CFM「空中分解」 #1032の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
啓介と真紀は、大阪城の近くのステーキハウスで食事をとった。もうどうに でもなれ、とヤケを起こした啓介は、ビールをガブガブ飲み、400グラムの ステーキにかぶりついた。サイフにはほとんど金は残っていないし、給料も貰 えそうもないが、後は野となれ山となれだ。 食事が終ると、睡魔がおそってきた。無理もない、昨夜は一睡もしていない し、今日は朝からおかしな事件にまきこまれて、休むヒマもなかった。 「真紀ちゃん、俺、もう限界だ。車の中でちょっとだけ寝るから、ヒザをかし てよ。それから子守歌を歌ってくれないかな」 「何を甘えたことを言ってるのよ。寝るんだったら勝手に寝ればいいでしょ。 子守歌ならラムに頼んだらいいわ。あなたが寝ている間、ウチハ大阪城デモ散 歩シテクルッチャ」 横浜育ちの真紀は、大阪城を見物したことがなかったが、学生の頃から歴史 には関心があり、特に関ヶ原の戦から大阪城落城までの豊臣家滅亡のドラマが 好きだった。気の強い真紀にとっては、大阪城の女主として君臨した淀君は、 とても魅力的な存在だった。自分が淀君になり、城内の男どもをヘイコラさせ ることを想像するのはとても楽しいことだった。 想いにふけりながら大阪城の中を歩いている途中で、真紀は、ふと異様な殺 気を感じた。天守閣のあたりで凄まじい死闘が演じられているような気配があ る。真紀は、目をこらして天守閣を見上げた。たしかに何かが起こっている筈 なのに、真紀の目には何も見えない。やがて、殺気は消え、天守閣のあたりに 平和が戻った。何だ、気のせいか、と真紀はつぶやいた。 「真紀さん」。誰かが真紀を呼んでいる。 「え、誰?」、真紀はあわてて目をきょろきょろさせた。 「すみません。こちらまで来て下さい」。その声の主は、どうやら大きな樹木 の蔭にいるようだった。真紀は、その樹木の背後にまわり、思わず息を呑ん だ。そこには、一人の美しい少女が素裸で立っていたのである。 「あなたは、たしか・・・霜村麻衣子さんだったわね」 「朝お逢いした時は、そういう名前でしたが、今は、霜村麻子です」、と少女は恥ずかしそうに顔を赤くしながら言った。 「どうしたの。アルバイトでヌードの撮影でもやってるの」 「そんなんじゃないんです。デバガメ三世のことはご存じですか」 「ああ、あのいやらしい偵察衛星ね」 「ええ、その偵察衛星にクローデルという新しい機能がつけられたのです」 「何、そのクローデルって」 「特殊な衣類消去装置です。その機能のために、私の衣服はすべて透けて見え るようになったのです」 「エェ!」真紀は、あわてて自分のミニスカートに目をやった。大丈夫、スカ ートはちゃんとはいている。 「真紀さんにはクローデルは、ききません。今のところ被害にあっているのは 名前に衣という字がつく女性だけです」 「では、NHKの大河ドラマ<武田信玄>で南野陽子が演じている湖衣姫もそ うなの」 「そうですね」 「ナンノ、かわいそう!クローデル機能をつけたのは誰かの仕業ってワケ?」 「マーチン西崎という新興宗教の教祖で、デバガメ三世をコントロールしてい る男の仕業です」 「どうして、その男があなたにそんなヒドイことをしなければならないの」 「西崎とその一味は、陰謀をたくらんでいます。その陰謀を成功させるには私 が邪魔なのです。私だけではありません。彼らにとっては啓介さんも真紀さん も邪魔です」 「どんな陰謀なの」 「一つは、木本商事を乗っ取るという陰謀です。あなたたちは、大阪支社で松 村という部長に逢ったでしょう。実は、あの松村も一味なのです」 「だから、露木クンが遅刻せずに出勤したことを認めなかったのね。それじゃ 東京の建物を消したのも彼らの陰謀なのね」 「木本商事の東京本社を消す、というのが彼らの主な目的でした。木本商事以 外の建物が飛んだのはオマケです」 「西崎は、東京の建物をすべて飛ばすだけの凄い超能力を持っているの」 「西崎にはそれほどの超能力はありません。せいぜい、デバガメ三世や名古屋 城や自衛隊の一部をコントロール出来るだけです。東京の建物を飛ばしたのは 西崎の力ではなく、淀君の怨念です」 「うそ!」 「ほんとです。約400年前、徳川家康にダマされて大阪城が落城した時、淀 君は凄まじい怨念のエネルギーをこの大阪城のどこかに残して死んだのです。 西崎は、きっと淀君の怨念のエネルギーのありかを見つけて、東京の方向に向 けて爆発させたのでしょう」 「ヒドイわね」 「大阪の人間からすれば、400年前の仕返しに過ぎません。本来なら日本の 首都は、東京ではなくて、大阪なのですから」 「でも今、東京に住んでいる人たちには何の罪もないわ。ねえ、麻子さん、そ の西崎という奴を何とかしてやっつけられないかしら」 「そうですね。そのためには、柳生の里に行って下さい」 「柳生? 何故、そんなところへ行くの」 「柳生には木本商事の先々代の社長で、今は相談役になっておられる木本十兵 衛さんが隠居しておられます。もう90歳の老人ですが、とても元気なかたで す。啓介さんが遅刻しなかったことを知れば、とても喜ばれるでしょう」 「露木クンの目的は、それで達成されるという訳ね」 「ええ、でもそれだけで満足しないでほしいですね。十兵衛さんと相談して、 木本商事乗っ取りの陰謀を覆し、デバガメ三世を破壊し、西崎をやっつけて頂 きたいのです」 トゥデイの中で啓介はいつもの夢を見ていた。初恋の美しい少女とのロマン チックなデート、六甲にドライブし、須磨の海で夕陽を見る。そして彼女の家 まで送っていってさわやかにサヨナラをした。自分の家に帰ろうとしたところ へ目つきの悪い白髪の老人が現れる。これが悪夢の始まり。老人のすすめにの って、偵察衛星を利用し、別れたばかりの少女が、風呂に入っているところを 覗こうとした。高まる期待と興奮。ギャア、と啓介は叫んだ。何と、少女の体 には全身に竜のような鱗があったのだ。 <つづく>
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