CFM「空中分解」 #1389の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
なんか書くネタが以前アップしたものに似ていますが、それ はひとえに私自身の力不足ということです。勘弁して下さい。 それから、良いタイトルが浮かばず、ちょっと内容と合わな いものになっているのです。良いタイトルが思い付いた方、ぜ ひ教えて下さい。 NINO ペーパー・ラヴァー 右の脇に置いたライトの光で、私はアンドロイド所有の為の申請書類を見 ていた。種別:特種、用途:病人看護・その他一般事務、性型:女。特種は 申請が難しい。申請者が犯罪に関わっていてはもちろん許可されないし、経 営状態から本人の面接までかなり手順を踏まなければならない。特種アンド ロイドは、心を要求される用途に主に使用される。だから、申請書の用途・ 目的の欄に記入されるのは殆どが看護や医療なのだ。極くまれには、秘書や 動物の飼育等への使用でも許可される事もある。 特種は一種や二種などのいわゆるワーク・ロボ的なアンドロイドとは別も のだった。人間と間違うほどの肌と体、そして知性といった事は特種に限っ た機能ではないが、それだけでは到底人間とは認められないレベルだ。特種 は人間であるかのごとく振る舞えなければならない。特種アンドロイドはロ ジャー・バイベルが造り出した、高度なハードとソフトの融合体なのだ。 申請の為の書類は時代遅れの用紙だった。行政ネットワークのへポストす る電子ファイルではなく、ただの紙切れという意味で。 そしてそれが紙であるという事に、因縁じみた、皮肉めいたものを感じる。 私が撒き込まれたある事件に奇妙な関係があるように思えるのだ。 人間の戯れの愛とアンドロイドが探し求めた真の愛。それが事件の本当の 始まりだった。遊び半分にアンディーと関係を持つ男。人間以上の情熱をもっ て、その男を愛そうとしたアンドロイド。私もまたそのアンドロイドを愛し た一人だった。 申請書の全てに記入を済ませ、私はしばらくそれを眺めた。私がアンドロ イド所持の為に申請を出そうと思ったのは、そのアンドロイドを複製しよう と思ったからだ。彼女「「そのアンドロイドは既に炎の中に消えさっていた が、私のしている裏の仕事の上でその脳位図をファイルしてあったのだ。 私のその仕事とは、人間に近付き、苦悩を覚え、それを処理し切れないで いる特種アンドロイドから、そのこころを奪ってしまうと言う事だ。それは 法規に反する、重大な罪だ。だが、私はいまだにこの闇エンジニアーのよう な仕事をやめられないでいる。それは、彼女たち「「時には男型もいるが「 「アンドロイドたちが、私のような仕事を必要としなくなればの話だ。未だ に仕事は絶えないし、今まで彼女たちにしてきた私の罪をあがなうためにも、 やめるわけにはいかないと思う。 白紙状態の新しいアンディー「「アンドロイドを購入し、脳の中身を連関 させ、そっくりそのままの記憶と性格を持たせたいと思った。実際それは不 可能ではない。非常に現実的な技術として存在しているのだ。そして自分も 以前のままではない。今度こそ、彼女とうまくいくはずだ。だが…… タバコをくわえ、ゆっくりと煙を吸い込んで考える。果してそれが私の望 む事だろうか、と。人形に恋するようなものだ。成長し切れない、幼い魂の 欲求。限りない自己愛、自分を傷つけたくないから自分の望む通りのことを してくれる人形に恋してしまうのだ。 様々な思いが煙と同時に吐き出され、私は決意した。申請書類を引き千切 り、灰皿の中で火を付けた。あまり良くは燃えなかったが、その小さな炎の なかに、まるで占い師の水晶玉のように情景が浮び上がるような気がした。 あの炎のように…… 大抵の日々の朝と同じく、今日の朝も、私は二日酔いだった。ドアにアン ドロイドらしい女の人影が立ったことも、ありふれていて、平凡すぎる一日 の始まりだ。 「あんた、記憶の消去をするんだって」 女は錆びたちょう番をギイギイならしながら、そう言った。 「嫌な記憶を癒すことはやっておりますが、そんなことはやっていません。 なぜなら、私はアンドロイド専門のサイコ・セラピストですから。表に書い てあるでしょう」 確かに”こころ”は消している。が、記憶だけを選択して消す事はやって いない。 「うそ。そう聞いたわ」 「そうですか、そんな馬鹿な噂をどこでお聞きになったんですかね。まあ、 どうぞ。なにか別の事でも何かお役に立てるかもしれないですし。その前に、 ドアを閉めて下さいな」 周りの事務所は開店休業状態だし、別に聞かれてもどうということもない 連中だったが、用心するにこしたことはないのだ。 彼女をドアの左、窓際の部屋に通し、私は部屋を仕切るカーテンを引こう とした。 「あんた、本当に藤原さん」 「ええ、確かに藤原ですよ」 レールが錆びついて、うまく動かない。 「なにやってんの、あんた」 短い髪を揺らし、脇でカーテンと悪戦苦闘している私に振り向き、言った。 