CFM「空中分解」 #0854の修正
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康司が、その玉に、そっと触れてみる。 だけど飛び上がりもしなければ叫び声も上げない。まったく何でもないようだ。 「あれ? 俺には触れるぜ。」 「まったく平気か?」 「ああ、別に何でもないぜ。」 康司は、その玉を簡単に拾ってしまう。 「じゃあ、それは、康司のものってことか。」 「そうみたいだな。ところでさ、セレナ姫、どうすんだ?」 あ、セレナ姫が気絶してるの忘れてた。 「うーん、どうしようか。起こしても、また襲われたらたまらないしね。かとい って、このままにしておく訳にもいかないし。」 起こして、また襲われるのは嫌だけど、ほっとく訳にもいかないんだよね。 「このままにしておく訳にいかないんだったらさ、結局起こしてやるしかないん だろ?」 「そうなんだけどね。」 「じゃ、俺が起こしてやるよ。」 僕が起こすのを嫌がっているのを察してか、康司が起こしにいってくれる。 「セレナ姫、セレナ姫。」 名前を呼びながら、セレナ姫の体をゆする。 しばらく呼びかけ続けていたら、 「う……ん。」 セレナ姫が気が付いたようだ。一瞬、皆、緊張して身構える。セレナ姫が目を 開けて、 「え? あら? あ、皆さん、どうなさったんですか?」 いつものセレナ姫に戻って、きょとんとした顔で聞いてくる。僕は内心、ほっ とすると同時に、どっと疲れが襲ってきて、その場に、ぺたんと座り込む。 「セレナ姫、ここがどこだか判りますか?」 康司がセレナ姫の顔をのぞき込むようにして言う。 「え…と、え? あら? ここ、どこなんですか?」 セレナ姫は訳が判らないらしい。キョロキョロと辺りを見回している。 「セレナ姫は、悪魔に連れ去られたんだけどさ、憶えてるかな?」 「あ、そういえば、そうでしたわね。一体どうなったんですか?」 「実はですね……。」 康司は、今までの経過をセレナ姫に教える。そして、ここがマース侯の城であ ることも。 「え? じゃあ、皆さん、私を救って下さったんですか?」 「その証拠の玉が、これね。」 康司は、先刻拾ったばかりの玉を見せる。 「本当にありがとうございます。私ったら、助けて頂くばかりで、皆さんの足手 まといになってるみたいで申し訳ないです。」 「そんなことないって。それに、セレナ姫が無事だったんだからいいのさ。さ、 立って。そろそろこの部屋を出て、二人目の悪魔を探さなきゃいけない。」 あ、そうだ。もう一人残ってるんだっけ。セレナ姫のことで頭が一杯だったも んで、もう一人の悪魔のことなんて完全に忘れてた。 「それじゃ、行くとしますか。」 康司の言葉で立ち上がろうとしたが、えらく疲れていて、足がだるくて動かせ ない。 「ちょっと待ってくれ。なんか知らんけど、すごく疲れてるんだ。」 「あたしも。ねえ、もうちょっと待っててくれない?」 一美も同じように座り込んでる。だけど、なんでだろう? 三十分位は休んでいただろうか。どうにか疲れも取れ、なんとか立てるように なったので、五人で部屋を出て城内を探す。健司と康司と僕は剣を持って。 と、廊下に番兵がいた。 「お、なんだなんだ、お前達は?」 その兵士は僕達を見るなり、いきなり身構えた。つられて、僕達三人もセレナ 姫と一美を後ろにかばうような体勢になる。 その時、あちこちから靴音が響いてきた。 「おい、康司。こりゃ本格的にヤバくないか?」 健司が聶く。 「ああ、ちっとばかしヤバいようだな。」 康司も聶くように答える。 確かに、こりゃ十分ヤバい。 しかしまあ、どこから湧いてきたんだか知らんけど、先刻まで全く人の気配が なかったのが嘘のように、たくさんの兵士がやってきて、僕達五人は、すっかり 囲まれてしまった。 「無礼者! 控えなさい!」 突然、僕の後ろからセレナ姫が叫ぶ。すると、僕の正面にいた兵士が一瞬、目 を丸くして息を呑むと、慌てたように剣を下ろして背筋を延ばし、敬礼しながら 言った。 「これはこれは、プラネット公の第一公女、セレナ姫様ではございませんか? とんだ御無礼をつかまつりました。」 「そう。私が誰か判ったのなら、早くマース侯の所に案内なさい。」 「しかし、この者共は?」 「この方々は悪魔を倒して、我々をお救い下さった神々の御一行であり、今も、 この城で悪魔を倒されたところである。神に対して無礼であるぞ。控えなさい!」 「ははっ、申し訳ございません。」 「では、マース侯の所へ。」 「はっ、判りました。しばらくお待ち下さいませ。」 その兵士は一礼すると、ほかの兵士達に、 「プラネット公の第一公女、セレナ姫様の御前である。即刻、兵を引け。」 兵士達は全員、剣を下ろして背筋を延ばして敬礼し、そして潮が引くようにい なくなった。あとに二人の兵士が残って、 「知らなかったこととはいえ、とんだ御無礼をつかまつりました。御容赦下さい ませ。」 一番最初の兵士が頭を下げる。 「まあ、知らなかったのなら、責めても仕方あるまい。以後、気を付けるように な。」 「はっ、まことに、申し訳ございません。」 「さて、ところで、マース侯はいかがなされているのであろうか。」 「先程、この城の半数程の人間と共に、我が殿も生き返られまして、今、皆と一 緒に喜びを分かち合っておるところでございます。」 「そうか、それは良かった。早速、お目にかかるとするかの。」 「はっ、ただ今。」 兵士は慌てて、マース侯のところへ僕達を案内した。 −−−− 続く −−−−
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