CFM「空中分解」 #1045の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
『始めにこれは一少年がとある説をもとに、 設定し直して書いたものであり、 史実とは違うことを書きしるす。』 『竜・馬・暗・殺』 By Gakusyu Hisui 1988/6 冬なのに、糸のような雨が降っていますねぇと、近江屋のおかみさんが竜馬の部屋に 入って来た。竜馬はうんうんと肯いた。彼は例のボウボウの風貌で火鉢を抱いていた。 2,3日前から体の調子が良くない。今日も便所へ行くときに倒れそうになったばかり だった。 「勝先生も大変よ。」 え、なんでございますか。いや、なんでもない、ただの独り言。まぁ、坂本さんでも 独り言をいうのですか。当たり前だ、俺だって多少は悩む。多少はねぇ……。 この時彼は通常のアジトである裏手の土蔵より、便利な二階が良いということで移っ ていたのだ。 蓑を身につけ、笠を深く被った男どもが近江屋の前に現れた。一同、肯きあい、戸を 叩いた。薩摩藩藩邸よりやって来た武士達だった。 藤吉という、坂本の下僕が出た。相手は、十津川郷士です、ぜひ坂本先生にこの混沌 とした世の中のこと御教授願いたいので取りつぎ願う、と言った。藤吉は、面識のない 奴らだと思いながらも、取りつがねば分からないな、と判断した。少々お待ちを、と言 って二階に上がっていった。 坂本、二階にあり!! 暗殺集団は二手に別れた。一つは階下の人間の騒ぐのを止めるのと防備、もう一つは 暗殺実行である。いずれも西郷の御前でねりにねられた作戦通り。 まず、二階に駆け上がり、藤吉が振り返る間も与えず背中になまくらの刃を浴びせた 藤吉が絶叫しようとしたその時、首の横から突き刺し、のどに穴を開けた。これでまと もには喋れない。さらに次の瞬間、腹部に三太刀浴びせた。そして、その下僕はそれで 良いと、彼らはした。 ドタリ!という音がしたので、またどうせ藤吉が暴れたのだろうと、竜馬は思った。 彼は背面からした音に 歩たえな!(騒ぐな)と一喝した。が、たんが絡んでガラ声 なってしまった。おかみさんは、風邪はやっかいなものです。命取りになりますからね ぇ、と言った。 彼らは、竜馬自身の居場所を知った。 バァーンと襖が飛び、現れたのが男三人。竜馬は反射的に床の間の方へ横っ飛びした が、間に合わない。背中に暗殺者のきらめく鋭利な物が入った。一人が火鉢につまずい た。おかみさんが悲鳴を上げた。 「うるさい」 彼らは女の首を掴み、バサリと落とした。首からドバァーと血が吹き出し、あたり一 面が真っ赤となった。そのとき、竜馬はようやく刀を手にしたところだった。振り向き 様に刀を抜こうとするところへ、上から猛烈に振り下げるのが襲った。 グワァァァン 竜馬の手に凄まじい衝撃が伝わったのと同時に、彼が両手で真一文字に構えた刀に奴 らの刃がかかった。その瞬間、鞘がベキベキベキという音を立てて吹き飛び、暗殺者の 刃は自らの衝撃によって、大きく曲がった。 相手はさらに、押し下げた。竜馬は先程の傷から風が入り込むような感覚に襲われ力 が出なかった。 ザク 竜馬の額から熱いものが流れた。暗殺者のもう一人が続け様に左肩に見舞った。竜馬 の鎖骨が折れた。肩からは面白いように血が吹き出した。竜馬の体は、みるみるうちに 染まってゆく。しかし、この場に及んで彼は超躍進した。 スッと立ち上がるや否や、電光石火のごとく刀をふるった。瞬時に彼ら暗殺者どもの 手に激痛が走った。みると、親指が無い。そこから、タラリタラリと血が流れでている のである。これぞ北辰一刀流奥義指切りである。これで相手はまともに刀を持つことは 出来ない。 そこで竜馬は、刀を投げた。 びっくりしたのは暗殺者である。持ちようのない刀をふらふらさせて、彼を囲んでい る。そんなのにはお構いなしに、彼は窓を開けて、そこに腰を下ろした。額に手を当て 、手に付いたものを見た。血に白いものが混じっていた。外は、落ちてくるのではない かというくらいの低い雲がたち込め、シトシトと雨を降らせていた。 「俺がいなくとも、晴れの日はきっとくる」 彼はそういって、静かに目を閉じた。33歳。 そのとき下から、今やってきた中岡慎太郎の声が轟いた。真っ赤に染まった障子を見 れば、往来にいても何が起こったかは分かる。 「俺は脳がやられている。もう、いかん」 そして、微笑して、永久に黙った。雨が少し強くなったようだった。 .
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