CFM「空中分解」 #0708の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
詩集 A DAY IN THE LIFE より 知らない人 その1 私の知らない人 誰か他の人を見ている顔のままで 私達は出会う 愛してほしいからではなく つきまとうさまざまを そのたびに否定しながら 思いやりややさしさよりも もっとほしいものがある 期待なのか予感なのか 言い訳は用意して その言い訳をつかのま忘れるために 私達とは言うまい 私はそしてあなたは かたりつくそうとはせぬままの出会いに 私はあなたに与えるものをさがさない ほんのすこしだけなら あなたを知っていると言ってもよい あなたはすわったまま あるきまわる私を見ているのだろう 私はここばかり手さぐりで歩きまわって すれちがっても多分気がつかない くりかえせば どうでもよい事にも意味がある 無意味な言葉をひろっては あなたは私に投げかえす 大切なのはそんな事ではなく 私がひとめぐりしてしまうまでに あなたはきっと階段をのぼっている 出会いはなんの始まりではなく 他の誰かだとしたらとそんなふうに あなたが今しようとしている事が もしあるのだとしても 私がそこへ行くのを あなたは待っているわけではないと 思っているのかわかってはいない その話には多分続きがあると ひとりごとを言ってみる それを聞いてしまった人は私の知らない人 その人にだけ通じる 合図のつもりなのかも知れない その2 私は鏡の上を歩く 私は鏡の上を歩く 鏡の下にたくさんの人が行く 足音は聞こえない 鏡の向うにドアがある ひとつの場所からひとつの場所へ 私は歩く 私はそこにはいない 私は鏡の上を歩く 鏡には裏返しの私が写っている その3 そしてその事を忘れた頃に そしてその事を忘れた頃に 私はあなたの顔を見る その頃には多分 私はあなたの表情がわからない それは嘘だと あなたは言う 私の言葉が 嘘になる あなたは私が 話し終わるのを待っている その4 昨日 そのまま私は眠ってしまい めざめた時 彼女はうすぐらい天井を見つめていた。 私はほおづえをつくと たった今見たばかりの夢を 話して聞かせた。 彼女は面白そうに耳をかたむけていた。 彼女はずっと起きていたのだと言う。 私はどれくらいの時間 眠っていたのだろう 二十分か三十分くらいか知らと 彼女は答える。 汗のにおい。 せまい部屋のなかを ゆっくりとうずまいている 空気の流れのように 私達は体をうごかした。 窓を開けても 差し込むひかりはそとにはないのに もうしばらくは このままでいようと思った。 彼女は私に つい最近別れた男の事を 話した。 私はそれを聞きながら 以前つきあっていた女を 思い出していた。 そして私達は いろんな事をすこしづつ悲しみながら とざされた部屋のなかで 時間が 手の届かない遠くへ行ってしまうのを 待っていた。 その5 私達はさまざまの事を話す 人は自分の望む事をするのか 望まぬ事をしないのか どちらにしても 自分が今手にしているだけの理由では 人を納得させる事は出来ない いやそれよりも どうすれば自分自身を 納得させられるのか 理由はいらない 本当は人には それをする理由はない 人と もう一人の人と 私はなにかをしようとし その人はなにかをしようとしている 私達は道端で石をひろい それを投げる 石は私達の進む道に転がる 私達は 歩く その石につまずくために 理由はいらない その石につまずくまでの時間が 私と もう一人とを 納得させるために 石と私達との間に よこたわっている BHA66336
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