美しい茶の色をした瞳ではあるが、目の間隔があきすぎ、少し間の抜けた感 じがする。製作者の意図だろう。アンドロイドで人間より知的に見える顔は あまりつくらない。もっとも、人間に見えなくなる程の奴はないが。 私はようやくカーテンを閉め終わり、低いテーブルを境にして彼女の反対 側のソファーにゆっくり腰を下ろした。 「記憶を消すっての、やってよ」 「ちょっと待って下さい。その前に、あなたはここの事を誰に伺いました?」 「それがどうしたの」 「確かに貴方がおっしゃったような事を私はしておりますが、保証人のない 限り、そのようなことは引き受けないことにしております」 「もっと具体的に言ってよ」 「つまり、紹介者の名前を言ってもらえればいいのです」 「関係ないでしょ」 「あります。昔、あなたのように紹介者がいないという方がおりましてね。 その人の言うままの処置をしたんです。そしたら、後でその人が人間だった と分ったんですよ。アンドロイドではなく、ね。それで、その親が警察に訴 えてしまって……私はその為に顔を変え、引越さなきゃならなくなった。そ ういう面倒なことに撒き込まれたくないんだ、もう二度とね」 それは接続端子を埋め込んでいる、妙な女だった。仕事と失恋のせいで、 頭がおかしくなっていたらしい。後で聞いた話だと、放送関係の仕事だった そうだ。何度も整形をしたような、酷くアンバランスでグロテスクな顔。私 は彼女が人間であると見抜けなかった。私の受けた五感の全てが、彼女はア ンドロイドだと語っていたからだ。 その時から、私は直感を信じていない。 「私には親も友人もいないわ」 「それは関係ない」 「それじゃ、人間でどうして困るの」 どうして困るかだと!それが分らんのか。 「帰れ!」 怒鳴ったぐらいで帰るような相手ではないことは分っている。が、怒鳴り たくなる感情は押さえられない。なぜなら、私にも断るような理屈がなく、 そしてたとえ理由がなくても人に対して処理をすることは出来ないからだ。 案の定、女は平然とした顔で座っている。そして、バッグから小瓶を取り だし、左手の皮を外し始めた。 「冗談よ。人間のはずがないでしょう」 「その程度の仕掛けでは信じられません……」 「……それじゃ、なにか他の、確実にアンドロイドである確証があればいい わけね。製造番号を言えば確認は取れるかしら?」 表皮を外しても、感覚の遮蔽が容易なアンドロイドならば、別段痛みを感 じないはずである。しかし、この程度でアンドロイドと信じれるものか。私 の視線に構わず、彼女は小瓶からゼリー質のものを右の指ですくい、剥き出 しの左の指に塗り付けていく。 だが、私は生来からの気の弱さのから、そのグロテスクなものを見ること に耐え切れなくなり、窓の外に視線をそらした。彼女の赤茶けた筋肉を見る 事が、苦痛だった。気持ちの悪いものは、小さい頃から苦手なのだ。体の内 部や血、それに類するものを見続け、想像し続けると、吐き気と脳貧血が一 緒にやってきて、なにも考えられなくなる。 「型番AA−8257P−f、製造番号は2017−0824−00701、 よ」 私は手を見るのが怖くて、聞くどころか振り返ることすらできない。 「聞いてんの」 「そ、そういうものをこれ以上、私の前にさらさないでほしい」 「あら、こんなもの見慣れていると思ってたけど。気が小さいのね、あんた」 「ああ。だから表皮を被せてくれ」 「これやらないと、指の動きが段々ぎこちなくなってくるのよ」 風景がすっと遠ざかっていく。 「それくらい知ってる、だからここではやるな」 私は頭を低くした。頭に少しでも血がいくと思うからだ。 「すぐ終わるって」 目の前が白んできて、彼女の顔が良く見えない。限界だった。 私が目覚めたのは、同じ仕切り部屋のソファーだった。彼女の姿は見えな い。ソファーに寝かせてくれた後、あきらめて帰ってしまったのだろう。日 差しの角度から、もう昼食どきであった。 表向きアンドロイド専門のサイ・セラである私の所へ、よく訪ねてくる彼 女たちのなかにも、この弱味を知っていていたずらをする娘はいる。だが、 彼女たちは大抵、病人を扱うために強化されている”こころ”の部分が歯止 めになり、私が気を失うまでしつこくすることはなかった。だから、彼女た ちは決して人を傷つけない。人間に対して危害を加えるのは人間である、と いう皮肉をいう奴もいる。 つまり、彼女はその”こころ”の強化された部分が壊れ始めているか、あ るいはアンドロイドではないか、そのどちらかなのだ。指の部分だけでアン ドロイドと判断するのは早急であり、逆も同じだ。 まあ、とにもかくにも、彼女は帰ってくれた。私は起きなおって、タバコ を取り出した。 煙が窓へ漂っていき、日差しをうけた煙は模様を描く。それはどことなく、 苦悩したアンドロイドたちの脳位図のようにも見える。私は息を吐きかけ、 その模様を消した。これが私の仕事なのだ。ふと、そう思う。
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