CFM「空中分解」 #1355の修正
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それは炎の中で炎と化して燃えていた。 地面に転がったままだったカセイは、半身を起こした。 炎の中のそれを見た。 「あれは……」 うーー 「あ」 振り返る。 猪が迫っていた。瞳に凶悪な炎をたぎらせつつ。 じりっ 体を起こす。左腕は使いモノにならなかった。力なく肩から垂れ下がっている。激痛 が思考を混乱させていた。 ゆっくりと炎の中を見返す。 そして。猪を見た。 混乱した思考をなんとかまとめる。 その間にも、猪が近付いていた。 鼻息が感じられる程近く。に。 右手で左腕を押さえる。そして炎の方に向き直る。猪は後ろだった。かまわない。 炎が力を放っていた。 炎の中の炎が力を……。 ぐぅぅー。 タッ! 猪が飛び掛かるのと同時。カセイもまた炎の中へ飛び込んだ。 カセイが炎に包まれる。左腕を押さえていた右手が、傷口をえぐる。 「あうっ!」 血がほとばしり炎の中の炎に降り注ぐ。 そして。地面に転がりおちた。 炎の寸前で猪は立ち止まった。向こうにカセイが転がっている。ゆっくりと炎を迂回 しようとして、その四つ足が止まった。 猪の野性の本能が危機を教えた。 炎の中に危機がっ! 後ずさった。カセイは動かない。 そして。 激しい尖光が辺りに満ちた。 広場が炎に包まれた。 何事かと村人達がこっそりと広場を見、呆然と扉や窓を開け放した。 「広場が……」 村人の独りが呆然とつぶやく。 広場は燃えていた。 猪の姿の形など陰すらない。 「カセイは?カセイはどこだ?」 村長が最初に我に返り、そして言った。「カセイは?」 「いない。どこにも」 「死んだんじゃないのか。この火の中じゃ」 「ばかなっ!」 はっきりと言い捨て火の中に視線を注いだ。 カセイは村長の家に泊まっていた。カセイが神の力を秘めていることを感じていたが ために、だからこそ死ぬ筈ないと信じていた。 だが。 カセイの気配は感じられない。 「あっ!」 少女が叫び声をあげ、火の中を指差す。 「何だ?」 村長が少女を見た。 「神。神です」 神殿で神に使える乙女、神子(みこ)はそう言って膝まずいた。 「か、神……」 その声を聞いた村人達が次々と膝まずく。村長とて例外ではない。 神子の指差した所に影が揺らいでいた。ゆっくりと近付いている。妙に横幅が広い影 だ。 すうっと炎が分かれ、影が色彩を伴って人々の前にその姿を現わした。 背後に炎があるために逆光であるにもかかわらず、その人影ははっきりとした顔だち を村人の前に露した。 「ア、アポローン……」 一言、神子は言い、深く頭を垂れた。 背後に炎を従えるように、太陽神にして医術、音楽の神でもあり、詩、数学、予言の 守り神。青年神。光り輝く−−ボイポス・アポローン。 『私はアポローン。頭を上げるがよい』 御言葉通り、顔を上げた村長の目にアポローンに抱きかかえられたカセイの姿が映っ た。 「カセイ……。カセイは生きて……」 『左腕にひどい傷を負ってはいる。しかし、生きている』 「おお」 村長は思わず立ち上がり。慌てて再び膝まずいた。 『よい』 アポローンは朗らかに笑って村長を制した。光が辺りにこぼれ落ちるようだ。 ますます身をかがめる。 「ボイポス・アポローン。あの火はあなた様のモノで?」 代わって神官が訪ねた。 『……』 アポローンはただ微笑んだ。否定も肯定もしない。ただ微笑む。 神官以下村人は全てそれを肯定にとった。 「ありがとうございます」 「おお!ありがとうございます」 神はただ微笑み。そして、ふっとカセイを覗きこむ。 カセイは力つき気を失っていた。左腕からなお血が流れている。衣服は全て燃えてし まったため、アポローンのマントに包まれて。 神官がそれに気付き、立ち上がった。 「私が……」 『よい』 首を振りつつ、言う。『私が連れていこう』 神官はかしこまり、手で示した。 「ではあちらに」 アポローンは諾き返し、神殿へと導かれていった。 <続き>
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