CFM「空中分解」 #1344の修正
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(9)目覚めた少年 ノバァは、助け起こそうとしたカズの手を払いのけて、ルドンコ少佐の前に立った。 「今時、女を殴れる男が、まだいたなんて驚きね」 ノバァの平手が閃いた。 しかし、そのノバァの手は空中であっさりと、少佐に受け止められた。 「気の強い女だ」 少佐はポツリと呟くと、ノバァを突き飛ばした。ノバァの身体は後ろ向けに飛ぶと カズの胸に受け止められた。 いつの間にか少佐の後ろには、マシンピストルを構えた五、六名の兵士がいた。 しかし、マシンピストルなぞノバァの眼中になかった。 「放してよ!」 ノバァはカズの腕を振り解こうと暴れたが、カズは彼女を放さなかった。 「よせよ、ノバァ。むきになるなよ。奴の思う壺だ。追い出されるよ」 カズはノバァの耳元で囁いた。その言葉でノバァは漸く落ち着いた。 「少佐、そんな暴挙は許されんぞ。即刻、ここの警備を解除しろ」 グレン博士は怒り心頭だった。 「博士、これは極めて重要な問題です。簡単には解除できません。少なくとも、あの 少年が安全だと分かるか、あるいは安全になるかしないと、解除はできません」 「君は、本気であの少年がサイコ・ブラスターだと信じているのか。馬鹿な! あの 現象は科学的に証明できる筈だ。サイコ・ブラスターなぞ実在せん」 「お言葉ですが、博士。あの少年は、このスペース・メディカル・センターの設備を 破壊した。あの少年が特殊能力を持っているかいないかは問題ではない。あの少年が このセンターに入った時に爆発が起こったことが問題なのですよ。少年がアナーキス トの手先かテロリストの一味とも考えられる」 「何ということを、おぼっちゃまはピーク家のれっきとして後継者ですぞ。そんな破 廉恥な輩と付き合いはありません」 フレスコ執事も少佐に食って掛かった。 「少年自身が気の付かない内にそんな連中の仲間にされていることだってある。慌て ることはない。検査が終われば分かる」 「なんと言った? 検査、検査とは何だ!」 小柄なグレン博士が少佐の胸ぐらを掴んだ。 「検査です。少年がテロリストの一味でないかどうかを調べています」 「あの子に何をした! あの子は疲れ切っている。昏睡状態だ。まさか・・・」 博士はうろたえていた。 「大丈夫です。連中は自白剤に関してはプロです。被験者を傷つけることはない」 「何だって! あんな子供に自白剤を使ったのかい! あんた、それでも人間かい」 ノバァがカズの腕の中でわめいた。 「少佐、すぐに止めさせろ! 危険だ。あの子は非常にナイーブな神経の持ち主なん だ。自白剤がどんな影響をもたらすか分からんぞ」 「博士、どういう意味なの? シェンはどう危険なの? 命が危ないの?」 ノバァが心配そうに尋ねた。落ち着いたフレスコ執事の顔にも不安の色が現れた。 「もし、万が一、シェン・ピークがサイコ・ブラスターだとすると・・・」 「そうすると、どうなる?」 少佐の冷たい眼が凄味を帯びて光った。その瞳を博士はまっすぐに見返していた。 「自白剤による尋問で、シェンの心の底にある嫌な記憶が呼び覚まされた場合、あれ が現れる。しかも深層心理に閉じ込められている『嫌な記憶』は、個人にとって現実 のものよりも巨大で醜悪だ。シェンはそれを排除しようとするだろう。彼がサイコ・ ブラスターだとすれば、その爆発力は目覚めている時の比ではない」 「いかん! お前、すぐに病室に行って、連中を止めさせろ」 少佐に命令された兵士は、マシンピストルを抱えたまま、奥の病室に走った。 「お前達は引き続き、ここを固めろ」 少佐は数名の兵士にそう命令すると、自分も病室に向かおうとした。 その時である。 建物がグラリと揺れた。ズシーンンンンンン・・・・・・・。 重い物が崩れる音が伝わってきた。 天井の照明がパチパチという火花を散らして消え、辺りを漆黒が覆った。 すぐに兵士達が携帯ライトを点灯させた。乱舞するライトは不安げな人々の顔を照 らし出した。 「二人、私と付いて来い。残りはここで待機」 ルドンコ少佐の声が聞こえる。 通路の奥の方が明るくなり、その中に兵士達の人影が黒く浮かび上がった。 「うわーっ」 数人の兵士が悲鳴を上げた。タン・タン・タン・タン・タンというマシンピストル の連射音と発射光が見える。 十メートルほど先の通路に、ぼうーっと光る白い球体が浮かんでいた。直径一メー トルくらいのそれはゆっくりと空中を漂ってカズ達の方に近づいて来る。 兵士達は反狂乱になって撃ちまくっていた。 「やめろ。勝手に撃つな。やめ・・・」 少佐の声もマシンピストルの一斉射撃の音に掻き消されてしまった。 その白い球体の明るさが次第に明るくなってくるような気がした。 シューという音やパチパチという音が聞こえてきた。オゾンの臭いが漂っていた。 「まずい! 逃げなきゃ」カズが呟いた。 「カズ、逃げるよ」 振り返ると、ノバァが博士の手を引いていた。エレベーターに行こうとする。 「駄目だ! 電気を使った装置は駄目だ。使えない。あっちだ」 グリーンの非常出口の照明が付いたドアにカズを先頭にみんなは走った。 背後からは、まだ銃声が聞こえていた。 非常ドアを蹴り開けると、カズはノバァと博士を通した。後には誰もいなかった。 三階から非常階段を博士の手を引いて下りていくノバァの姿が見える。カズが振り 返ると、さっきまでカズ達がいたエレベーター前が一際明るくなった。 真っ白い光の球が次第に膨れ上がると、中からパチパチと火花が散り、小さな電光 が空中を走った。兵士達がカズの立っている非常階段の方に走って来る。 キィーーーンンンンンンンンン・・・・。グアーンンンンンンンンン・・・・。 白い球体が突然膨れ上がると、爆発した。 恐ろしい衝撃が起こり、カズは非常階段から空中に投げ出された。必死で手すりに しがみつく。 そのカズの頭の上を数人の兵士の身体が空中に飛んで行った。その後から、真っ赤 な炎が非常ドアから吹き出した。 次々に割れる窓ガラスが凶器となって地上に降り注ぐ。 手すりにぶら下がったままて下を見たカズの眼に、非常階段の途中でガラスの破片 に襲われて身動きしないノバァと博士の姿が見えた。 カズは手すりにぶら下がって反動を付けると、下の階段に飛び下りた。そのまま掛 け下りると、ガラスの破片で地塗れのノバァと博士を両手に抱えて下り始めた。 漸く地上に下り、建物から離れた所に二人を連れて行ったカズの眼に一台のブルー の車、豪華なキャデラックが入った。 走り去るその車の後部座席に、カズはシェンの姿を認めた。 「ブルー・・・」 カズ達の側で茫然と立ち竦んでいるフレスコ執事の姿があった。 −−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−
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