ＣＦＭ「空中分解」 #1050の修正
★タイトルと名前
★内容（1行全角40字未満、500行まで）
佐々木洋介は啓介の告白をニヤニヤ笑いながら聞いていた。そして全身創痍の啓介 が全て吐き出すとこういった。 「とうとう吐いちゃったわね。次は靴下が待っていたのにね」 だらしなく全ての秘密を吐いてしまったことに憤りを感じていた、これまた精神的 苦痛に喘いでいる峯川は佐々木洋介の言葉を聞いた今、啓介のしたことが正しいよう に思えてくるのだった。 「お、俺たちをどうするつもりだ！！」 「あなたたちそんなこともわからないの？ あなたたちは人質になって『物体復活爆 弾』との取り引きに使うにきまってるじゃないの」 「‥‥‥そんなことはさせないわ」 峯川はつぶやいた。そのつぶやきが聞こえたのだから佐々木という男ははよほど耳 がいいのだろう。佐々木はこういった。 「あなた・・・ちょっと可愛いからって生意気よ。身の程をしりなさい」 そういいながら靴下に手を掛けたその瞬間！ 爆音とともにあの懐かしい軽トラッ クがぶっとんできた。どうやら「ナイトライダー」張り‥‥‥いや「アップルコンブ レックス」のカーマイン張りに人工知能を持ったコンピュータを積んでいるらしい。 軽トラックの外部スピーカーから合成音が聞こえる。 『はっハッはっ、残念だっタね明智クん』 ‥‥‥どうやら性能はカーマインには遥か及んでいないらしい。 「なんなの？ あなた、人の家に土足で上がり込むような真似して」 屋外なのに人の家もあったもんじゃないが、そこはまだ未完成のコンピュータ。人 間様でも難しい日本語を簡単に理解できるはずがない。 （されてたまるか） 『ワタシは人工知能内蔵型コンピュータ、製品番号ＣＯＴ−１０、製品名【まなぶく ん】というモノだ』 「ふん、それがどーしたっていうのよ。だいたいあなたなにしにきたのよ？」 『・・・皆ボクのコとを忘れテいるかラ散歩してタのだ』 どうやら人工知能も間抜けに性能がいいものは退屈も感じるらしい。こんなとこを 人間に近くしても仕方ないと思うのだが、そこは神田川博士の意地であろう。 しかし佐々木洋介は露骨にいやな顔をした。 「じゃぁさっさと散歩を続ければいいじゃないの。とにかくどいてよ。はっきり言っ てあなた邪魔よ！」 『ワかッた』 そうスピーカーで告げると軽トラックの【まなぶくん】は爆音をたて闇夜へと姿を 消した。 「まったく、最近のコンピュータってデリカシーがないから嫌ね。あら？ あの二人 組は？」 そのころ「あの二人組」は軽トラックのなかにいた。 どうやら佐々木洋介と【まなぶくん】がやり合っている最中に車の中へ潜り込んだら しい。 「ありがとう、【まなぶくん】 おかげで助かったわ」 峯川が礼を言った。すると【まなぶくん】は電子音を軽くならし言った。 『アれ・・・あンたたちなに？』 どうやら【まなぶくん】は啓介と峰川のことなど気がついていなかったらしい。 「・・・ま、いいわ。とにかく神田川博士の所まで翔んでって」 どうやら教育途中の軽トラックは、誰の命令でも聞くらしい。峯川の命令にも考え もせずに従った。 「ここまでの話を整理してみようじゃないか」 宿に戻った峯川と啓介は安らかに眠っていた神田川博士と大男、そして露木教授ま で叩き起こすと無理矢理討論に入った。 もちろん啓介の心の中には （アレほど惨めで悲惨な思いをしたのに気持ちよく眠りやがって・・・） という他意があったことは否めない。 啓介は話を続けた。 「まず、物体消失爆弾関係を奪い返すために我々はここまできた。しかし・・・この 展開はいったいどーゆーことだ？ え？ 真リレーＢのメンバーは主人公がいったい 誰だか知っているのか？ 俺は八丈島にきていったい何をしたっていうんだ。もう一 度だけ言っておく。主人公は峯川くんじゃなく、頭のいいこの俺だ！」 啓介が吠えた。しかし神田川様御一行は耳も貸さないでいる。 いや、正確に言えば啓介と下にある峯川たちの話は同時進行していたのだ。 「そーいえば博士、あの【まなぶくん】てなんなんですか？」 峯川が質問した。 「ゴホっゴホ。あれはワシが試作したコンピュータじゃよ。けほけほ。『よく学ぶ』 という願いからつけたのだが・・・ごほっごほっ。どーもな」 「でも助かりましたわ」 「そうじゃろう、そうじゃろう。ゲホッ。なにせワシが作ったものじゃからのう。 お、そうじゃった。さっき本社ビルを呼び寄せておいた。そろそろ着く頃だろう」 突然話題を変えた神田川博士の言葉を証明するように、あの軽トラックとは比較 にならないほどの爆音が八丈島を揺るがした。峯川が窓をあけると、見慣れた本社 ビルが今、まさに着陸する寸前であった。 そして着陸したと同時に窓に明かりがつき、ネオンサインで表示された文字は・・・ 「【到着】」であった。 あ、忘れていたが啓介の話はまだ続いているみたいだ。 ＜つ・づ・く＞
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