CFM「空中分解」 #0720の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
観測ブイの観測電子望遠鏡管理室では中央センターの要請によって、交差地点 の画像を取り入れるべく、座標をセットしているところだった。ほかから情報が 入って来にくい管理室の作業員達は何が起こっているのか分からぬまま、作業を していった。 <ドリューシャ>の体内の奥深くまで食い込でゆくスペース・プレインの残骸は 笠内部の高い温度の気体によって赤色化していた。その温度は、船内の弾の伝わる まで1分少々かかった。閃光弾と雷鳴弾は一気に炸裂し、笠の表皮を引き裂いた。 爆発によって開けられた傷口からジュワーっと内肉と体液が噴水のごとく噴き出し た。内部の熱気が地球上層部の冷えて薄い外気に向かって一気に流れたのだ。もと もと、密度の低い内肉は、なかば突風にもぎ取られるようにして外へ飛び出してし まったのだ。そのため、笠はみるみるうちにしわがより、<ドリューシャ>は力が なくなったようにダランと降下しはじめた。前傾姿勢が、触手などの重みで垂直な 態勢になり、フニャフニャになった笠を壊れた傘のように逆にして落ちる。下の< ドリューシャ>の笠にのしかかると、急に触手をばたつかせた。蔓のような触手を 気違いのように振り回して、痛さを喘いでいるのだろう。一方で下の<ドリューシ ャ>の触手に絡み付けて体の安定をはかろうとしていた。 と、その時である。下の<ドリューシャ>で爆発が起こった。<ドリューシャ>の 触手より放たれたいかづちは周りのものあたりかまわず焦がした。文明瓦解の時つ くられたガスをも焦がした。下の<ドリューシャ>は半狂乱になって、放電をし始 めたのである。笠の上で死にかけている<ドリューシャ>にも何度となく放電攻撃 をし、ついに彼を絶命させてしまった。 死体から出る体液でズルッとグズグスになった<ドリューシャ>が笠の上から滑り 落ちた。ところが、死体の触手が放電を続けている<ドリューシャ>の触手と絡み あっていたので、そのまま落ちずにダラーンと垂れ下がる格好となった。成熟体と はいえ死体を支えてそのまま浮いている力はない。<ドリューシャ>は電気の触手 をあたりじゅうに振り回しながら雲下にゆっくりと消えていった。 望遠鏡からの映像が入ったとたん、センターは総立ちになり歓声で耳が痛くなる ほどだった。奇跡か・・・と誰もが思ったことだろう。2匹の<ドリューシャ>の 両方ともが忽然と消えていた。そして、タンブラー号の水素タンクが鈍く銀色に輝 いていたのである。その後、タンブラー号からとぎれとぎれながら通信が入ると、 より一層歓喜が増したのであった。 フロイドが食堂に行くとスチーブとデフィソンが偶然いたので、彼らのテーブル に相席させてもらった。スチーブはひょろりとした学者風でいかにもといった感じ なのだが、デフィソンは体格も良く彼は黒人だったので、どこぞやの陸上競技の記 録保持者のようでいささか場違いな印象を与えかねない。しかし彼の名誉のために 言っておくが、彼はタンブラー号の高性能なハイパーウェーブ通信装置の技術員な のだ。 「よぅフロイド、今日はお勤めかい?」スチーブのすっとんきょうな声がかかっ た。デフィソンはフロイドのために、身振りでウェイトレスを呼んでくれた。 「・・・そうだねぇ、カレーおねがいするよ。」フロイドはスチーブの方に向き直 った。「いゃ、今日は休みだよ。でも暇だから、センターに行ってみようと思って いるところだよ。」 「おいおい、いくら辺境の地とはいえ週休二日制は確立されているんだぞ。休みの 日ぐらい自由にしたらどうだ?」 「歴史的出来事の現場にいるというのに、これを逃す気はないょ。」 「確かに歴史的出来事の渦中にいることは確かだ。しかし、だからといって新聞記 者でもあるまいし、そう張り詰めていなくても良かろう。」 「スチーブ、イーディスさんを知っているかい?」 「ああ、君んとこの秘書だろ?眼鏡をかけていて、博学そうな。」 「うん、チェリノフ博士の秘書の。あの人がHT−26000の言語センスを褒め ていたよ。」 「そりぁ、うれしいよ。しかし、HT−26000は本来ならばブイ内で使う奴な のにああいったコンパクト・スペースに収めなくてはならなかったから、かなり機 能的には落ちているけれど。」 「ステーションに戻ったら、ちやんとした形にしなければね。そういえばよくタン ブラー号が生き残ったものだ。放電攻撃をまともにくらっても不思議ではないのに。」 「俺の聞いたところによれば」デフィソンは早耳として有名だった。「放電はあっ たことはあったらしい。ほら、あの通信が乱れたのもこれが影響しているんだよ。 ただ、どうしてタンブラーが生き残っているのかが・・ねぇ。」 「あの一撃で2匹ドカーンと・・・」 「まさかそれはありえないょ。まぁ、1 匹はうまくいっても2匹いくなんて出来過 ぎじゃないのかな?」ちょうどカレーがきたので、それを受け取りながらフロイド は言った。 「タンブラー号に聞いてみてはどうか?」 「デフィソンそれはいい手だ。スチーブソース取ってくれ、あーすまん。と、言っ ところで博士達はもうすでにHT−26000に聞いているだろうけれど。」 「しかしそれじゃあ、何故発表しない?あれから一週間もたったというのに。」 「知らないねぇ。」フロイドはカレーを口に運んだ。「ほかの仕事がたくさんある し、それに正常に動いているからいいんだ、と、おおよそそんなところじゃないか な?」 食事を終えるとデフィソンとスチーブと別れ、フロイドはその足でライブラリィ にに向かった。スチーブに言われてみて気が変わったのである。なにもoffまで センターのモニターをみつめることはない。自由な時間だ、それならライブラリィ に行って地球のことについて個人的に研究してみよう、そう考えたのだ。 観測ブイ内には大きなもので5つ、小さなやつは20ほどライブラリィはあった 。フロイドはいつも暇な時に行くNo.05の小ライブラリィに行くことにした。 小ライブラリィにはHT−26000の下位機種HT−19000がひとつづつあ ってライブラリィを管理していた。ヒューマン型コンピュータであるHTシリーズ であるから、各ライブラリィごと違った″個性″があった。それに対して大ライブ ラリィは100の端末にそれらとつながって仕事を処理する中型高速処理ユニット コンピュータであるからそういった″個性″は無かった。フロイドはどうせやるな ら楽しくやりたいと思ったのだ。
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