CFM「空中分解」 #1070の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
私はそのとき、第3者によるこの状況の打破を祈っていた。清山さんの存在自体が私 を苦しめていた。一方では先輩としての純粋な感情、他方では今日3年生全員に打ち明 けた『大判定』による部からの除名策……… 『大判定』というのはこの部活には古くからあったものである。つまり、部がいきづ まった時や重大決定をするとき、3年生全員が陪審員になり、その時点の部長がとうや り方なのである。 そして、5年ぶりに今日開催されることとなった『大判定』の議題は、後輩清山の除 名に関することであった。 ある日の事であった。文芸部をしていると、いきなり図書室に北川君が現れた。彼は 人形劇部のリーダーである。後輩が兼部する事はこの人の承諾をもって出来たのだが、 あまりいい感情は持っていなかった。 その時もいきなり現れて「おい、そちらの部長!!約束が違うでないか!!」と口火 を切った。またか、と私は内心思っていた。 実は文芸部が発展するにつれて部活動があちらさんと妙にかちあってしまう事態。前 までは中柳さんを通じての苦情であったが、今日は本陣直々の出陣といったところなの だろう。 「何が、だね。」 「この間、中柳さんと清山が大幅に部活に遅れてきたのだ。聞くと文芸部に出ていたと いうではないか。活動にかちわらないようにするというのが約束のはずだ!」 「それはすまなかった。」私はこの件にかんしては恭順の意向を示していた。彼ら人形 劇部の練習は全員が揃わなければ出来ない。これに対して我々はどのような形態も取れ るために、こちらがあちらに譲るのが人情。 「すまないではすまない。部活の自由を侵害されたのだ。生徒会を通してしかるべ き処置を頼むしかないな。」 「………」 この時、北川君はあまりにも感情的になり過ぎた。そして…… 「私達のような部活こそが優先されるべきなのだ。謹んでくれよな。」 「ちょっと待った!」増田君が爆発した。「書類上では中柳さんはこちらに先に入っ たことになっている。これまで譲歩してきた事を忘れての発言ならば、即刻そちらの部 を辞めて純粋文芸部員としてもらおう。そして、もう一つ。文芸部が活動していないと 思ったら大間違いのコンコンチキだ。それこそ全国規模のPC−VAN SIGアマ ュア・ライターズ・クラブというところに参加しているのだ。自分だけが偉いとおごれ るな!!」 「何を!!」 「何をもへちまもあるもんか。喧嘩売っているなら買ってやろう!」 「やめろ、増田君!」 「ハシモッチャン大丈夫だ。喧嘩ってぇものは勝敗でないんだ。うまい奴はな。これで けりをつける。そういうものなのだ。シコリを残るようなものは喧嘩とはいわねぇ。」 「図書室だ。それを考えろ。」 「………暴力的だな。」 「テメェみてぇなのが腐ったみてぇにシコリを残すタイプなんだ!」 瞬間だった。増田君の素早い左足の動きが影で見えたかと思うと、北川君がドテェー ンと転倒した。柔術の足払いの応用だった。私が立ち上がったときには増田君は北川君 の手を持って彼を立たせていた。 「ということで、人形劇部のリーダーさん、またのおこしをお待ちしています!」 増田君のあけるドアから彼が真っ赤に怒りながら出ていったのはいうまでもない。 私は決心した。 「座って話そう。」 彼女はこくんと肯き、しかしそれでも動かなかった。私は隣の椅子を引いた。 「どうぞぅ〜、橋本クラブエンペラーの隣の特等席でございます!」 こだわっても仕方があるまい。それに私は……… 彼女は少し笑みを浮かべて腰を下ろした。 少し、私は眺めた。最初にあったときとさして変わりはなかったが、その目は不安に 怯え、ふっくらとしているはずの頬は僅かながら色を失っている。後ろで束ねた髪も疲 れたように乱れている……… 私はこの人に除名をせまっていたのか!部の事があるからと言って!! 「先輩………本当に………すいませんでした………」 その時私は粉砕された。そして再結晶されたものは、迷いなく純粋な気持に変わって いた。そして、それにそって行動するのはすごく自然なことであった。 増田君との1戦の後、今度は人形劇部で中柳さんと1戦あったということが耳に入っ た。あの気丈な中柳さんが泣いて飛び出していったとの事だった。 「まったく、すまないことを………」 それから文芸部に対する北川君の感情は激化してゆくばっかりだった。何故にそんな に目の仇にするのかと思うくらいに……… そして、いつの間にか清山さんが人形劇部にまったく出ていないという事が分かった 。私は中柳さんと一緒に注意したが、『いやだ!だって文芸部に………いたいのだも』 といってきかなかった。でもまぁ、渋々行かせることに成功はした。 私はその時、思い立ったのだ。 残念であるが清山に辞めてもらうしかないと。 「言って、ごらんよ。」 「………せ、せんぱぁ〜い………」 グズ、グジュ………ジュ………ズ…………グジュ………… 彼女は破顔していた。が、私の目を見続けて必至に言葉を続けようとしていた。次の 言葉が出てくるまで、私は永遠の時の流れを感じる思いだった。 「今日、放課後『大判定』を開くよ」 「え………まさか!」 「きてくれよ。今日ばっかりは、人形劇部も休んでさ。」 「ねぇ、考え直してよ。私がなんとかするから!!」 「もうそんな悠長なことはいってられないんだ!7月に入る今、3年がクラブにいら れるのは僅かなのだよ。人形劇の方にしたって、こっちにしたって時間がないんだ!」 「でも………」 「何がなんでも今日、決着を付けるよ。」 「橋本君………」 「じゃ、マスッサンやオイチャンに伝えておいてくれよ。」 「………違うのよ………」 私は最後にいった彼女の言葉が理解できていないまま、立ち去った。 . ツヅク!
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