CFM「空中分解」 #0818の修正
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リーナスは既に瀕死の状態であった。虚ろな目には、もう何も写ってはいないだろ う。金色の瞳は、それでも正義の炎を燃やし続け、青く、深く輝く空を見つめていた。 <り、理想の青‥‥か。い、いかねば‥‥騎甲神を‥この手で‥‥> 彼は一歩一歩、ちから無く進んだ。右手には無雑作に握られた聖剣が光っていた。 「はぁ‥‥はぁ‥‥は‥‥ぁ‥‥くっうっ?ゲホォッ!!‥‥」 鮮血が地面を染める。眉間にシワを寄せて腕で唇の血を拭う。そして、両足を引き ずるようにラーラのいる神殿へ向かった。目の前が急に暗くなりサッと頭の熱が無く なる。彼は貧血を起こしていた。フラフラとたよりなくヨロめき、何も無いところで 不様に転倒してしまう。聖剣はカラカラと数メートル先へ転がる。神々しい輝きも、 リーナスの手を離れた途端に失われてしまった。彼の右手はヒクヒクと痙攣を起こし ている。目を凝らして聖剣を探すが、意識が朦朧として暗闇しか見えない。そして、 聖剣を失った右手は空を掴むだけであった。 「う、ううっ‥‥‥。」 今の彼を見た者は「これが本当に『超剣士』かっ!?」と目を疑うであろう。それ ほどまでに、今の彼は情けなかったのである。金髪も血の色で染まっている。引き締 まった唇もカサカサに渇ききっている。恐らく、体の全感覚が失われいるだろう。彼 は、ようやく聖剣を見つけた。しかし、まだボヤけている。既に傷口からはリーナス 自身を包み込む程の多量の血が流れ出ていた。まさに血の海である。聖剣は、その刀 身を血の海にさらしていた。 彼は叫んだ!!しかし、声すら失われていたのだ。渇いた唇をパクパクさせ、聖剣 を虚ろな眼差しで恨めしげに見つめていた。 <ガ、ガミシスよ‥聖剣!‥ガミシスよ!!古よりの約束に基づき、今こそ、我等 血族の為に、その偉大なるちからを‥‥‥!ガミシスよ、我が魂の叫びを‥!> 聖剣が金色に輝く!! 迷子が母親をみつけたように、そして、恋人達が最愛の人と巡り逢えたように。聖 剣ガミシスは喜びに打ち震えていた。その震えはリーナスの血の海へ微かな波紋を描 いている。黄金の光に聖剣が溶けていくっ!?その金の光が、リーナスの右手の中に 飛び込んでいった!! ‥‥‥ッドンッ!!!!! 凄まじい振動と共に光がリーナスの身体から溢れる!!そして彼は、又ゆっくりと 立ち上がるのであった。依然として身体の回復は無かったが、この作用は彼の精神に もの凄く影響した。 「こ、これが、聖剣の存在すべき理由‥‥なのか‥‥。」 呆然と立ちすくむリーナスに聞き慣れた声が。 「リーナス!どこだぁ!」 「おぉ!サントスか?」 「リーナス!‥‥!?お、お前、この格好は‥‥‥。」 「フッ、少しドジったようだよ。」 「‥‥し、信じられん‥お前程の男が‥‥‥。」 「気にするな。いずれ俺はこうなる運命だったのだ。」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」 「それより、手を貸してくれないか?自分の足では‥フッ、少したよりない。」 「あ、あぁ。神殿に行くのか?」 「‥うむ。」 「そうか、ラーラに診て貰おう。」 リーナスは軽く首を振った。 「無駄だよ。‥‥もう‥‥‥。」 サントスはリーナスの肩に手を回し、歩きだした。 「!?」 しかし、銀の槍が二人の足元へ突き刺さった。ラキュナーガの飛甲兵が惨忍な微笑 みを浮かべ静かに一人、二人と降りてきた。 「‥‥‥‥残念だなリーナス。一人で行ってくれ。」 「ハン!冗談はよしてくれ、邪魔する奴は叩き切るのが俺の性分なんでね。」 「ばっかやろう!!ケガ人に助っ人される程、落ちぶれてはいない!!」 「‥‥サントス‥‥。」 「それに!!お前にはまだ、『やらねばならないこと』があるのだろうっ!?」 「う‥‥‥す、すまん。」 「では行けっ!リーナス!!」 サントスは自分の剣を折った!!さして両腕を広げ精神を集中させた。ライト・ブ ルーのオーラがサントスの身体を包み、乳白色の霧を発生させた。その中をリーナス が神殿へと走り抜けていった。その後ろ姿を見送りながら彼は心で泣いた!! <‥さらばだ!!『地上最強の超剣士』よ!もはや二度とお前のプロテクターを造 ることはできないだろう。ジェナールもお前を怨むことはない。なぜなら、最強 の戦士として最後を終わすお前を愛することができたのだから。‥リーナス!> さらに霧は濃くなっていった。その中でサントスの身体が異常に光っていた。威厳 のある彼に、さすがの飛甲兵達も手を出せずにいた。 「我が守護神!!『水神メイファ』よ!!我にその偉大なる『ちから』を貸し与え 給え!!古よりの約束に基づき今こそ!やさしき慈愛の女神よ!!その美しき剣 を持って、邪悪をなぎ払い給え!!!」 両腕を飛甲兵に向けて照準を定める!すると、空気中に水の塊が現れ、飛甲兵を貫い た!!さらに薄い膜のようになって飛甲兵の首目掛けて飛ぶ!!シャンパンの栓のよ うに高々と飛び散る頭‥‥。しかし、彼等の身体からは真っ赤な血ではなく、どす黒 いオイルが吹きでた!! 「!?‥‥や、やはり奴らのウワサは本当だったのか。哀れなり、飛甲兵よ。キサ マ等も、人間として果てたかったろうに‥‥‥。」 サントスは泣いた。惨忍なラキュナーガの飛甲兵の為に。『無条件の愛』。それが 彼の守護神である『水の女神メイファ』の信条であるため、彼を人一倍優しくしてい た。この性格のために、リーナスと勝るとも劣らない彼が『超剣士』の道を断念した のである。 リーナスは今、大理石の廊下を歩いていた。と言うよりフラフラとさまようような 感じである。ポタポタと血痕を残しながら中央の間へ向かっていた。 「リーナス様?そのお体はいったい‥‥‥。」 ラーラは神殿の中でただならぬ気配を感じ、大理石の廊下へ出向いていたのである。 「‥‥‥‥」 リーナスは無言であった。もはやラーラの姿も見えぬ程、視力が低下していたのだ。 ラーラは小さな頃からリーナスを見ていた。その頃より彼は『超剣士』の称号を得 ていたのだ。彼はあらゆる相手と戦っても傷一つつかずに数多くの勝利を治めていた。 それほどまでに強い彼がここまで傷だらけになり、しかも、目も見えず、音も聴こえ ず、瀕死の体を酷使して神殿に現れたのだから、ラーラにとっては信じられないモノ を見た感じであった。彼女には彼がなんのために、ここに来たのか判らなかった。 「ラーラ?いるのか?ならば聞いてくれ。俺の傷に構わないでいい。もう俺には、 物を見ることが出来ない。耳も聴こえにくくなっているようだ。そこで頼みが ある。俺を騎甲神の眠る石柱へ連れていってくれないか?」 ラーラは涙を浮かべながら、しきりにうなずいた。 <つづく> ..
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