CFM「空中分解」 #0706の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
サチとルナの婚約の日がやってきた。 こういう行事は一旦日取りが決まると、あっという間にやってくるのである。 ストーリーもはかどるので、作者も楽なのである。 仲人はルナの希望でクートがとり行った。 クートはいつになく真面目な態度で二人を祝福した。 贈り物が両家の間で交換され、儀式はつつがなく終わった。 披露パーティーが始まった。 南の島では、たいした楽しみもないので、こういう機会におお騒ぎするのである。 婚約披露、結婚式、まったく親としてはかなりの出費を強いられてしまう。 最初こそかしこまった雰囲気であったが、酒や料理が次々と出され、酔いが回るに つれて、宴会は無法状態になって行った。 タムは婚約者のリーナとあたり構わずいちゃついて、殆ど猥褻物陳列罪に近い状態 だし、クートはそれをとがめるどころか、自分もルナの友達の娘の体を触ろうとして、 非難ごうごう、まる焼けにされる始末。 わざわざ北の島から駆けつけたという、サチの友達のメーネなどは自作の詩を朗読 しはじめ、これが若年寄りというか、アナクロな感じがしてこれまたまる焼けである。 なっ、なんと宴会の中心でウンコをしてしまった男もいる。クートの悪友の長老、 アーモンである。「ちちねったあ、ちっちびったあ」と大騒ぎだ。 と思えば、自作のこばなしを次から次へと女の子達に披露しては受けようとしている 男もいる。ユーノだろうか。 あっ、あれは何だ。つるりとした不思議な服装、顔を白黒まだらに化粧して、目立とうとしている男もいる。コーモパというらしい。 「あ・な・た・は・」などとゆっくりとしかしゃべれない奴もいたりする。カーラ だ。 と、やっぱり変わったことをするのは男が多いなー。なんでやろ。 宴会はこのようにして、はちゃめちゃになってしまった。 しかし、ルナはその間ニコニコと幸せそうであった。 女は安定を求める。人前でウンコしたりしないのである。 男は... サチも楽しそうにはしていたが、心の中はどうであったか。奥村チヨならぬ宇野千代風 のいいまわし。サチの心のなかは、80パーセントは「これでいい」と思っていたが、 20パーセントは「ラミを僕は諦められない」というものであった。 そして、狂乱の夜は明けた。誰もが騒ぎ疲れてそこらへんで適当に寝ている。 その中からそっと抜け出そうとする姿があった。サチであった。 一晩、寝つかれないままに考えている間に20パーセントがふくれ上がり、ついに サチは決断したのである。ラミを選ぶと。納得のいかないまま、ルナと結婚しても 幸せになれないと。ああ、男というものは実に身勝手で、危険な発想をするものだ。 サチは自分の横ですやすやと眠っているルナの可愛い頬に別れのキスをすると、 浜辺へ向かった。そして自分の小さい船を海へ出そうとした。 「サチ!」と呼ぶ声がした。振り返るとクートが追ってきていた。 「サチ、無茶は止めた方がええ。ルナさんはどうなるかよく考えてみるんじゃ。愚か 者よ」 「クート、止めないで。僕はこのままでは納得が行かないんだ」 「サチ、お前の見ているのは幻覚だよ。かわいそうに。私も若い頃はさんざん苦しめ られたものだ。女の放つ幻覚作用が男を狂わせるのじゃ。まあ、その逆もあったが」 「幻覚かどうか、確かめてみたいんだ。とにかくこのままじゃだめなんだよ」 「そうかサチ、男としてお前の気持ちはよく分かる。お前は若い。何でも自分の思う まま、やってみればよい。わしは野暮な止め方はせん。行ってこい」 と言われると「やめとこか」と一瞬サチは思ったが、勇気を振るって言った。 「ありがとう、クート。ルナのことは本当に済まなく思っているけど、仕方ないんだ。 さよなら」 「まあ、これを持って行け」クートは宴会の料理の残り物をサチに差し出した。 「わしはお前を見ていて、多分こういうこともあると思っていたんじゃ」 「ルナのことは私に任せて、とっとと行ってしまえ。この薄情者めが」 クートはサチを今度は追い立てはじめた。 サチはちらっと「このおっさん、ひょっとしてルナをかどわかすつもりちゃうか」と 思ったりもしたが、今となってはそれを言う立場にはない。 サチは船を朝靄のたなびく大海原に漕ぎ出して行った。 太陽が水平線に顔を出し始め、サチの影をくっきりとさせる。 クートにはサチが人間を惑わす幻覚、イルージョンに真正面から立ち向かって行くかの ように見えた。 「本当に何が正しいのかは、わしにもわからん。サチ、その答えはお前自身が見つける のだ」クートは遠ざかるサチに向かって、心の中でそう呼び掛けていた。 イルージョン第一部 −完− 去年の12月17日から連載を始めて、ようやく第一部が終わりました。 思いがけず、長いお話になってしまって。 ひとやすみしたら、また第二部にかかりたいと思います。 宣伝ではありませんが、第二部こそ、このお話の核心となるものです。 まあ、ミッションするとかっこ悪いので、大きなことは言えませんが。 それでは、おつきあいくださいまして、どうもありがとうございました。 なお、登場人物その他、全て架空の存在です。念のため。
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