CFM「空中分解」 #1323の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
(2)クリスマスの街角 その少年は、一心にショーウインドウの中を覗いていた。ガラスに両の掌をくっつ け、ガラスを押し割りそうな程に顔を押しつけている。歳の頃は十才くらいだ。 「いた! あの子だ」 カズはサファリジャケットの下に吊ったショルダーホルスターのパイソン三二オー トマチックのグリップを握った。普段は銃器を携帯しないカズだったが、今回の仕事 のため、特別に携帯許可を貰ったのだ。 しかし、その腕をノバァに押さえられた。 「お止し! 相手は子供だよ」と、ノバァ。 「だけど、普通の子じゃない」心なしか、カズの声が震えているのが情け無い。 「化け物だとでも言うのかい。あの子が化け物なら、あたしはさしずめ、ゾンビよ」 ノバァのグレーの瞳がカズを見つめた。端から見れば、仲の良い恋人達に見える。 だが、二人の関係は少しややこしい。 数年前までノバァはバハマ・シティで警官をしていた。その彼女は、ある事件で肉 体を失った。 同じ頃、カズの恋人のエレナが海で事故死した。エレナは酸欠による脳死だった。 二人を収容していた病院の医師はノバァの脳を摘出し、エレナの肉体に移植した。 ノバァは三十路を過ぎたおばさんだったが、二十一歳の若いエレナの肉体を受け継 いで若返ったのだ。 一方、カズはバハマ・シティのシティ・ポリスに、エレナの事故死の責任を追求さ れ、拘留されていた。それをノバァに助けられたのだ。 その後ノバァはバハマ・シティを離れ、ここ南太平洋上のアクアポリス「パシィフ ィック・クイーン」で私立探偵事務所を開業した。 以来、カズは彼女の事務所の助手兼雑用係をしているという訳だ。 日頃は気丈で、男勝りのノバァだったが、彼女の「ゾンビ」という言葉にカズはノ バァの心の中の葛藤を垣間見た気がした。 彼はそっとグリップを放した。 ここは、パシィフィック・クイーンの中央区の繁華街、東五十三番街だ。日はとっ ぷりと沈んで、夜の帳が訪れていた。 丁度クリスマス商戦真最中の街は、赤や緑のキラキラと輝くデコレーションで飾ら れ、通りを歩く人々の顔を照らしていた。 しかし、赤道に近いパシィフィック・クイーンでは雪も降らず、真夏と大差ない。 サーフィンをしているアロハシャツを着たサンタの大きな看板が人目を引いていた。 その看板の下で、少年が覗いているMarry X’masと書かれたショーウイ ンドウの中には、おもちゃが一杯、飾ってある。 昔ながらの熊や犬のぬいぐるみ、機械仕掛け、電子装置を駆使したロボット・ドー ル、本当に空を飛び、呼ぶと肩に止まって話相手になってくれるロボット・オウム。 着せ替え人形は喋るだけではない。立ったり座ったり、歩いたりポーズもする。紙に 描くのと同じように、空中に三次元立体像を描ける3Dパステル。派手な音と光を発 するレーザーガンなど、子供達の夢をかなえるものが一杯だ。 少年はそれらを食い入るように見つめているのだ。 「ただの子供じゃないか。どうして、あの子を怖がるんだい?」 「羊の皮を被った狼だよ」 「あんたは、どうして疑り深いのさ。じゃあ、行くよ」 「へっ?」 ノバァはスタスタとショーウインドウの前の少年の方に歩道を歩いて行った。 その時、背後からのバリバリバリという轟音に、二人は思わず振り返った。 乗り入れ禁止の歩道に一台のバイクが走って来た。エアー浮上式のホバー・バイク。 おさだまりの真っ黒なライダースーツにフルフェイス・ゴーグルの付いたヘルを被 った奴が乗っていた。 そのバイクは歩道を歩いている通行人を次々に薙ぎ倒していく。バイクは真っ直ぐ に二人に迫って来た。いや、ノバァとカズの後ろに立っている少年に向かっているよ うだった。 少年がショーウインドウから顔をバイクに向けた時、彼の目にライダーが構える銃 が映った。 カズが慌てて、ショルダーホルスターに手をやった。グリップを握って引き出そう としたが、銃の照星が引っ掛かってしまった。 カズがもたついている間に、ノバァの右手が腰に走った。 次の瞬間にはノバァの右手には魔法のように小型のバレンタイン・レーザー銃が握 られていた。流れるような身のこなし、上体は微動だにしない。右手だけが別の生き 物のように、コンマ何秒かで確実に動き、向かって来るバイクを狙う。 ノバァの人指し指がトリガーボタンを押す寸前に、真っ白い光の球体が現れた。 バイクはその球体に包まれていた。カズもノバァも目を手で覆った。 強烈な光は辺りを真昼のように照らしだした。シューというような音がしているだ けだった。二人の髪の毛が逆立った。その内パチパチという音も聞こえてきた。 真っ白い光の球体が二人に迫って来るのが、次第に大きくなるパチパチという音で 分かった。 カズは強烈な光の中に浮かぶノバァのシルエットに飛びつき、車道に転がった。 その横を物凄い熱波が通り過ぎていった。 ピッシャーーーーーーーーーン・・・・・・・。 雷が落ちたような音がして、光が消えた。 パッと飛び起きたカズの目に入ったのは奇妙な光景だった。 光が消えた後には、歩道の上に真っ黒な塊が転がっているだけだった。バイクもそ の乗り手も消えていた。周りに倒れていた通行人達が頭を振りながら、のろのろと起 き上がると、その黒い塊の側に集まって来た。真先に近寄った男が悲鳴を上げると腰 を抜かした。 黒い塊はバイクの残骸であり、その残骸には黒焦げの人骨がへばりついていた。肉 は高熱のために蒸発するか、一瞬で炭になって歩道に散ったらしい。 空気がピリピリしている。変な臭いがするのは、オゾンのようだった。 頭がガンガンした。ノバァも頭を押さえている。気が付くと、商店街の照明が全て 消えていた。 カズは手首のCB(コール・ブレスレット=マルチ・コミュニケータ)を見たが、 時刻表示の文字は見えなかった。CBのタッチキーを押すが、表示も変わらず、何の 情報も得られない。壊れてしまったようだ。 「ノバァ」カズが両膝をついているノバァに近寄った。 「なんだい、あれは?」と、ノバァ 「言っただろ、あの子は普通じゃないって」 「そうだ、あの子!」ノバァがすっ頓狂な声を出した。 既に少年の姿は消えていた。 ノバァとカズは少年の姿を求めて、商店街を見回した。 二人が少年を見失ったことに気付いた時、商店街から見える大通りを、目の覚める ような青い車が、一台走り去って行った。 −−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−
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