CFM「空中分解」 #1275の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
砂浜が騒がしくなってきました。腕章を付けた人が走り回ったり、トランシー バーとケンカをしています。 救助に来た男の人達にも、恥をしのんで捜してもらったのですが、一連の騒ぎ の間に潮に流されたブラはついに見つからず、えりなちゃんはバスタオルで武装 して上陸せざるをえませんでした。 ……救急車の出す異様な音が、砂浜に反響しています。それがふいに切断され ると、白づくめの救急隊員が担架をかかえて飛びだし、集中する視線と追いかけ っこをするように、砂浜に生まれた人だかりに向かって走りだしました。 おや、救急隊員さんと並んで、血相を秒単位で激変させて走っている男の人が あります。それは、えりなちゃんのおじさん……そう、「博士」です。 救急隊員を根性で追い抜いて、血液の温度を上げたり下げたりしながら黒山の 人だかりに体当り。 「どけ! どけ! どけ! どけ! どけ! どけ! ああっ、えりなちゃん生 きてたかあ! いやあ良かった! 一時はもうどうなる事やらと思った。実はあ の薬、《水溶性》だったんだ! 分子構造を見直しててね、心臓と脳みそが入れ 替わるほどびっくりしてさ、そしたらちょうどサイレンの音が聞こえてきたじゃ ないか。いやぁもう、いやー、たまげたのなんのって。マジでびびったよ! 泳 いでてさ、沈んだろ? 途中でぶくぶくって。びっくりした? いやーごめんご めんごめん、この通り。おわびに今度、別の薬……あれ? 誰だこの子。友達?」 そこまで一息でもってわめいたおじさんでしたが、そこでギョッとする事にな ります。最初はぽかーんとしていた姪の表情が再編成をはじめ、ついには彼女は 泣き顔で笑いだしたからです。 女の子は二人とも意識ははっきりしていましたが、念のため検査を受けに、救 急車で病院に運ばれました。そして、疲れが取れるまで泳がないように、これか らは泳ぐ前に準備体操をするように、どいう注意を受けて、一応の無罪放免とな ったのでした。 その後、何分くらいで薬の効き目が切れたかを中心に、おじさんに事情をしつ こく聞かれましたが、えりなちゃんはなかなかうまいこと説明できません。 「ふむ、要するに、浮き薬のおかげで泳げるようになった訳か」と事態を四捨五 入して納得するおじさんから、ゆうこさんに視線を回転させました。 前にまわせば胸にまでとどく髪の毛を、後ろで結んだポニーテール。深みのあ る瞳。けぶるような微笑。真珠色の肌。第二次性徴の出だした、ゆるやかな曲線 でふちどられたスタイルの持ち主は十五歳。ちょっとコンプッレッックスさえ感 じます。 「えりなさん、ありがとう。あなたのおかげで助かったわ。命の恩人ね」 「そんなぁ……あたしこそ、ゆうこさんがいなかったら、今ごろは水ぶくれのド ザえもんになってたわ。ゆうこさんがあそこにいたからこそ、あたし必死になっ たんだもん。泳げるようになったの、ゆうこさんのおかげ。ううん、むしろゆう こさんが、わたしの命の恩人よ」 おじさんが割って入って、二人の肩に手を回します。 「じゃあ、お互い様という事にしておこう。ゆうこちゃんは足がつってさんざん 水を飲んだ。えりなちゃんはブラをなくした。僕は実験……いや苦労して作った 浮き薬が失敗に終わった。これこそまさしく三方一両損という訳さ。さて、では お嬢様方、おじさんと『レストハウス浜潮』で、食事にでもつき合っていただこ うか。今日はどうやら、記念すべき日になりそうだからね」 そう、今日という日は、三人にとってこの夏最良の日となる事でしょう。ゆう こさんは溺れる所を助けられ、えりなちゃんはカナズチを卒業し、博士はレスト ランで両手に華。 夏という紙に、偶然というインクで印刷された楽譜。それに友情という音符が メゾフォルテで書き込まれたのです。何とおめでたい事でしょう。 潮騒が聞こえます。フェスタ・ブルーの空が、トゥワイライト・オレンジに変 わろうとする微妙な時刻。いずれ人はここを去り、変わって木枯しが訪れましょ う。 でも、友情は続きます。いつの時代も、姿を変えて、いつまでも。 ひと夏の一日に乾杯! <おわり
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