CFM「空中分解」 #1405の修正
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(18)神の鏡 (ノバァの友人の隠れ家) 「ねえ、なんとかならないの?」 「冗談じゃないよ、ノバァ。ポリスが証拠品として没収管理してるものを、いったい どうやって手に入れるってんだい?」 「マッコイ、あんたを見込んで頼んでるんだよ。駄目なら、他を当たるわ」 「やれやれ、相変わらずわがままだな」 マッコイ爺さんは、端末の前に座ると、市政庁のマザーコンピュータにハッキング を始めた。 (市政庁タワービルの中) 「えーと、これは、ああ、償却品の売却許可証ですね。これで結構です。あと、所持 権譲渡証と、廃棄証明書を持ってきて戴けますか?」 「うそーっ! あたしは、今朝の八時から、ここの一階と三十階を三往復もしたのよ」 「そうそう、所持権譲渡証は三十五階の管理部、廃棄証明書の発行は四十六階の財務 部が窓口です。それらの書類を持参戴ければ、こちらで出荷証明を作りますので、六 十七階の運輸部に行ってください」 ノバァは、とぼとぼとエレベータ・ターボシャフトに向かった。 (町外れのスクラップ工場) 「車載コンピュータの情報を抽出しろ? できませんよ。ほら、ここ見てください。 ええ、ダッシュボードの下。空っぽでしょう? ここに本当なら車載コンピュータが 搭載されてるんですよ。えっ? 予備のメモリバンクがある? あっ、こんな所に隠 してある。えっ? このメモリデータをあっちの車載コンピュータに移植しろ? 違 法ですよ。事故車のコンピュータのパーソナリティは、また事故を起こすかもしれな いんですよ。まったく、どうして、こんなオンボロに固執するんです?」 「気に入ったからよ」 油の染みた服を着たメカマンに、ノバァはポツリと答えた。 (裁判所第一法廷) 「パシィフィック・クイーン・シティ・アーミー、南リンクス基地第24小隊所属、 ハンス・ロドリゲス二等兵射殺事件の被告、カズ・コサックに対する判決を述べる。 罪状、第一級殺人。被告、カズ・コサックを懲役三十年の刑に処す」 「但し、次の事項が最終審議として残っており、この内容を判決として付加する。ハ ンス・ロドリゲス二等兵射殺事件の検察側の偽証、またアーミーの作戦記録のすり替 え、当時の作戦行動の総責任者であるルドンコ少佐の出廷拒否など、検察側には数々 の法廷侮辱があり、民主裁判における基本原則をないがしろにするその態度は、断固 として許すわけにはいかない。誠に異例ではあるが、本法廷並びに法務局は今後の検 察側の上告を一切、却下することに決定した」 「更に判決を続ける。ここで、被告には被害者に対する殺意が全くなかったことを再 度述べておく。事件当時、被告自ら助けようとしたロドリゲス二等兵を、逆に射殺す るという事態に、被告本人の精神的ショックは極めて大きなものがあったと想像され る。事実、数カ月間、被告は極度の睡眠不足に悩まされ、罪の意識に苛まれ、何度も 神父に懺悔を願い出たという」 「当法廷は、この事件の特殊性を充分に吟味した上で、被告の苦境に対して同情する ものである。よって、十二人の陪審員全員一致で、被告に対して情状酌量の上、刑執 行猶予を120年とする。但し、カズ・コサックの当面の身元引受人はノバァ・モリ ス、後見人及び監察官は、シティ・ポリス刑事課のハザウェイ警部とする。また、カ ズ・コサックの職業に関しては制約しないが、銃器に関しては、物体弾、非物体弾を 使用するものに関わらず、監察官の許可なくしては所持してはならない。以上。これ にて結審とし、閉廷する」 カンという木槌の音がした。 法廷中がわーっという喧騒に包まれた。茫然とする検察側、嬉々として喜び合う弁 護側。傍聴席もまた、二分されていた。 カズは弁護士と抱き合って喜んでいた。そのカズに飛びつく人影。 「カズ、カズ、カズ、カズ。良かったね。良かったね。良かった・・・」 ノバァがグレーの瞳から大粒の涙を流しながらカズに抱きついた。豊満な彼女の胸 がカズの胸をくすぐる。カズは込み上げてくる熱いものをぐっと飲み込んだ。 カズとノバァの横に、二人の子供を連れた立派な服装の初老の男が立っていた。 「フレスコ執事」カズは懐かしそうに男の名を呼んだ。 「コサック様、よろしかったですね」 「カズさん、良かったね」「良かったね」 二人の子供も口々にカズに話し掛けた。 「ありがとう、シェン、ルル」カズは二人の子供の頭を撫でた。 その二人の子供の後ろに二人の男女が立っていた。細面で背の高い男性は、アント ン・ピーク氏、手足が極端に細く透き通るように白い肌の持ち主は、スーザン・ピー ク、シェンとルルの両親だった。 「その節は大変、御世話になりました」二人は、深々と頭を下げた。 アントン・ピーク氏はパシィフィック・クイーンの実力者だ。この判決に際しては 彼の尽力があったのかもしれない。 「ルル、火の球、どうした?」とカズ。 「うん、あれから出ないの」 「あんな火の球は出ない方がいいな」 小柄で小太り、禿げあがった頭に僅かな白髪、赤ら顔の男が立っていた。 「グレン博士!」 「よかったですな。コサックさん。だが、私にとってはあまりよくない。シェンやル ルの超能力が消えてしまったんだから」 「本当に消えてしまったんですか?」 「ルルはエアロダインの中で発熱した後、丸々一週間も高熱で意識不明だった。それ 以来、ピーク家には例の火の球は出なくなったよ」 「博士、一つ質問があります。中央区の東五十三番街で、シェンを襲ったホバー・バ イクのヒットマン。あれは、あなたの差し金ですか?」 「そう思うかね。アーミーにいる人間全てが、悪者という訳かね? しかし、残念な がら、あれは私ではない。サイコ・ブラストの能力を試すために、おそらく・・・」 「ルドンコ少佐がやった」 ノバァが話に割って入った。博士は声を出さずに頷いた。 「この子達は単に、サイコ・ブラストの潜在能力を持っていただけだ。その力を発動 するのは、周りの人間だ。あの力は鏡にすぎない。ホバー・バイクのヒットマンの殺 意が、シェンを通しルルの能力を発動させた。つまり、あのヒットマンは自分の殺意 に殺されたのだ。サイコ・ブラストは殺意を跳ね返し、殺意ある者を滅ぼす。汚れた 者には授けられない『神の鏡』だったのかもしれん。だが、その力もこの子達から去 ってしまった。研究材料のなくなった御陰で、私は失業だ」 「と言われますと、博士はアーミーを去られたのですか?」 ノバァが、驚いたように尋ねた。 「いかんかね? 『神の力』を研究するには、少々歳を取り過ぎたんでね。それじゃ あ。元気で、お二人さん。いつまでも仲良くな」 グレン博士は、手を振ると小柄な身体を揺すりながら去っていった。 −−−−−−−−−−−(TO BE CONCLUDED)−−−−−−−−−−
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