途中からなんて嫌だった。全く………もう少し気を きかせた人間だったらなぁ〜。孝子は溜息をついた。もっとも追い出す訳にはいかなか った。何故なら、彼が戻りたくっても(彼女が戻らせたくっても)彼の体は既にこの世 にないからだ。 放課後になって藤田にばったり会った。サークルに入っていない中村は暇な身だが、 藤田は最近忙しいらしく、大分会っていなかった。背中まである栗色の髪に細面の顔。 素晴らしいプロポーションを見せつけるボディコンシャス。でも本人はあまり気にいら ないみたいだ。まったくぜいたくなんだから。もっとも人類がこうして発展してきたの は底無しの向上心があったためだろう。 「今日2時間目から?」 「そう。寝坊しちゃったのよ。」彼女は前髪を掻き上げ、悔しそうに言った。「全くも う!起こしてくれなかったのよ、知っているのにさ!」 「親に起こしてもらうのを期待している方がおかしいんじゃないの?」藤田は小馬鹿に するように言い放った。「サークルに入らないでゆったりしているからボケちゃうのよ。今からでも遅くないから入りなさい。」 「やぁ〜だよ。」 “入った方がいいかもね。” “あんたのせいで入れないんでしょ!” 「何でぇ?こんなだ見せてもらった小説、なかなか良かったよ。」女は真顔になった。 「あ〜、本当にもったいないよ。うちのサークルはそんなに上下が厳しいわけじゃない し、面白いし、入るのにはうってつけなのにな。」 “私のせいだそうです!”橋本が聞こえる筈もない相手に向かって言った。 「あんたは黙ってなさいよ!」思わず声に出してしまう。 「……はぁ?」 「いやその………ごめん。なんかあたし、あーゆーのって好きじゃないのよねぇ。」 藤田は小柄な中村を覗き込むようにして表情を窺った。そこにはひきつった笑顔があ った。 「なによぉ〜」 「もしかして………異性恐怖症?」 「はぁ?」 「いや、そうなのよ、あなたは気がついていないのかもしれないけれども。」 「何言ってんのよ。」彼女は些か慌てた。「そんなことは」 「ある。」ぴしゃりといいきる相手は、こっちの事情を知らない。こういう場合、知ら ない人間の方が俄然強いものだ。「大体ねえ、2年にもなってだよ、大学の男どもとし ゃべったことない人間なんている?そりゃあさぁ、1年の時はにかんで、っていうなら 可愛らしいけれどもさぁ………。」 「喋ったことあるわよぉ〜」 「ほぉ、誰と。」 「誰とって………。言えるわけがないでしょ!」 「ほら言えない。」 「あのね……」 「あんまりかまととぶっていると………へんな性格になっちゃうわよ。そしたら恐ろし い病気にかかっちゃうんだからね。」 「いい加減にしてよ。ちゃんと付き合っていますよ!」 通路で絶叫するような言葉では無かったが、こうするより仕方が無かった。藤田はお もいこみが烈しく、しかも文才があるから何処かで話の腰を粉砕しないと、どんどん構 築していってしまうのだ。最終的には事実よりもリアリティあふれる話となり、それが ひろまると既成事実として存在してしまいかねない。う〜ん、恐怖。 「誰と?」鳩が豆鉄砲をくらったような顔の藤田。 「………高校の時に知りあった人間でね。」 “俺の事、出すんじゃねぇだろうなぁ〜” “ふん、出したくないけれども仕方ないでしょ。なりゆきなんだから。” “なんか、なりゆきばっかの生活をおくっているなぁ〜” 「誰なのよ。」 「橋本智樹っていう奴。どうしようもない馬鹿なんだけれどもね。」 “どーもー、私が馬鹿の橋本どぇーす。” 「ふうん、その人ってかっこいい?」 「ぜぇーんぜん。」中村は極めて強く言った。 “見たことあるのかよ、俺の姿!” “前に貴方の家に行ったとき見たことあるわよ!” “………なるほどね………” 「今も付き合っているの?」 「まあね。」このままでいったら一生付き合うことになるんじゃないかしら。 「なぁ〜んだ、残念。」彼女は天を仰いだ。「じゃあ仕方ないわねぇ〜」 「なっなによ、それ。」 「いやさぁ、貴方と是非に話したいという人がいたんだけれども、ま、関係ないわよね。そっか、いたのかぁ〜。」 「………その人、誰?」 「知りたい?」藤田は勿体ぶった。 「別に!」 「社会観察クラブの羅清くんって知らない?」 「しらなぁ〜い。」 「一度、会ってみない?」 「え、………」 「別に会ったところで、その橋本くんには背信行為にはならないわよ。別に一緒に住ん でいるわけじゃないんだから。」 「う、うん」一緒に住んでいるのだ。 「そう、じゃまた後日連絡するね!」うまく話がついたのが嬉しかったのだろう、藤田 はにこやかに笑った。 話はそれから色々な方向に移り、場所も大学から街へと移っていったのだが、その間 彼女の頭の中の住人は一回も喋ることは無かった。中村はさっきの、自分の位牌を見た あの日を喋ったことで思い出してしまったのだろうと自己嫌悪に駆られながらも、こち ら側から彼に話しかけることは出来なかった。半ば意地であろう。彼から話しかけるこ とを望んでいたのだが、それはとうとう無かった。 .
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「CFM「空中分解」」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE