CFM「空中分解」 #1427の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「では、オリンポスに入ると必ず目にする巨大な石碑に刻まれている文の事は御存じで すね」 これには、皆諾く。 嫌がおうでも目に付く位置にあるのだから、あれは。 「だけど、この道の右手の森が『ドドナの森』で左手の並木の向こうに『デルフォイの 泉』があることは知らないでしょうね、きっと」 「ドドナの森っ?」 「デルフォイの泉っ?」 ユーキ達六人、そして、せいきが同時に叫ぶ。どちらからともなく顔を見合わせて。 「知ってるのか?」 見事にハモる。 「あたし達は通信室の前でどうするか考えてた時、舞香が『ドドナの森』に行くってか けてったのよ」 ミラルカがあっけにとられたように説明する。 「俺は『デルフォイの泉の妖精』って名乗る声に教えられて通信室に向かったんだ」 せいきもつられて説明する。 「珍しいこと。『デルフォイの泉の妖精』の声は普通ここでないと聞かれないはずなの に」 舞香も少なからず驚いたようだ。 「こっちに来て。『ドドナの森』の奥に小さな神殿があって、そこに『ドドナの森の樫 の木』があるの」 森といっても地球のそれとはさすがに規模が違うもんで、すぐ神殿は目の前に現われ た。その中の巨大なレリーフを指差す。 「あれが『ドドナの森の樫の木』なの」 「何なんだ、一体……」 せいきの呆けた声に、舞香僅かに口許を歪める。 「『ドドナの森の樫の木』はオリンポスの未来を示唆するコンピューターよ」 「オリンポスの未来?」 ユーキが舞香の顔を見、そしてレリーフの樫の木を見上げる。 「これはレリーフだけど、……でもスクリーンなの」 「これがぁ!」 アメリアが口許を手でおおう。驚きに目が見開かれて……。サムスも叫びやしなかっ たけど、ご同様。 「だってレリーフにしか見えない」 「普通のレリーフには色が着かない。それにこれ材質が違う」 彫刻も趣味でやってるユーキがぼそっとつぶやく。 「この樫の木は葉の色の変化で、オリンポスの未来を示すのです。今は全て明る い緑色。でも昨日までは葉先が赤茶けてたんです。」 さわさわさわさわさわ どこからともなく葉の擦れあう音がし、声が混じった。年配の男の声。 「私は『ドドナの森の樫の木』。オリンポスの未来を示唆し、オリンポスのあるべき姿 にオリンポスを導く助言をするコンピューター。私はオリンポスの道標」 一同、唖然とこの巨大な樫の木のレリーフИИスクリーンを見上げた。 「じゃ、循環装置の異常は……」 「私はオリンポスの未来を示す物。だが、舞香は私に言った。『オリンポスの未来のた めに』。私はオリンポスの空気をコントロールするコンピューター『エアリアル』に『 助言』を行なう。子供達を眠らせ動かさない様にしたらどうか。子供達をスパイの手か ら守ったらいいのじゃないか。子供達は未来のオリンポスの仲間。大切な仲間」 「あたしは……」舞香が言った。「『ドドナの森の樫の木』の『助言』が他の全てのコ ンピューターを活性化させることに気がついていた」 「待ってくれ、じゃこのコンピューターはオリンポスを支配できるんじゃないのか」 せいきが血相を変えて叫ぶ。 「いいえ」静かに舞香は否定した。 「このコンピューターは人からの依頼があり、その依頼が適切かどうかの判断し、動き ます。『ドドナの森の樫の木』は、決してオリンポスを支配しません。何故ならオリン ポスの道標ですから」 「舞香はこの木の葉が赤くなりかけたのに気付いたのか」 「あの幽霊騒ぎ。ほっておくと他のステーション、他の宇宙軍に弱みを握られ、隊員の ほとんどが軍から放り出されるでしょう。と『ドドナの森の樫の木』は言ったし、あた しもそう思ってたから」 ユーキが大きく諾く。 「つまり幽霊の正体はどうせスパイだろうと軍の上層部は思うだろうし、それを 野放しにしているオリンポスを黙って見過ごす訳にはいかないし。いつだってにらまれ てるオリンポスだし」 「だから葉が赤くなりはじめた」 「じゃ緑に戻ったのは?」 「スパイの正体が大者だったからな」 と、せいき。「何たって、その名も高き『アイス・クラッカー』。沈着冷静、腕前抜群。この前の『戦闘挺設計図流出事件』の犯人でもある」 「はっ、さすが」 「それを捕まえたんじゃぁ、文句言えないわね」 「うんうん。俺は名誉回復、こんな良い事はない」 「なぁに言ってんのよ。結局森谷大尉が通信室これたのは『デルフォイの泉の妖精』の お陰なんじゃないの」 ミラルカ、からかうようにせいきの髪の毛を引っ張る。ぼさぼさの髪の毛。 「?」 何故か舞香の脳裏に不可解な感情が浮かぶ。 ミラルカに……。 「あ、それで思い出したけど。ね、『デルフォイの泉の妖精』って何のことなの?」 ジャミーの声が舞香を現実に呼び戻す。 「『デルフォイの泉の妖精』は『デルフォイの泉』にいます。大尉のように外に出て呼 び掛けるなんてことしたの、始めてでしょうね」 舞香達は『ドドナの森』を抜け、道の向こうの並木を抜け、十メートルばかりの泉の 辺に着いた。透き通るような美しい泉、これが『デルフォイの泉』だった。 「『デルフォイの泉の妖精』出て来て」 舞香が呼び掛ける。 と、ちょうど泉の中央付近に、美しい乙女の姿が浮かび上がった。 「あたくしは『デルフォイの泉の妖精』」 「あの声だ」 せいきがつぶやく。 「『デルフォイの泉の妖精』と呼び掛ければ出て来ます」 「ホログラフィ?」 ユーキの問いに舞香は無言で諾いた。 「幽霊よりも淡くて非現実感があって、ほんとに妖精らしいな」 せいきが感心する。 <続く>
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