CFM「空中分解」 #1418の修正
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「あのテープにはせいきの影が映っていた」 「影?この影のこと?」 サキ・柳生少将が床を指す。黒い影。 「いや、目に見えない影さ」 スクリーンに出てきている影像はせいきの体形と同じもの。ワイヤーフレームで描か れたそれは妙に輪郭が歪んで見えた。 その隣に実際の映像が出ている。 「右のワイヤーフレームを左の映像に重ねて」 それぞれ頭の中で合わせてみる。妙な感じがよぎった。 「空間が歪んでないか、これ」 ユーキが眉を寄せ、つぶやく。「その線がワイヤーフレームと重なるような気がする」「当たり!」 て、生体を不可視にするんだ」 「でも理論的には可能なんだ。成功してないだけで」 「ん、お宅のリーダーさんに聞いてきた。オリンポスでも研究中だってね」 「ちょっと、私には理解できない」 「だからさ、人や物が見えるのは光線を反射するからさ。けどこの装置には、その光線 「で、どうして選択できるの」 が、サキはそう言いつつも、舞香を見ていた。質問の内容は明らかに弟に向けた物なの に。 「生物であることの確認装置とその前後の風景から隠れている映像を造りだす装置、そ れに、その偽造された映像をカメラに受像させる装置……。姉さん?」 マサトもまた、姉の視線に気がついた。全員の視線が舞香に集中する。 舞香はふと我に返ったように辺りを見渡し、不思議そうに皆の視線を受け止めた。 「神野舞香少尉」 <Σ> 十四日十五時十三分 −−この異常な騒ぎはオリンポスだから有り得たんです。 それが、舞香の意見であり、結論でした。 −−過程とか、オープニングセレモニーの仕掛人が誰であるかとかいう問題ではなく、 ここがオリンポスというだけで、こうまでお祭り騒ぎ的になってしまったんです。 舞香は、さもおかしそうに、また、苦笑めいた表情でそう言いました。 −−ここに集まっている人達はそういう現象を、オリンポスの一人として同じように 騒ぎつつも、普通の軍人のように冷静に判断できる人達です。 −−あたしは、この騒ぎを今日中にけりをつけたい、手伝ってもらえますか? そして、当然のごとく。 −−ここがオリンポスである以上、この騒ぎをこれ以上放っておくことは、オリンポ スの本来の存在意義が薄れてしまうように思えるのです。 「神野舞香少尉にこの件、まかせてよいのではないか、私の意見です。それと、」 わずかの沈黙。そして、ややためらいがちな声。彼女には珍しく。 「あの娘は、自分と接しているものの思考パターンを、自分のものと似させてしまうの ではないかと……そう思ったのですけれど……」 「確証は?」 男の静かな声が次の言葉を促す。 「笹山ユーキ少尉。あのメンバーの人選は笹山少尉が行なったものです。なのに、神野 少尉の望んだ通りの人を選びました。少なくともここにあるデータからすると、そうい った人選能力が優れているとは思えません」 ふっと言い澱む。が、 「普段接しているアテナは、既にその方面の才能が開花し、固定されてしまっています が、それ以外の者なら、他の能力がそういう、思考的な、戦略的思考パターンに転化で きるのではないかと、考えたのです」 「それによる、デメリットは?本来の能力が衰えるようでは困るが」 「決して。笹山少尉の技能は向上の一途をたどっております」 データが綴られた書類が手渡された。 数分後。 「判った。今回集まった人員を神野少尉に接近させておこう。その手配は任せる」 ランドルフ・シンプソン大将は、その柔和な表情を崩すことなく、命令した。 「了解しました」 サキ・柳生少将は姿勢を正すと敬礼し、司令官室を出ていった。 <Σ> 十四日十六時二十六分 アルテミスのジャミーが、画面の一点を指す。 「やっぱ、そうなんじゃなくて?」 「ああ、俺もそう思う」 アポロンのマサトも同意する。 月桂樹から呼び出されたデータがそこには映っていた。数多く並んでいるデータの中 の一点が、そこにいる三人の脳裏にひっかかるものを与えていた。 幾つかの考え得るべきキーワードを選び、それを宇宙第二位の記憶コンピューター、 月桂樹に入れた結果である。 「でもこれって、これだけの能力ならヘラが見逃す訳ないと思うけどな」 アフロディーテのミラルカが、不思議そうにつぶやく。 ヘラ(生活管理)の人事科はあらゆる星の人々のデータを保管しているのだ。その中 からオリンポスに必要でかつ、適している者をスカウトしてくる。 その的確さは見事なものでヘラがスカウトしてきた人達が不満を漏らした事がない、 という位である。 「ま、この年じゃスカウトもできまい」 「あら、目はつけてんじゃなくて」 「ん、そうかもね」 ミラルカはスクリーンの文字を再度読み直してみた。 「恒星は、リュカオーン。第四惑星リオヌル。都市ディオラ。所、マチュピア孤児院」 「よし、詳しいデータを呼びだそう。」 <Τ> 十四日十六時三十二分 <続く>
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