CFM「空中分解」 #1424の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
舞香は奇妙な不安に襲われていた。 それは、目前の敵を指すものなのか?ユーキは そういうけれど、舞香自身はそれがどんなものなのか理解していなかった。考えようと もしなかった。 考えたくなかった。 どうして、判るのかИИ何で。気配が判る訳じゃないのに。 敵は人であるから? じゃあ、この不安は? なぜ、人の動きが判る? いつからだった? 人の動きが判る。怖かった。あたしは、人、なのに。怖い。やだっ! 思考の停止。 何も考えたくない。考えるのが怖い。 それは、メビウス・リング。 永遠の課題。決して答えは考えない。 知ってるのに……。 <κ> 目的地の通信室。 「アメリアが二人見付けたらしい。下手すると危害が及ぶ」 追いかけて来たサムスが報告する。 厚い硬化テクノタイト製の扉、この向こうに偶然にも舞香達の目標が双方とも揃って いる。 「まさか、ね」 舞香の悔やむような口ぶりにユーキが諾いた。扉をにらんだまま。 「どうする?」 舞香の瞳がふっと澱んだ。 一つの手段が浮かび、言葉になった。 「『トドナの森』がきっかけを作ってくれる」 「『ドドナの森』?」 皆がいぶかしげに舞香を見つめる。 「あたし行って来るから。ここで待ってて」 「何するつもりだ?」 「待ってて。ここから離れないで。何があっても気にしないで。あたしにも何が 起こるか、判らない」 『ドドナの森』、せめて、今くらい助けて。あなたが言ったのよ。オリンポスのため なんだから。せめて、今くらい。 ユーキ達は呆然と取り残されていた。 <λ> 舞香はパルテノンがパルテノンである由縁−−神殿へと向かっていた。 その巨大なスペースを存分に使って造られたその神殿は、今でも大事に保存されてい るギリシャ時代の神殿を、そっくりそのまま模倣したもの。 その神殿は建築者によって『テミスの神殿』と名付けられた。法と秩序の女神、そし て、<正義>と<平和>の生みの親として、尊ばれたテミスを讃えて。 この神殿のある所に入るのには、手で開けなければならない巨大な扉がある。観音開 きに開けられるこの扉は表面は美しいレリーフで飾られていた。一見、木のようだか実 は圧縮サクノムに特殊処理を施したもので、その出来映えの見事さは言うまでもない事。 圧縮サクノムはガラスに似た透明感溢れる美しい物質だが、その加工は非常に難しい。まして、木のように見せるなど絶技中の絶技。 扉を抜けて参道を歩く。五十メートルばかりのこの参道の両側に木々が植えてある。 そう、この参道の右側こそが『ドドナの森』なのである。全てが樫の木の森。 ちなみに左側はその木々を抜けた所に小さな泉がある。それは『デルフォイの泉』で あった。 『ドドナの森』にしろ『デルフォイの泉』にしろ、その場所は、ギリシャ時代におけ る、神託所であった。 「予言と神託、助言。あたしの指揮者」 舞香はうっそうと生い茂る木々の間を縫って、小さな五メートル四方位の敷地に建て られた神殿の門をくぐった。 この神殿は、テミスの神殿よりはるかに規模は堕ちるが、その装飾美術品は勝るとも 劣らない物だ。 神殿の奥に据えられていたのは、一枚の大きなレリーフ。巨大な一本の木を浮き彫り にしたこのレリーフの前に、舞香は立ち止まった。 真っすぐレリーフを見上げる。 固くひきしまっていた口から言葉が発せられた。 「『ドドナの森の樫の木』あたしの声が聞こえる?」 舞香のそれは真っすぐレリーフに向かって発せられた。 「オリンポスのために三人の子供達を救って欲しい」 さわさわさわさわさわ どこからともなく葉が擦れあう音がした。舞香はそれを聞いてわずかに眉をよせる。 「なぜなら、あの子達は次世代のオリンポスの優秀な隊員だからです」 ざわざわざわざわざわ ざわめきが大きくなった。まるで木々が動揺しているかのようだ。 そして。 そして、わずかな間をおいて、『ドドナの森の樫の木』は活動を開始した。 <μ> 最初の兆候に気付いたのは、アポロンのマサトだった。 少し空気の流れが揺らいだ。 マサトの天性の勘−−気流が判るのだ−−肌で感じる訳でもない。ただ判る。最近で は見れるようにもなった。超能力的なものらしいが肝心のESP波は検出されていない。 マサトは揺らいだ流れをずっと目で追った。気流の流れは白い線として映る。 原因は送風口。 送風口から出て来る気流が数秒間乱れたせいだ。 「まさか……」 最悪事態が思い浮かんだ。空気循環装置の故障−−いや、たいしたことじゃないらし い。警報が鳴らない。 気流が正常になった。 「ふう」「あら?」 マサトの吐息と重なって、アルテミスのジャミーが小さく叫び声をあげた。 「中の様子がおかしいわ、子供達が倒れちゃった!」 「何だって?スパイの方は?」 「まだ何も」 <続く>
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