CFM「空中分解」 #0856の修正
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★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 1986年飯能高校『赤レンガの家』掲載作品 1987年PC−VAN発表作品 冒険活劇がお好きな貴方にお送りします。 ひすい岳舟からの、一年間の感謝の気持です。 《南シナ海上の武士》 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 南シナ海上の武士 (1) 京都・薩摩藩邸内 留守役の大北三次郎の部屋にドヤドヤと山のような体格の男が一人入ってきた. 「おう,利崎見世君,どうするつもりなんだね.」 「なにを.」 利崎見世.四十半ばにして,薩摩藩水軍管理人となり,二ヵ月ほど前,幕府と 合同の航海練習監視役となった.年齢から言えば出世コースとは大分かけ離れていた. 役半月程前,幕船「対馬号 」に幕府より六人,薩摩より四人,水戸より見習伝 一人の計十一人が乗り込み,長崎までのコースを沿岸航海として行く予定であった. が,しかし秋風が吹き始めた九月になっても長崎には着いておらず,行方不明となって いた. それで利崎が京都にきたのである.このままでは薩摩が幕府に反乱したとみなされて しまうのである. (対馬号・全長三十二・七メートル・三本マスト.蒸気機関装備.方八門.オランダ よりの払い下げ船.蒸気機関装備ということから練習船として重宝がられていた) 「利崎君,これが乗員名簿です・・・.」 大北の渡す名簿を見ながら利崎がつぶやいた.”こんな物はうんざりする程みたぜ” 「対馬号 乗員名簿」 船長 小倉 春岳 (幕) 砲手長 大板 宗正 (幕) 士官 滝野 厳永 (幕) 野多 武夫 (幕) 野島 次郎 (幕) 田熊 源ノ助 (幕) 荒井 竜ノ助 (薩) 二谷 靖夫 (薩) 塚 源太郎 (薩) 川谷 淡生 (薩) 見習生 陸奥 敏美 (水) やがて名簿を閉じ,利崎は大北を見つめた.大北は少々驚き,それを隠すために そこらじゅうをグルグルと歩き回って考えているふりをしなければならなかった. 「大北殿,簡単なことです.私の首を幕府に突き出しましょう.」 「え!」 利崎は思った.こいつらが帰ってくるのが早いか,俺の首が幕府に届くのが早いか, それはちょっとした見物だな・・・と. ところは移って海上. 一隻の汽船が風によってほを膨らませながら,陸地に向かって滑っていた.対馬号 である. 「陸発見! 前方!」 メインマストの見張り台より二谷が叫ぶと,乗員達は手を休めて目で陸を探した. 「清の領土かぁぁ−!」 滝野が二谷に向かって大声で尋ねると,すぐさま答が帰ってきた. 「いゃぁー.もっと西の方らしい−!」 実際には,南シナ海を南に進みカリマンタン島へ向かっていた. 夜. 中央の食堂に一同が集まると,小倉が立ち上がった.チロチロと弱々しくともる灯 に目を向け,ゆっくりと乗員達の視線を移した. 「ようやく陸地を発見することができた.出港二日目に台風によって沖にながされ, 船を上手に操れずにここまできてしまった.全て私の責任である.がしかし,かといっ て嘆くことは無くなった.島で数日暮らした後,薪を満載して帰港しよう.」 「つまり,本国へもどれると?」 「そうだ.もう魚など釣らなくてすむのだ.」 「やったぁ!!」 十一人の剣士は喜び,騒ぎまくった.食料庫を開け放ち酒を盛り,生きて帰れる確証 を掴んだことに自ら祝杯を上げた. 「おう,陸奥君,君は何故この練習に参加するようになったんだ?」 「はい,水戸藩の命によって・・・.」 田熊の質問に答えようとする陸奥の言葉を,野島が遮った. 「よう,あんたはぁ,外国語がぁ,できるそうだなぁ〜て.」 「はい,英語ですが・・・・・・.」 「ん? 知らんなぁそんな国.フランスはどうしたんだぁ!」 「もう,主流はイェゲィリスに移りつつあるんです.あそこの国は島国でありなが ら,凄い力なのです.あそこの工業力といったら・・・・・・・・・.」 「と,言うと?」と,三人の話に野多が加わった. 「つまりですね,彼らは武力を背景に他の土地を治めて,本国の暮らしを実らせて いるのです.日の沈むことの無い国と言われているほどです.」 「日が・・・沈まない.」と野多. 「そんなぁ 馬鹿なぁ・・・.」と野島. 「・・・・・・・・・」と絶句の田熊. 「いえ,夜がこないって訳じゃないんです.世界中に領土があるためどこかは夜に なってもまたどっかでは日が照りつけている・・・・・・それほど強大で恐るべき国 なのです・・・・・・・・・.」 「おいおい,おいどんにも西洋の事ば話せ!!」 離れてドンチャン騒ぎをしていた二谷,塚,川谷もぞろりぞろりと寄って来て話に熱 中し始めた. こうして西洋話を酒の肴として,深夜までドンチャン騒ぎは続いた.まぁもっとも 船長の小倉と滝野,薩人としては珍しく酒の飲めない荒井は早々に床についてしまっ たが. .
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