CFM「空中分解」 #1370の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
コリアンダー,カルダモン,カイエンペッパー,レッドペッパー,クミン,クローブ,ターメリック,パプリカ,マスタード,ナツメグ,シナモン,エトセトラ。 以上、カレー粉を作るスパイスです。 以下、お好みによりお入れください。 ヨーグルト,スープストック,クリーム,蜂蜜,レモン,例えば、ニンニク,等々。 おいしくできたルーに、入れるモノ。 例えば、四季折々の野菜。否、海老,貝,お魚。やっぱり、お肉。鳥肉,カツ。果物。卵。多種多様。 スープ状?とろりまったりいつものカレー?ライスは固め,柔らかめ? ほーら、決して同じものはできないのです。 ☆ トントントントン 階段降りて、台所行く。 おかーさんが玉葱切ってた。側に、ニンジンの微塵切り。 「きょうはカレーなの?」 「そうよ」 楽しそうなおかーさんの声。おかーさんってばカレー作るってなると、その日の朝か ら支度始めんだから。 もう、気合いれてんのよね。ルーから作るんだもん。かといって、時間がなかったり、突然のカレーってなると、インスタントだってレトルトだって、使うのよね。 別にカレーを究めてるって訳じゃないんだろー、けど。 「目玉やき出来てるから」 「はぁい」 あたし、新木ゆうこ、十六歳は、朝のお食事だぁ、と食パンにかぶりついた。マーガ リンたっぷりにとろけるチーズのトーストは、大のお気に入りなんだよぉ。と、瞬く間 にたいらげる。 んで、学校……。 「はぁー」 おっきなため息。一つ。 「どうしたの」 「高校って、結局中学校の時と対して変わんないんだもん。退屈」 ったく。入学式も済んで、一ヶ月もたとうかっていうこの五月。『五月病』だなんて 言葉がそっくりあてはまるかのような気分。 結局、一個年喰っただけで、何の変化もない。友達も同じ。新鮮さが欠けるっていう か、何ていうか。刺激的なとこが、一個もない。 何よりも嫌なのはっていうと、先生も結局中学校の時と同じような目であたしを見る、ってとこ。 「ほら、この前知能テストあったって言ったでしょ」 「ああ、入ってすぐだったわね」 玉葱切ってた手を、ちょっと止め振り返る。「ということは、また同じ結果だったの ね?」 「そうみたいよお。職員室で先生に言われたもん」 先生の期待感ってのがひしひしと伝わってきたもんなあ。うーん。 「どうして適当にしなかったの。もうパターンが読めたでしょうに」 おかーさんもため息混じり。 「あはは」笑ってごまかすって訳にもいかないなっと「ついね。あーゆーのって面白い から」 「それで、また中学と同じ事が起きるって、思ってため息ついた訳?」 「まあね。代わり映えしないんだもん」 知能テスト。あれは、厄介だったな。調子に乗っちゃったから。つい実力?だしちゃ ったみたいでね。 あたし、不思議な事に、知能テストってなるとやったらいい成績出して。で、結果が、『IQ200』なんだそうだ。 ところが、こいつってば絶対成績に比例してないなっていうのが、我が家の持論だっ たりして。 つまり、あたしの中学の成績。万年『中の上』。 働かないんだもん、あたしの頭脳って。こと勉強ってことになると。 我が家の、おかーさんのおばーさん。も、こういう頭をしてたんだそうで、学校の成 績をずっと『中の上』ですごしてしまったという。 ところが、それを知らない先生達ってば、変な期待するもんだから……。憂欝。 「代わり映えしないっていうけど、ね」 おかーさんまた玉葱切り出した。やだ。目にしみる。 「絶対どこか変わったとこってあるから。一つ年とったぶんだけね」 「そうかな」 「そうよ。先生だって中学の成績知ってる筈だから、中学程派手な期待しないと思うけ どね」 うー。玉葱の匂いが染みつきそうだ。 「ね。何でお母さんがカレー作るのが好きか、知ってる?」 「へっ?」 あまりの唐突な質問。 「知らない」 「カレーてね。こうやってルーから作るとね。その時その時のスパイスの種類、量。隠 し味。そして具。ほんのちょっとしたことの積み重ねで、思ってもみなかった味がでる の。それが楽しくて、好きなのよ」 「……」 「何か変化が欲しかったら、スパイスの量を変えてみればいい。おしゃれな雰囲気にあ わせたかったら具を変えればいい。エネルギー欲しかったら、カツカレーにしようか、 ってね。千差万別のカレーができるの」 そういいながら、おかーさんってばにっこり笑う。 「学校だって、同じよ。何か変化が欲しかったら、スパイスになるモノを入れて見れば いい」 「スパイスになるモノッて……」 「そうね。友達なんか、そうね。新しい友達、たった一人でも退屈な日常がガラリと変 わるかもしれない。変わらないかも知れない」 「そんな人いるかな?」 いろいろ思い浮かべてみる。面白そうな人って……いないと思う、けど。 「その人がどんな人なのかは、付き合ってみないと判らない。例えばレモンみたいな人 だっているかも知れない」 「レモン?」 「そうよ。レモンはとってもすっぱいけど、辛すぎるルーに入れると味をマイルドにし てくれるのよ」 「思ってもみなかった性格だったりするってこと?」 「そうよ」 フーン。そんなもんかな……。 そんな人って、いたっけ……。 「あらやだ」 突然のおかーさんの声。時計見てる。つられて見て……。 「あーっ!遅刻しちゃう」 予鈴ぎりぎりで教室にとびこんだあたし。 中学からの友達達と「おはよう」なんて軽く挨拶して。 いつもと変わらぬ朝。 だけど、ね。 何とはなしに目がついた人がいた。 いつも机で本読んでるか、外見てボーッとしてる人。頭いいみたいで、優等生タイプ。 えっと、名前は確か……神野さん。神野舞香。 やっぱ、おかーさんの話が頭に残ってんのかな、きょうに限って妙に気になる。うう ん、気になってんのはずっと前から、かな。 だから、きょう、気になったのかも知れない。 だから。 決心した。 ☆ 「ゆうちゃんにとって、あたしがゆうちゃんのスパイスだったように、あたしにとって もゆうちゃんは、あたしのスパイスだったのよ」 あれから三年。 高校を卒業して、社会に、宇宙にでることになったあたし達。 空港で、舞香は言った。 「高校生っていう時期。あたしはこんな性格だったから、なんの変化もないただの時と して過ごしてしまったかもしれない。だけど、ゆうちゃんというスパイスがあって。あ たしの高校生活を思い出のあるものにかえてくれたスパイスに感謝するわ。ありったけ の思いをこめて……」 そう言って舞香は、宇宙に出ていった。 宇宙に出て言っても、あたしのおかーさんの言葉、決して忘れないって。 カレーを食べると絶対思い出すだろーって。 あたし、おかーさんに感謝。 そして、あたしのスパイスとなり得た舞香に感謝。 そして。 全ての源となった、変化に富んだ食べ物。 カレーライスに感謝。 <完>
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