CFM「空中分解」 #1079の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ラムラウス城は、ちょっとした騒ぎとなっていた。反乱軍を名乗る輩に第二王女の バルバーラをさらわれたばかりでなく、その姉であるリブラルタ王女まで姿を消して しまったのである。城内ではいろいろ不吉な噂が流れたが、その中で一番冷静だった のはラムラウス王その人であった。 「いずれ、時が来ればリブラルタには真実を打ち明けねばならん。が、そのことで 彼女を傷つけてしまうよりは、いっそのことこのまま……」 王はそうつぶやいた。真実… それを知るのは王とごく限られた一部の者だけであっ た。が、少し前、それは噂として街中に広まったことがあった。 誰が広めたか、それはわからなかった。明るく快活なリブラルタにあった唯一の悩み も、その噂によるものだった。 「もしかしたら、リブラルタはそのことに感づいているかも知れない……」 王はそう考えると、心を痛めた。 外は嵐であった。 * 嵐は突然やって来た。空がにわかに雲で覆われたかと思うと、激しい雷雨がリブル たちを襲った。 「きゃっ、どこかにかくれなきゃ」 「あそこに洞窟がある。とりあえずあそこへ逃げよう」 岩山のような所にラックスが洞窟を見つけた。中に入ってみると、それはかなり深そ うな穴だった。 「気味悪いわねぇ」 ステリアが奥を見て言った。ふと、リブルが何かに気付いたように言った。 「ねぇ、奥に行ってみようよ」 「冗談だろ。第一、俺達には時間が無いんだ。妹の命がかかってんだろ」 「でも… この中に、何かがある。少なくとも、私たちに必要な何かが」 「女の勘ってやつか」 「リブル、そんなに言うなら行ってみようよ。こんな奴ほっといて」 ステリアは何かにつけてラックスにつっかかる。 「わかったよ、行けばいいんだろ」 ラックスもしぶしぶ同意する。 かくして、リブルたちは洞窟の奥へと向かった。暗闇の中、一行はできるだけ慎重に 歩いていた。が…… 「きゃああっ!!」 急に前の道が途切れているのに気付かず、リブルたちは転落してしまった。 しばらくの間、リブルたちは気を失っていた。最初に気配に気付いたのはラックス だった。 「おい、リブル、ステリア、…大変だ」 「う… うん… えっ!?」 目を醒ましたリブルとステリアが目にしたのは…… 見るもおぞましい、巨大な蜘蛛 の群れであった。それらはこの日も当たらぬ洞窟の中で、飢えのために殺気立ってい た。今にもこちらに襲いかかりかねない。 「どうする?」 「どうもこうも、戦うしかないじゃない」 「まったく、リブルが変なことを言い出すから!」 ラックスが憎まれ口をたたきつつ、剣を抜いたのと同時に、蜘蛛たちは動き出した! リブルも腰の剣−緑色に透き通る、エメラルドの剣を鞘から抜いた。 「リブル、その剣、本当に大丈夫なの? 何かうす気味悪いわ、それ」 「まかせなさい、私の目に狂いはないって」 と、その時、大蜘蛛の一匹がリブルに踊りかかった。 −刹那。 リブルの剣は巨大な蜘蛛を真っ二つに切り裂いていた。まるでその剣に 神の力が宿っているのかのようであった。 「すごい……」 リブル自身、この剣の威力に驚いていた。 そしてリブルは切り裂かれた蜘蛛に目をやった。その無残な死骸を見て、リブルは 目をそむけた。やはり女の子である。 −そのすきに、一匹の蜘蛛が、その糸でリブルを捕まえた! 「キャーッ、助けて! ……」 リブルは気を失いそうになった。ラックスがその糸を断ち切ろうとしたが、まるで 歯が立たない。 「ステリア、お前の魔法でなんとか……」 が、その時ステリアまでが悪魔の糸にからめとられた! 「いったいどうすれば……」 ラックスはなす術もなく、ただ右往左往していた。 リブルはいいようもない恐怖感にとらわれていた。もう魔物の口は目の前まで来てい た。 「もうだめ…… こんな所で… 死ぬなんて……」 リブルがいよいよ観念しようとした時、それは起こった。リブルの体が光となり、 光はみるみる巨大化して、形となった。その光がおさまった時、そこにあったのは… 一匹の、真紅の竜だった。その体は怒りと恐怖に燃えるような赤に染まっていた。 「リブル… いったい……」 ラックスは呆然と、その様子を見ていた。 ドラゴンは、何かうめくような声を出すと、炎を吐いた。その炎は醜悪な蜘蛛どもを 焼き払い、ステリアをその束縛から解放した。 ドラゴンがステリアを見た。その時、ステリアが口の中で何か唱えると、ドラゴンは 再び光となり、凝縮して一元の姿に戻った。 「何だ、ステリアがやったのか?」 「違うわ、私は元に戻しただけ……」 リブルは、地面に座り込んで、頭を抱え込んだ。もはや、彼女自身の知らない所で 運命の歯車はまわり始めていた。 「私は… 私は、いったい… 誰なの…… ?」 ステリアとラックスは、ただ彼女を見守ってやることしかできなかった……。 つづく………
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