CFM「空中分解」 #1374の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
オリンポス。 神々の膝元。 大神ゼウスの統べる要。 白亜の神殿がそびえる地。 もっとも険しくもっとも高き地にそびえるはゼウスの神殿。 そしてその真下に十二神の神殿。以後人間界に向かい各々の神達の神殿が続く地。 今、大神ゼウスの神殿には、天帝デウスとその妻にして結婚の女神ヘーラが椅子に座 り、ゆったりとくつろいでいた。 その目前に、紫の衣を長き銀色の髪に映えさせた−−陽の光が銀髪に反射し、紫の落 ち着いた色調を一層美しくさせる−−若者がいで、膝まつく。 長き銀の髪、深い藍の瞳。 そして、紫の衣服、紫の石の簡略の鎧。両肩を覆い左肩から腰下までとどく長衣。 彼こそ! 「お召しとのこと」 落ち着いた口調−−声、わずかに低いとはいえ聞く者に決して不快にはさせぬ。 わずかな肩の動きが、くもの糸のごとき髪を踊らせる。 「ユミアウラ。雷の一族のテンオウ、まいりました」 顔を上げ視線をゼウスへと向ける。 彼こそ! ユミアウラを統べる一族。 雷(いかずち)の一族のテンオウ。 ユミアウラにおいて、もっとも美しき気高き一族。 雷の力を持つ者にふさわしき者。 それは、ひさしぶりのお召し。十日前のことだった。 そして、きょう。つまり、あれから十日後。 いらいらいらいら 何てことだ。 全く、どこ行ったんだ。あいつは。 ぶつぶつぶつぶつ 俺は、そこら辺を行ったり来たり。 もうすぐ、戦技会がある、というのにだ、あいつは帰って来ない。 俺はいらいらと歩き回ってた。 手は髪を絡ませ所在無げに、無意味な動作を繰り返す。 うっとおしく、けれどたいせつな髪。俺達にとっては。 この髪は俺達の武器である。至上最高の武器。 俺達の藍の瞳は、銀に映える。どこから見ても端正な顔立ち。 自分でいうのも変だか、だが、なかなか似合う髪と瞳、顔。 優れた存在。 俺達は、ユミアウラの中でも最も統率力に優れた存在。そして、俺達は統率者、統べ る者。 それが義務。行なうべき責務。使命。 なのに。 カセイは決して従わない。俺の命令を聞こうともしない。俺に逆らう、俺達、雷の一 族に逆らい続ける、カセイ−−炎の一族。厄介者。 何故最高神ユミナニは炎の一族の勝手気侭を許す? 俺は許せない。俺に逆らう、カセイ。 神に逆らうカセイ。 神に怒りをぶつける、炎の一族。 神に怒りをぶつけてどうなる。神は必然性を持って我々を造った。神が必要だから、 だ。選ばれたことを、誇りに持たずしてどうする。我々が戦わねば、誰が戦う。誰が人 を守る。そう、人を守る。 俺達の存在理由を何故否定する。 俺達は、生きなければならない。俺達は戦わなければならない。 俺、テンオウは、神に従う。神に従って間違いはない。 間違いない−−俺の信念。 神は正しい。 『まだ帰らぬ』 怒りが場を震わす。 『どこに行ったのだ』 静かな、それでいて強い。そう、だからこそ強い怒り。 『許せぬ、我が命を守らぬ者』 『何をそう怒っておられます。我が夫』 冷めた思いが言葉と共に流れ出した。冷めた−−言い換えればあざけり。 『我が命を守らぬ。これが許せようか』 『ほほほ。あなたの怒り、それだけでしょうか』 結婚の女神、神の女王、天の神の妻ヘーラは天の神、神の王ゼウスに冷たい眼差しを 送った。 『あなたの浮気を、カセイが邪魔した。それが本当の怒りでなくて』 嫉妬深いヘラ。結婚を司どる故に許せぬ行為。それは正当な怒り。 つい先日カセイの機転で一人の少女がゼウスから逃れた、ことを言っているのだ。 この時からカセイはヘーラには気に入られ、ゼウスから憎まれた。 ゼウスはカセイの一挙一同が気にいらなかったし、それ以上に憎かった。カセイが。 年端かない少女が、男のように荒々しく振る舞い、罵倒する。神の王の命を一切聞か ず、勝手気侭な行動をする。許せない存在。 『テンオウは?テンオウはおらぬか!』 怒りに満ちた声が空気を震わした。 「大神ゼウス、お呼びです」 ニンフの一人が伝えてくれた。心なしか脅えてるようだ。また、お怒りなんだろう。 ふっとため息。 さて、またカセイのことだろう。 カセイは嫌いだ。俺に従わぬ。神を憎む、逆らい続けるカセイ。カセイは嫌いだ。 そう、俺は嫌いなのに……。 なのに、何故こうもいらつく。 カセイが帰って来ない事に、何故俺がいらつかねばならぬ。 放っておけばいいじゃないか。 放っておけば……。 俺は回廊を進んだ。 カセイは嫌いだ。俺をこけにし、従わぬ。 そう何度思った事か。 なのに、ゼウスの前に出ると−−思ってしまう。炎の一族の、その一挙一動を。 どうしてだろう。 そして、あんなに嫌ってる筈のカセイをかばう。カセイが何か正しいことをしている ように思えて。 そんなこと。 