ＣＦＭ「空中分解」 #0896の修正
★タイトルと名前
★内容（1行全角40字未満、500行まで）
僕は慌てて逃げ回る。何で健司が攻撃してくるのか、全然判らない。 と、突然、目の前にセレナ姫が現れて、いきなり剣を突いてくる。 「わっ、一体なんなんだよ。」 セレナ姫の剣も避けようとしたけど、タイミングが悪く避けられない。 一瞬、目をつぶって、反射的に手で頭を覆い隠そうとする。 と、再び楯が現れていた。セレナ姫の剣は楯に当たり、真っ赤に燃え上がって 融けてしまった。 「きゃあ！」 セレナ姫は、その時のショックで、気絶して倒れてしまう。 「覚悟！」 後ろから声がして、再び健司が攻撃を仕掛けてくる。 反射的に避けると、これも楯に当たって真っ赤に燃える。 健司は、その剣を捨てて、飛びかかってくる。 基本的に腕力の違う僕と健司では、結果は火を見るより明らかで、僕は難なく 組伏せられてしまう。その時、玉が光り始め、僕の体はまた青い光りで包まれた。 健司は慌てて僕を突き放した。玉から出る光によってできた健司の影が、悪魔 の格好で壁に映る。 その影で、健司が普通の状態じゃないことに気付いたので、僕は健司に飛びつ いて抱きつき、思いっきり抱きしめると、健司は玉の光りに苦しみながら気絶し た。 そして、やっと一息つくと、玉の光は消えて楯もなくなり、一美のペンダント に戻っていた。 その間、康司と一美は、呆然としていたが、戦いが終るやいなや、 「あたし達のことなんかほっといて、さっさとマース侯のお城に帰ればよかった のに、余計なことするから健司くんやセレナ姫まで死んじゃったじゃないのよ。」 「そうだ。健司を返せよ。健司が死んだのは、博美、お前のせいだぞ。」 「そうよ！ あんたの顔なんか見ていたくないの！ さっさとどこへでも行って。」 僕は、何がなんだか訳が判らず、一美と康司の罵倒に、一言も言い返せない。 がくっと手足の力が抜け、その場にぺたっと座り込む。そういえば、足首を痛 めてたんだっけ。 それと共に、持っていた一美のペンダントが虚ろな音を立てて床に落ちる。僕 のペンダントも、鎖が切れて落ちる。 「ちょっと、それ、あたしのペンダントじゃない。けがらわしいわね。さっさと 返してよ。」 一美が、そう言いながら、床に落ちたペンダントを拾う。康司も無言で、落ち ていた自分の玉を拾う。と、一瞬、それぞれの玉から光が走って、康司と一美が 弾き飛ばされた。 「きゃあ！」 「うわあ！」 二人とも、一度、壁にぶつかってバウンドしてから、床に落ちる。かなりの力 が加わったようだ。 「あっつ、いったあーい。」 「いってえ。」 二人とも、大した怪我はしなかったようで、すぐに起き上がる。 「ねえ、何で？ 何で、あたしのペンダントに触れないのよ。」 「そんなこと、俺にも判らんよ。だけど、なんで、玉が拾えないんだろう。」 一美と康司は、半ばキョトンとした感じになっている。 その時、セレナ姫と健司も気が付いたようだ。ゆっくりと起き上がる。 そして、床に座り込んだまま、ぼうっとしてる僕を見て、駆け寄ってくる。 「おい、博美。どうしたんだ？ 大丈夫か？」 健司が僕の肩に触れる。と、その瞬間、一気に体全体の力が抜け、床に倒れか かった。 「うわ！ お、おい、博美！」 健司は慌てて僕の体を支えてくれる。が、自分の体が自分の思うように動かな い。 「おい、博美。しっかりしろよ。」 セレナ姫も寄ってきて、 「博美さん、しっかりして下さい。」 って、体をゆするんだけど、なにしろ力が入らない。 「ちょっと、健司くん。なんで、そんな人を介抱するのよ。」 一美は、まだディモスとのことを誤解しているらしい。 「そんな人って？」 「今、健司くんが支えている人のこと。知らないうちにディモスと結婚なんかし ちゃってさ。ほら、その証拠に、ウェディングドレス着てるし、左手の薬指には 違うよ。あれは無理やり、そうさせられたんだってば。 そう言いたいんだけど、力が入らないから何も喋れない。声すら出せない。 「博美が？ まさか。冗談だろ？」 「本当よ。しっかり結婚式なんかしちゃってさ、あたしがいくら呼んでも返事も しないの。」 誤解だよ。あの時は全然喋れなかっただけなんだってば。 そう、力説したいんだけど、どうにもならない。あまりにも情けなくて涙が出 てくる。 「ちょっと、それ、本当ですか？」 セレナ姫が驚いたように聞き返す。 「ええ、ぜーんぶ、ほんと。セレナ姫も驚いたでしょ。」 そう言う一美の声が、だんだん遠くなり、すうっと目の前が暗くなる。 そんな僕の異変に気付いたらしい健司の、 「おい、博美。どうした。」 って言う声も遥か遠くに聞こえる。 やがて、気が遠くなっていって……。 −−−− ７章 終わり −−−−
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