CFM「空中分解」 #1125の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
(6)集 結 手足が重い。目を開けてみた。ぼやっとして何も見えない。 ひょっとしたら、失明したのか! そんな恐怖が、体内に多量のアドレナリンを放 出させたようだ。身体がしゃんとしてきた。それにつれ自分の生臭い体臭が匂うよう な気がした。まだ、そんな日ではない。 再び目を開くと、今度はぼんやりと光が見えた。 仰向けに寝ころんでいるらしい。上体をゆっくりと起こした。 鉛でも飲んだかのように身体が重い。ズキッという鈍い痛みが全身に走る。それに 頭もズキズキしていた。二日酔いの朝にも似ている。 背中がゴリゴリする。 「つっ!」 身体を支えた掌に鋭いものが食い込んだ。岩のようだ。 やっとの思いで身体を起こした。 落ち着くと、辺りの様子が次第にはっきりしてきた。 天井は低く、あちこちから水滴がポタリポタリと滴り落ちていた。足元は濡れてい た。ぬるっとした掌の感触に、彼女はぞっとした。掌を見ると、それは海草だった。 どうやら、洞窟の中らしい。彼女が投げ出している足の方から薄明かりが差し込ん でくる。 その同じ方向から、ピチャピチャという水音も聞こえてくる。 磯の臭いがする。 彼女は、ガタピシと音を立てて抗議する身体に鞭打って、立ち上がった。 その途端、いやという程、天井で頭を打ってうずくまった。 目から火花が出た。 「ヒトミさん、どじだなぁ〜」 呑気な声が聞こえてきた。 「本当だ。もっと注意深いと思ってたのになぁ。イメージ崩れたよ」 その声には聞き覚えがあった。 「リー、ケン。二人とも無事なの!」 頭を襲った激痛と、二人の少年の声が、ヒトミの記憶を一気に呼び覚ました。 十メートル程先に進んだ所が洞窟の入口らしい。光が波で反射してゆらゆらと動い ている。その光の中に、ノッポとチビの二人の少年の影が立っていた。 ヒトミは身体を前屈みにし、洞窟の出口に歩いて行った。素足に、尖った岩肌が食 い込む。 洞窟は入口が近くなるにつれ、天井が低くなっていた。それに、足元が次第に水面 下に没していった。膝まで海水につかったヒトミは、ようやくリーとケンの二人の顔 が見える所まで辿り着いた。 「リー! ケン!」 ヒトミは二人に飛びつくと、おもいっきり抱き締めた。 「良かった。無事で……。本当に良かった……」 「ヒトミさんて、感激屋なんですね。大袈裟すぎますよ」 と、ノッポのリー少年はヒトミに抱き締められて、少し照れ臭そう。 「ヒトミさんて、思ったよりグラマーなんだな。オッパイでかいもん!」 ヒトミの白い水着の胸の谷間に顔を挟まれた幸せそうなチビのケン少年。 「あたっまにきた!」 ヒトミは二人を突き飛ばした。 「なによ! 劇的な再会シーンなのに。もう少しドラマチックな台詞はないの?」 「まあまあ、そう怒らずに」 「一体、誰の御陰でこんな騒ぎになったと思ってるの!」 これが所長の息子でなかったら、張り飛ばしてやるのに! ヒトミの煮えくり返った腹の中を知ってか知らずか、ケンは呑気そうに両手を頭の 後ろに組んで立っていた。 「ケン、イーとローはどうしたの?」 「ローは、どっかに行っちゃったよ。イーを置いてさ」 「どういうこと?」 リーは少しマジな顔に戻って、ヒトミに頷いた。 洞窟の外に出た。既に日は登っていた。空には雲一つ無かった。 予想通り、ここはヒトデ島だった。 『海が黒くなった』時に、ヒトミとリーのモーターボートがバラバラになり、二人 はこのヒトデ島に流れ付いたのだ。 二人に連れられてやって来たヒトミは、ヒトデ島の海岸線沿いの浅瀬で、キューキ ューと鳴いているイーを見た。 イーは死にかけていた。 イーの身体には、無数の傷が付いていた。まるで、鋭く尖った櫛で皮膚をすかれた ようだった。ささくれたようになった皮膚は、細いリボンのようになって垂れ下がっ て、深い溝がイーの身体に縞模様を作っていた。 「一体、どうしたの?」 「イーは、『黒い大きな奴』にやられたんだ」 ケンがポツリと呟いた。 「何のこと?」 「ヒトミさん、あれだよ。あの『海が黒くなったあれ』のことだ」 彼女の脳裏に、横長の洞窟の中に生えた鋭い牙が浮かんできた。 ★ ★ ★ 「お前に来てもらって助かったよ」 鼻髭が似合う後藤隊長は、ヘリの操縦稈を握りながら、西田に話し掛けた。 「人探しじゃなしに、何を調べろって言うんだ?」 西田は少し不機嫌だった。 明け方、沿岸警備隊のヘリが、研究センターの庭先に降りたと思ったら、警備隊員 が西田にヘリに乗ってくれとやって来た。訳も分からずヘリに乗ったところで対面し たのが、かっての悪友、後藤という訳だったのだ。 息子のケンの消息が分からずに苛々している西田を後藤は強引に連れ出したのだ。 「もうすぐだ。この先の海域で君に見てもらいたいものがある」 「なんだ?」 「分からんから、お前を連れて来たんだ」 ヘリはヒトデ島の南東沖五キロに到着した。その海域では、幅数百メートル、長さ 数キロに渡って、海が真っ白に見えた。 「隊長、あれは、イルカの群です。物凄い数の……。一万はいるかも……」 双眼鏡を覗いていた隊員の一人が報告した。 次第に降下するヘリの開いたドアから、西田は身を乗り出すように海を見つめた。 夥しいイルカが、海面で跳ねていた。種類も数種類はいるだろう。 イルカが飛び跳ねる水飛沫が、海面を真っ白に見せているのだ。 「イルカの群れってのは、こんなに大きかったっけ?」 「ヒトミの話だと、沖合に生息するイルカは一千頭以上の群れを作るという。しかし 普通は、幅数メートルから数キロ、長さも数十キロと広範囲の群れだ。こんなに複数 の種類のイルカが密集した群れは聞いたことがない。ヒトミがいればなぁ……」 「あれは、なんだ!」 後藤が指差した白い海域の側の海が、黒墨でも流したようになっていた。 −−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−
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