神は正しいのだから、そんなこと。 たぶん、あの戦力を失いたくないから。きっとそうに違いない。戦力だけは、俺達よ りはるかに上なんだから。 俺はそう判断ИИして、ゼウスの御前に進んだ。 怒りがピンと空気を張り詰めさせていた。息苦しい程の緊張。 『テンオウよ』 静かだからこそ怖い声。 『カセイはまだ戻らぬか』 「はい」 カセイは戻らない。戻っていない、から。 「戦技会はもうすぐそこまで来ておる。この時我が命に従わぬのなら、地球より追放す る」 ぴくん 俺の体は揺れたに違いない。予想できた言葉、判り切っていた事。 なのに、何故俺の心臓は音を立てる。どうして、こうも動揺する。 いつもそうなることを願っていたではないか。 カセイが命に従う事はないのだから、これは決定的。 なのに、俺は。俺は怖れてる。命が実効されることに……。 「大神、ゼウス様。カセイは我の命に決して従いませぬ」 これは屈辱。雷の一族にとっては、大きな屈辱。 俺は雷の一族。統べる者。ユミアウラの統率が義務。責務。使命。 だが。 「そうだろうな。だか、我が命には従わなければならぬ。我は天帝、神を人間を統べる モノだ」 また、思い出す、カセイを。 そして、反感。これは、神に対して? ち、違う。 何が違うんだ。 俺の心が二つに分かれた! 反感だと!神に対して? そんなことがあってたまるか。しかし。 カセイが追放される。あの憎いカセイが追放される。喜ばしいことじゃないか。 いや、違う。あのカセイを追放させるな。仲間だ。カセイは仲間。信頼すべき、愛し い仲間。 愛しい? 俺の心臓が早鐘のようになり響く。 「ゼウス。戦技会の日取りは?」 声が震えていたに違いない。大神ゼウス、の不審そうな声が帰って来た。 『これより三日後。陽があの樫の木にかかったらな』 「三日後ですね。承知しました」 三日後。 それまでにカセイと連絡を取る。カセイを 連れ戻す。カセイは俺の言う事なんか聞きやしない、けど。 『テンオウ。おまえの弓は百発百中だそうな。期待してるぞ』 「はい」 弓−−『聖なる石』でできた俺の武器。 『聖なる石』はユミアウラのみ扱うことのできる、元は無色透明の石。俺達の力を受 けてその色を変化させる。 ありとあらゆるものになるこの石は、衣服に。鎧に。そして武器に。 そして。 −−−−−。 俺は一刻も早くカセイと連絡がとりたいがため、そそくさとゼウス様の御前から退い た。 弓、か。 大振りの弓は普段は小さくたたまれて腰に装着されている。 けれど、期待しているゼウス様には悪い、けど。俺の矢はことごとくカセイの鞭に叩 き落とされる。 カセイは凄腕だ。カセイの言葉は頭にくるけど、それはそれで、俺達のためだ。 う、ん? まただ。 また、カセイをかばう。カセイは憎いのに。俺の言う事を聞かないカセイ。 けれど、俺達を守ってくれるのは、神でなくИИカセイ。 自分の身が危うくなろうとも俺達を守るИИ炎の一族。 いらいらいらいら 体の中が熱くなるほどいらついてくる。 いらいらいらいら 俺は秘かに神殿裏のだれも見ていない岩場に行く。 巨大な岩が並ぶ。邪魔な岩。巨人達が神殿にむかって投げた岩。 邪魔だ。邪魔だ。 どうしようもない怒りを両腕に集中させる。 いらつきが心を支配する。怒りが心を支配する。 カセイに対する怒り。自分に対する怒り。 神にИИ神に対する怒り。そう、結局俺も同類項。カセイと同じ。神に対する怒りは あるのだ。 心の奥深く沈みこんで始めて出て来る怒り。隠された怒りИИが、沸きでてる。 それはこらえようもなく、おどろおどろして溢れる。 全ての怒りが体内を駆け巡る。怒りを全て。 全て目前の岩に向ける。やり場のない怒り。 ゆっくりと弓を外し−−弓は一瞬にして元の形となる。その曲線は鋭利でよく切れる。 小さく収納されていた矢が手の中で伸びる。 岩の中心を狙い両腕の怒りを、全て矢の先にこめる。 紫の矢がもっと濃い紫へとかわり−−『聖なる石』は俺達ユミアウラの力をその中に 吸収する。 「はぁっ!!」 ぶわっ! 怒りが爆発。 全てが怒りとなった時、怒りは矢と共に放出。 その力を岩はまともに受け、凄まじい放電現象と共に、巨大な体を崩していった。 その力を岩はまともに受け、凄まじい放電現象と共に、巨大な体を崩していった。 細かい塵が周囲に降っていた。もうもうとあがる煙から逃げる。 煙が修まる頃、巨大な岩は土とかして、目前に広がっていた。 「さあ、カセイに連絡でもとらないとな」 ぱちぱちぱちぱち 微かに放電。 ぱちぱちぱちぱち 怒りはおさまった。 <終>
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「CFM「空中分解」」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE