CFM「空中分解」 #1279の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
山椒魚が始めて秋本氏の作品を読んだのは、およそ6カ月前、パソコン通信 を始めてまもない頃である。その作品「秋本骨つぎ堂の逆襲」(変わる川崎) は、88・3・13という日付があるから胃潰瘍が進行して川崎の線路沿いの 道で嘔吐するほぼ2週間前にアップされたもので、いわば晩年の作品である。 秋本氏の1年にも満たない短い創作活動期間を前期と後期に分けると、前期 は「叫びのアイスティー」に始まるお笑いの文学、不条理の文学で、ウンコと いう言葉がやたらに出てくるが、後期になると、随筆風の「秋本骨つぎ堂」シ リーズ、「春雨の中の美幸」などの女性小説シリーズが中心になり、かなりま ともになっている。「春雨の中の美幸」は、古典文学の味わいさえ感じさせる 上品な作品である。 「秋本骨つぎ堂の逆襲」(変わる川崎)も秋本氏らしい軽妙な語り口ではあ るが、ルフロン(丸井西武)の誕生によって川崎が競馬新聞をにぎりしめたオ ッチャン達と買い物カゴをかかえたオバチャン達の街からカラフルな服装の若 者達の街に変貌する様をもの憂げに描写している秋本氏には、トレードマーク の歯歯歯という笑いさえなく、何となく体調の悪さを思わせる。 しかし、山椒魚は、(変わる川崎)を読んで、ある種のなつかしい情感がよ みがえってくるのを感じた。それは、競馬新聞をにぎりしめているオッチャン を観察している秋本氏の視線のせいである。そのオッチャンとは私のことでは ないか。山椒魚は、昔、川崎競馬に行ったことがあるのである。あの頃は、大 井町のアパートに住み、休みになると大井競馬に通ったが、大井競馬の開催が ない時は、川崎、船橋、浦和の草競馬をわたり歩いていた。 秋本氏は、競馬新聞をにぎりしめているオッチャン達を灰色の男達の群れと 言う。灰色の男達と言えば、ミヒャエル・エンデ原作の映画「モモ」に出てく る時間泥棒もそうだ。秋本氏は、モモのような特質をそなえているのだろう か。秋本ヨナではなく、秋本モモか。そんなバカな。 誤解だ。競馬のオッチャンは時間泥棒のような灰色の男達ではない。競馬S IGを覗けばわかるように詩人や哲学者だっているし、立派な人が多いのだ。 山椒魚は、秋本氏に逢って誤解をとく必要を感じ、まず大井競馬に行った。大 井競馬は近ごろはナイターをやっているし、生バンドの演奏もやっている。ギ ャルたちだって結構遊びにきているのだ。ギャルと知り合うチャンスはAWC よりはるかに多い。何もわかっちゃいないんだから・・・。 最終レースが終わると、観客が出口にあふれる。「大森、蒲田、川崎方面、 あと一人いないか」。乗合タクシーの運転手が叫んでいる。損をして、ビンボ ーになった客は、歩くかバスに乗るかだが、懐に余裕のある人は、乗合タクシ ーに乗る。もちろん、山椒魚はタクシーに乗り、「川崎だ」と渋い声で言っ た。大物ギャンブラーの風格である。 タクシーは、モースが発見した大森貝塚を通り過ぎ、蒲田行進曲のリズムに のり、アッという間に川崎はルフロンの前に着いた。この辺に秋本氏がいきつ けの喫茶店「閑古鳥」がある筈だ、キョロキョロ探すと、あった、あった、こ れが「叫びのアイスティー」の舞台となったあの有名な「閑古鳥」か、と都合 よく喫茶店が見つかり、「閑古鳥」の中を覗くと、さらに都合よく秋本氏が例 のジャンパーにサンダル履きのスタイルでアイスコーヒーを飲んでいる。快調 なペースだ。しかし、たとえ小説とはいえ、こんなに都合よく話を進めていい ものだろうか。 まあいいや、気にしない、気にしない、と山椒魚は、そのままつかつかと秋 本氏のいるテーブルに近づき、 「今日は、秋本さん」と言った。秋本氏は、読んでいた新書本から目を離して 山椒魚を認めた。たちまち顔中に広がる迷惑そうな表情。(歯歯歯)。 「何か用ですか」。 「私は、これでもあなたのファンなんです。そんなつっけんどんな言い方をし ないで下さい。今日は競馬で儲りましたから奢らせて頂きます。どうですか、 アイスコーヒーをもう一杯。何でしたら、コーヒーフロートでもいいですよ」。 「川崎にコーヒーフロートなんかある訳がないでしょう。イヤミだな。承知の 上でヌケヌケとそうなことを言う。だから年寄りはキライです。おまけにポケ ットからは汚れた競馬新聞を覗かせている。それ何とかなりませんか」。 「いや、秋本さん、私はあなたの才能を高く評価しているものですが、競馬に 対する偏見だけはイケません。その偏見を捨てたらもっと凄い作家になれる筈 です。今度、一緒に大井競馬に行きませんか」。 「あの灰色のオッチャン達の群れの仲間に入れというのですか」。 「オッチャンだけではありません。斉藤由貴やファンタスティック由貴みたい なギャルだって行っています」。 「ははぁ、ダメです。そんなこと信じません。私は競馬よりパチンコの方がい い」。 「そう言えば、秋本さんはパチンコで1万7千円も負けたりするそうですが、 パチンコは機械でしょう。パチンコ、ゲーム、パソコン通信、機械にかたより すぎです。馬のような動物を相手にした方がいいですよ」。 「動物なら馬より女の方がいい。歯歯歯。だいたい競馬をやる人は、女にモテ ない。女にモテないから代償行為として馬の尻をおっかけるのです」。 「まあそういう傾向は一概には否定できませんが、馬の疾駆する姿は美しいで すよ。あの躍動する尻、そしてでっかい・・・。あっ、思いだしました。今度、 AWCでK&D小説大賞を募集するそうですよ」。 「K&Dか、なつかしいな」。 「私は昨年はまだパソコン通信をやっていなかったのですが、聞くところによ ると、秋本さんは昨年のK&D大賞のうちの秋本賞を授賞されたそうですね」。 「ええ、「叫びのアイスティー」で。まあ当然の授賞ですね」。 「どうですか、今年も応募して、連続2年秋本賞授賞を狙ったら。どうも今の ところ、秋本賞をとれそうな有望な作家がいないんで、授賞作ナシになるんで はないか、とひそかに心配しているんです」。 「選考委員は誰ですか」。 「感想鬼、コスモパンダさんです」。 「ああ、あのAWCきっての秋本泣かせ。止めた。遠慮します。コッテンさん はどうしたのですか」。 「COTTENさんは、アメリカに留学しました。もうそろそろ2カ月になり ます」。 「そうですか。コッテンさんが留学とはねぇ。今ごろはホームシックになって 泣きながらオカーチャンと呼んでいるだろうな。歯歯歯。可愛そうに」。 「では、秋本さん、今日はこれで失礼しますが、K&D小説大賞の件、ちゃん とお伝えしましたよ。来週、またこの喫茶店に来ますから、その時までに考え ておいて下さい」。 「山椒魚さんもヒマな人ですね、窓際族なのではないですか、歯歯歯」。(続)
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