CFM「空中分解」 #0984の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
《大団円》 家に帰りついたのはすでに8時を回っていた。中村家は門限などいうものは無かった が、多少注意された。その後、風呂に入った。風呂から上がると、体はグデングテンで あった。足は痛み、そして2つの心も痛んでいた。お互い、あれから満足な“会話”を 交わしていなかった。あまりにもショッキング過ぎたのだ。2人は腹を大砲でぶち抜か れたような、状態だった。 ベットの上に彼女は体をほうった。暗がりの中、風呂で火照った体は少し跳ねた。そ して、少しばっかりベットに沈んだ。 ベットには、机側の窓から差し込む街燈の光が青白く注いでいた。それさえも彼らに は明る過ぎた。体をうつぶせにし、その光を避けた。涙がその時、零れ落ち、枕をぬら した。一端出ると、とめどもなく涙が流れ出した。呼吸が乱れ、鼻をしゃくり上げる。 “中村さん………” “………” “……すまないね。でも泣かないでくださいよ。哀しいのは、私なのですから……” “初めてだわ” “何が、です?” “人が死んだということを、感じることを” “そうですか” “妙なものね。あなたはこうして『生きている』というのに!!” “あれから考えたのですが” “なに?” “私は生きたいと思った。強烈にね。その瞬間、ちょうど『解放』していた中村さん、 貴方にマージングしてしまったのではなかろうと……” “やめてよ!!”彼女は烈しく叫んだ。“そんなことどうでもいいじゃない!!” “私だって!!………しかし、こうも考えていないと紛らすことは………” 彼女は、自分の事に腹がたっていた。橋本君は奇妙な、自分の死について苦しんでい るというのに(しかも、表面には出していないではないか!!)私は、これからの事に ついて考えて悲しんでいる一面があるのだ。つまり、普通の人間として暮らせなくなっ てしまったための、不安・恐怖に対する哀しみも含まれていたのだ。彼女はみるみるう ちに嫌悪感で一杯になった。 “私は恐さから逃げ出したばっかりに、このような状態に陥ったのです。そして、貴方 にこのような迷惑をかけ、しかも人間として暮らせぬという………” “………” “少し、付き合ってもらえませんか” “………” “もはや後戻りはきかないわけですから、ここで自分なりの解答を見出しておきたいの です。本当に身勝手な話ですが、お願いします。間借り人としては、大家さんの承諾を えたいのです” “………そうねぇ。私も性根をすえなくてはならないしね。いいわ。” “ありがとう” “その前に貴方に言っておきたいことがあるわ” “なんです” “私、さっき、これからの事を考えてしまった。そのときこともあろうにあなたの事を お荷物と思ったわ。そして悲観にくれていたわ。………もし、これから一緒にやってゆ くパートナーだったら隠し事をしたくないから言うけれど、一瞬あなたを憎かった。自 分がたすかりたいばっかりに私をまきぞえにして………しかし、本当はそんな事を考え てはいけなかったのね。まったくごめんなさい” “………いいえ、いいんです。私だって自分のことしか考えていなかったのですから” “私はこういった、魂というか個性というか、そういったものは一種のプログラムと 思っているのですよ。” “それは昼間聞いたわ” “確かに。もっともSFじみた考えで、大抵の人には一蹴されてしまうのですが−−− これは【死ぬ】以前にもたまに考えたことなのです。もともと小説を書いていたから” “それで?” “私を例としましょう。橋本智樹というシステムがあります。自然界には色々な条件が ありシステムの存在を危うくするようなものさえ、いやそちらの方が多いでしょう、あ るわけです。” “ふんふん” “ところが、これをいちいち外部から対応させていたのだったらしょうがない。で、シ ムテムを保全するプログラムが用意された。” “ちょっと待って。それだと人類はあきらかに作られたということになるのでは?” “ふふふ。言葉の真意だけ捕らえてください。人類全体を中村さんに説明するのは私は 出来ないよぉ” “分かった。続けて” “これこれこういう条件にはこうしろ、というような単純なものです。これが複雑に重 なって色々な表情や動作に繋がるのです。ところが、です。個人によってそのやり方は 違いますよね。たとえば撲られても、撲りかえす奴とはなしあおうとする奴とか。” “そうね。それはデータの蓄積の違いなのかしら?” “その通りだと思います。人間、育ち方が違うのだから蓄積するデータも違う。基本的 プログラム構造が似ていてもアルゴリズムが違ったら、個性は生まれるのではないでし ょうか?” “うんうん………でも、今回のことに関係はあるのかしら?” “………よくわからないんだ。システムを保全するためのものだから、保持したいとい うあれが働いて………マージングした………ちょっと強引かな?” “私の方は、ぶっ倒れていて死ぬほどでもなかったけれども気絶していた。” “もともと人間のシステムには多少余裕があるように作られているのかもしれない。通 常、いらないなら閉鎖されいてたところが、倒れた拍子に解放し、同時にシステムを、 何とか保全しようと狂わんばかりだった私とがうまく結合して、こちらに転送された” “なんだか、SFみたいな話。” “そうだね” “で、2週間貴方が目覚めるまでの期間はうまくマージングするための期間だったのね 。あれ?急に思いついたのだけれども、本能だって多少の個人差あるでしょ。この場合 どっちのかしら” “考えたのだけれど、本能はROMなんじゃないのかなぁ、コンピュータでいうと。も ともと何パターンかあって徐々にバージョンUPしてゆく−−−今の人間だったら、コ ンパチなんじゃないか。この場合、ソフトの私が転送されただけだから、本能は中村さ ん、貴方のものだと思うよ” 夜はふけた。“2人”の会話は盛り上がったが、双方がショックから立ち直るには、 相当の時間を有するであろう。しかし彼らは最初の一歩を踏み出した。真正面からそれ があっているかどうかは別として、自分なりの解答を見出そうとしたのだ。 彼らには今日はおおきな旅だった。精神だけでなく、体も疲れていた。 やがて、眠りの香が立ち込めた。 2つの精神が最後の瞬間おもったことは、偶然にも同じことだった。 『私達は、同じ夢をみるのであろうか』と。 FIN:どうも、お疲れさんでした!! ひすい岳舟 .
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