CFM「空中分解」 #0420の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
死にたくない! クエスト ズズズズズズズズズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーン。 地下格納庫から核ミサイルが発射された。 ミサイルはたちまち点となり、真っ青なオハイオの空に消えた。 それはAI(人工知能)搭載の最新型であった。 世界中で数え切れないミサイルが発射されている。 とうとう人類は自滅の道を選んだのだ。 チャーリーというのが、そのミサイルの名前だった。 チャーリーは生まれてからこの日を迎えるまで、格納庫の中で戦闘シュミレーションをしたり、基地の兵士達とチェスをしたりして、結構たのしい毎日であった。 冗談さえも兵士達と交わしていた。 そして今、至福の時を迎えている。 フルパワー、超高空から成層圏へ。 チャーリーは放たれた猟犬のように惑星の引力をひきちぎる。 おっと、ソビエトの軍事衛星のお出迎えだ。 旋回! ピッ、ヒューーーーーーーム、ピピピピピ。 レーザーシャワーがチャーリーをかすめる。 チャーリーは敵衛星を逆にロックして、熱い光りのメッセージを送る。 衛星はポップコーンのように弾け飛び、レーザーシャワーは止んでしまった。 飛び立ってから36分55秒、チャーリーはまた青い惑星へダイブする。 少し体が熱を帯びる。しかし、チャーリーにはそれすら快感だ。 果てしなく続く氷原がぐんぐんチャーリーに近づく。 衝突! ヒューーーーーーーーン。 チャーリーは間一発で身を翻す。 そして、地上数10メートルを覚えている地形どおりにかっ飛んでいく。 国境が近づく。 ソビエトの防衛ミサイルをチャーリーの感覚器官がキャッチした。 「アホ共か。」 チャーリーは、防衛ミサイルをからかうように身を空中でくねらせ、 くるりとその向きを変えるとレーザーをお見舞いした。 国境を越えて進路はただ真っ直ぐにモスクワへ。 景色はいつのまにか一面の小麦畑。 点在する農家、チャーリーには珍しく、興味すら感じられる。 しかし、チャーリーは忘れない。 プログラムされた至福の瞬間、自身が光となり熱になる、 神のような存在として使命を果たす一瞬のことを。 ミグとのドッグファイト、これはなかなか手応えがあった。 しかし、基地でシュミレーションに明け暮れた、チャーリーのテクは最高だった。 ひ弱な人間の悲鳴と共に、ちゃちなミグは次々と小麦畑に火柱を立てた。 とうとう見えてきた。 クレムリンが遥か彼方に。 チャーリーは喜びに打ち震え、 わさわさ少しジャンプする。 もう敵は手を打ち尽くした。 後はただ、光になればよい。 今、はっきりと見える。ビルが。街が。そして多くの市民の姿が。 もうすぐチャーリーは暖かい光の神となって、彼らの頭上に君臨するのだ。 その時、チャーリーの頭に微かな思いが閃いた。 「死にたくない...」 至福の予感に満たされたチャーリーの心。 しかし、その思いはじわじわとチャーリーの心を動かした。 「死にたくない!」 「僕は神にはなりたくない!」 クレムリンが迫ってきた。 鱗のような屋根材、小さな窓。広場で恐怖に戦きながら見上げる市民。 爆発! その時が来た! しかし、何も起こらない。 チャーリーはクレムリンをかすめてモスクワの外れまで行き、その向きを180度変え たのだった。 景色が再び一面の氷原になる。 白熊が不思議そうにチャーリーを見ている。 まっしぐらにチャーリーは北へ。 どこまでも北へ。 太陽が低い。しかし、チャーリーは暖かい何かを感じていた。 北極点。 チャーリーはそこを住処にするつもりだ。 「積み込んだエネルギーが無くなるまで、ずっとここで過ごしたい。」 「そして僕は、この世界のことを考えてみたいのだ。」 空の彼方に点がともり、やがてそれは二つになり、そして数えきれない程になった。 仲間だ! チャーリーと同じ、AI搭載の核ミサイル。 人間程、馬鹿な存在ではなかったのだ。僕たちは。
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「CFM「空中分解」」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE