CFM「空中分解」 #1350の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
(10)「あっ、痛!」 シティ・アーミーはポリスと共同で、パシィフィック・クイーン全域に非常線を張 り巡らした。シェンが消えて数分後、アーミー・ホスピタルのあるイースト・マリソ ン区は蟻の這い出る隙間も無かった。 一方、カズとノバァは、アーミー・ホスピタルの外来病棟にいた。 「ノバァ、休んでなよ。僕がシェンを追うよ」 「こんな大事な時に休んでられないよ」 「でも、怪我は・・・」 「大丈夫だよ」 ノバァは、包帯でグルグル巻きにされた頭を手で押さえた。その手にも包帯が巻か れて、痛々しかった。 「あたしは平気さ。博士はどう? それとルドンコ少佐は?」 「博士は、研究室に詰めてる。少佐はエアロダインでシェンを捜索に出て行ったよ」 「馬鹿! 呑気にしてるんじゃないよ。あたし達も跡を追うんだよ!」 勢いよくベッドを飛び起きたノバァだったが・・・。 「あっ、痛!」 ノバァは思わず顔をしかめた。博士を庇ってガラスの破片を受けた背中が痛むのだ。 「だから、よしなよ。僕がシェンを追う」 「あんた、今までここにいて、どうやってシェンを追うつもりなんだい。あの子が逃 走してからもう三十分も経ってるんだよ。未だに発見されないってことは、車でかな り遠くに逃げたに違いないよ」 「ノバァ、十才の子供がメガロポリスの警戒体制の中、半時間も逃げおおせるなんて 変だと思わないかい?」 「何が言いたいんだい」 「十才の少年に、ポリスを出し抜くことができるのは、何故だろうってことなんだ」 「車があるからよ。コンピューター・カーだって話じゃないか。いろんな装備が付い てるんだろ。あたし達と同じように、ポリス・ラジオを傍受できるんでしょ」 「それだ! ポリス・ラジオで偽情報を流せばいい。捜しまわるより簡単だ」 カズは手をポンと打った。 「えっ?」 「シェンが自宅に帰りたくなるような情報を流せば、シェンは自分から帰ってくる。 例えば家が火事になったとか、誰かが、死んだとか怪我したとかなんてどうかな」 「ルル様が御病気だという放送をすればよろしいでしょう」 そこには、いつ来たのか、あのフレスコ執事が立っていた。 「お嬢様とおぼっちゃまは大層仲がおよろしいのです。お嬢様が御病気だと分かれば、 シェン様はきっと家に戻られます」 「シェンを騙すのかい?」 「いえ、嘘ではございません。ルル様はシェン様が行方不明になられて以来、昏睡状 態に陥られました。元々、お身体が丈夫ではございませんでしたので」 「病気?」ノバァが呟いた。 「この前、奥さんがふせってるって、あんた言ったよね」 「奥様はルル様の看病疲れで、ふせっておられたのです」 「シェンが、行方不明になったからじゃないのかい?」 執事は視線を落とし、左右に首を振った。 「フレスコさん、シェンはあの屋敷ではどういう存在だったの?」 執事はコホンと咳払いをすると、静かに話し出した。 「シェン様は可愛そうなお方です。あの屋敷では、みなシェン様を恐れています。相 手のトランプの札を当てたり、初めて逢った人の名を当てたり。プールの底に落ちて いた奥様のダイヤの指輪を見つけるなど、特殊な能力をお持ちです。でも、その程度 の能力なら、誰もシェン様を恐れることはなかったでしょう。あの力を身につけられ るまでは・・・。あの力を持たれて以来、旦那様も奥様もシェン様をお避けになるよ うになりました」 とつとつと語る執事の口調は、カズやノバァと大喧嘩をしていた同じ人物だとは思 えなかった。 「あの火の球は頻繁に現れたの?」ノバァが聞いた。 「いいえ、シェン様の身に危険が及ぶ時や、ルル様の身に何か起こる時です」 「ちょい待ち! ルルちゃんの身に何か起こる時にも『あれ』が現れるのかい?」 カズが口を挟んだ。 「さようでございます」 「なぜシェンは屋敷を去ったの?」 「先日、旦那様を訪ねて、当家に一人のルポライターの男が参りました。それとなく 立ち聞きしてしまったのですが、その男はシェン様の超能力を取材するために来たと いうのです。旦那様は声を荒げて、その男を追い返されました。帰ろうとする男の車 が、お庭をお散歩されていたルル様を、撥ねそうになりました。その時、シェン様の 可愛がっていた犬のマッキーがルル様に飛び掛かり、すんでのところでお嬢様は助か りました。しかし、マッキーは撥ねられてしまったのです。そこへシェン様が来られ、 ルル様とお二人で、大層お嘆きになりました。黙って立ち去ろうとした男の車は、白 い球体に包まれて爆発しました。その後、シェン様は行方不明になりました」 「少し話が違うな」カズが呟いた。 「ノバァ、ピーク氏の家にもう一度行くよ。行って、ルルちゃんに逢う」 「あんた、何寝惚けてるの? シェンを捜すのがあたし達の仕事よ」 「いいから、もう一度行ってくる」 「あっ! お待ちよ。あたしも行くよ。あったたたた」 スタスタと部屋を出て行こうとするカズを、追おうとしたノバァだったが、背中の 傷の痛みに顔をしかめた。 「ノバァ、休んでなよ」 「やだ! 連れてかないなら、あんたはくびだよ」 「強情だな・・・」 困り果てたカズの顔を、ノバァのグレーの瞳が悪戯っぽく見つめていた。 「あの、私も連れて行って戴けますか」とフレスコ執事。 みんなは、例のポンコツに乗り込んだ。ノバァは助手席、フレスコ執事は後部座席 に座った。カズは早速、ポリス・ラジオのスイッチを入れた。 「あっつつつつ」 助手席に座ったノバァが、シートに凭れようとして、また呻いた。カズは、後部座 席からクッションを取ると、ノバァの背中とシートの間に入れてやった。 ノバァはそんなカズの顔をじっと見つめた。 「カズ・・・、あんた・・・、優しいね」 カズが照れ臭そうに頭を掻いた時、ポリス・ラジオが騒ぎだした。 「・・・どうぞ。ピー。・・・こちら、エアー・チャーリー・ワン。ビバリーヒルズ ・ブロックのアントン・ピーク家から、急病人を運んでいる。患者はルル・ピーク、 七才。呼吸困難に陥いり、酸素吸入を行っている。受入れ先を教えてくれ。ピー。・ ・・・・。エアー・チャーリー・ワンへ、受入れ先は、パシィフィック・クイーン大 学病院。救急病棟の屋上エアロダイン・ポートに、医師と看護婦が待機している。ピ ー。・・・・・了解、エアー・チャーリー・ワン。ピー」 「お嬢様!」フレスコ執事が呻いた。 「タイミングが良すぎるね。カズ、あたしのことなんか構わなくていいから・・・」 カズがアクセルをぐっと踏み込んだ。ノバァは顔をしかめたが、もう声を出さなか った。 −−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−
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